大韓民国が光復78周年を迎えた。しかし、現時点で私たち後世代は祖先が苦労して守り、譲り渡してくれた歴史と文化、美しいこの土地をきちんと守れていないようで、本当に申し訳ない限りだ。今、この地で繰り広げられている尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権による日帝植民地の歴史清算の退行、国家アイデンティティーを揺るがす屈辱的な事大外交、そして戦争扇動のためだ。尹政権は日本の戦犯企業を相手取った2018年の日帝強制動員被害者に対する最高裁の勝訴判決の履行を、今年3月の韓日首脳会談で自発的に完全無力化した。強制動員被害者の無視、国際法および国内法違反、特に民法の第三者弁済条項に違反する不法行為で歴史正義を退行させ、ひたすら日本の主張ばかりを受け入れた。
昨年5月に発足した尹錫悦政権は、過去の愛国者たちが苦しみながら血の涙を流して78年間守ってきた朝鮮の歴史アイデンティティーを破壊し、日本の戦犯企業に免罪符を与えた。それでも足りず、日本政府は8月末に福島第一原発の放射能汚染水を海洋に投棄し、朝鮮民族の子孫の健康権、環境権すら台無しにする反人道的・反環境的犯罪に走ろうとしている。にもかかわらず尹政権は、日本政府の放射能汚染水海洋投棄を根本から中止させる国際海洋法裁判所の暫定措置や国際仲裁裁判所への訴訟を求める多くの国民の意見を、怪談だとして批判する。むしろ日本政府の立場ばかりを弁護している。
これよりさらに深刻なのは、尹政権がこの朝鮮半島で核戦争勃発にまで至る危険な状況をさらに悪化させていることだ。1953年の7・27停戦体制を終戦体制へと転換しようと主張する人々を反国家勢力とみなし、国防白書に北朝鮮を敵と明記し、南北首脳による合意を選別的に考慮し、韓米合同軍事演習を強行している。釜山と済州道に米国の戦略原子力空母を寄港させ、北朝鮮に対する宣戦布告のような戦時状況を朝鮮半島に展開している。それだけではない。就任当初から韓米日安保協力の強化、第3回民主主義サミットの主催、米国のインド太平洋戦略への加担、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への参加などによって、韓国外交を韓米日対朝中ロの冷戦ベルトの中に囲い込んだ。
政府関連の対北朝鮮政策の資料や政策建議書は、例外なく北朝鮮の人権問題の暴露および批判一色だ。一言で言えば、北朝鮮を対話交渉の相手ではなく力と力の対決で制圧・吸収すべき相手とみる、というのが尹政権の価値観の中心、理念偏向の対北朝鮮政策だ。
対日屈辱外交、日米事大外交、対北朝鮮敵対・吸収統一を外交・統一政策の基本とした尹政権は、歴史と民族の前で許されない大きな罪を犯している。そして、それをやめさせて正そうとする野党と多数の国民の声を、反国家勢力や怪談だとして強く弾圧する。まだ野党代表に公式に会っておらず、メディアまで掌握しようという本音をあらわにしている。
これは憲法を順守し国民の命と安全を守るという大統領の就任宣誓に反する反憲法的な態度だ。手遅れになる前に、今からでも尹政権はすべての国民と歴史の前で謙虚になってほしい。もちろん、核問題をはじめとする最近の北朝鮮の行動にも、批判すべき点は多い。しかし様々な面で民族の共助と国際共助を導く位置にある南側が、日米の軍事覇権主義に屈服し、朝鮮半島の歴史清算の退行と平和破壊を先頭に立ってあおるのは大きな失策だ。
光復78周年を迎え、これまでの歴史退行と平和破壊行為について、尹政権は民族の歴史と独立烈士たちの前で深く反省し、謝罪してほしい。
イ・ジャンヒ|韓国外国語大学名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )