文大統領が朴槿恵電撃赦免、なぜ? …大統領選で争点化する前に決断か
大統領選での争点化防ぐ狙いとの分析も
国政壟断事件で拘束収監中の朴槿恵(パク・クネ)前大統領が24日、特別赦免され復権した。拘束期間は2017年3月31日からの4年9カ月。政府は来る31日付で朴前大統領を含む一般刑事犯3094人を特別赦免・減刑し復権させると発表した。復権名簿には9億ウォン(約8670万円)の違法政治資金授受で懲役2年が確定し、2017年に満期出所したハン・ミョンスク元首相も含まれる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領はパク・キョンミ報道官を通じ「我々は過ぎ去った時代の痛みを乗り越えて新たな時代へと歩み出していかなければならない」とし「今回の赦免が考えの違いや賛否を越えて統合と和合、新時代の幕開けのきっかけになることを願う」と述べた。しかし、これまで前職大統領の赦免に否定的だった文大統領の年末特赦をめぐっては、様々な解釈が提示されている。
文大統領、年初の「赦免不可」から少しずつ軟化
文大統領は、今年初めには前職大統領の特別赦免に否定的だった。共に民主党のイ・ナギョン代表(当時)が新年早々、李明博元大統領と朴槿恵前大統領の赦免を提案したものの、文大統領は新年会見で「過去の過ちを否定し、裁判の結果を認めない観点から、赦免を要求するこうした動きについては国民の常識では認められないだろうと考え、私もまた受け入れは困難」と断言していた。強硬だった態度は、今年5月の就任4周年特別演説後の質疑応答で若干軟化した。「高齢で健康も思わしくないということで、なおいっそう気の毒」だとし「国民統合に与える影響、韓国司法の正義、公平性、また国民の共感などを考えながら判断していきたい」と述べたのだ。与党の関係者は「大統領は気の毒だと言ったが、それだけ赦免については長く苦悩していたように見える。年末か大統領選挙後に実行しようと考えていたもの」と述べた。
重鎮の赦免要請に、大統領選後ではなく年末を選択
与党の関係者たちは、年末が近づく中で朴前大統領に対する赦免提案が相次いだことが、文大統領の決断に影響を及ぼしたと説明する。文大統領に近い市民団体の複数の重鎮は「高齢の女性前大統領をあまり長く拘束しておけば、徳が薄いとの評価を受ける恐れがある」、「できるだけ年を越す前に朴前大統領を赦免し、次の大統領の負担を軽くすべきだ」との意見を伝えたという。与党の幹部は「20日と21日の法務部赦免審査委員会の前から(朴前大統領の赦免についての)議論があった」と述べた。
前職大統領の赦免は、いずれにせよ文大統領が在任中に処理すべき課題であるうえ、大統領選挙で政治争点化するのを防ぐために「結者解之(自分の行いは自分で決着をつける)」の観点から実行したとの分析も示されている。民主党選対委の幹部は「文在寅政権は積弊清算要求に従って捜査を行ってきたが、そのせいで『報復政治』のイメージが残ってもいた」とし「次の政権に持ち越すこともできるのに文大統領が決断したのは、こうしたイメージを本人が決着をつけるという意志を示したもの」と述べた。来年3月の大統領選後に大統領当選者の提案を受けるというかたちの赦免も可能だが、文大統領は問題を避けて通らずに年末特赦に踏み切ったというのだ。文大統領がこの日、パク・キョンミ報道官を通じて示した7つの文章の中で「我々は過ぎ去った時代の痛みを乗り越え、新たな時代へと歩み出していかなければならない。過去に埋没して互いに争うより、未来に向かって大胆に力を合わせるべき時だ」とし「赦免に反対してきた方々には、広い理解と度量を示してくださるようお願いする」と述べたのも、こうした意味が込められていると解釈される。
朴前大統領が在任期間より長い4年9カ月間にわたって服役し、健康状態が悪化していることも影響を及ぼしたようだ。椎間板ヘルニアなどで先月22日にサムスンソウル病院に入院した朴前大統領は、持病のほかにも歯科や精神健康医学科などでの治療も受けているという。与党の幹部は「精神健康医学科の治療が重要だ。具体的に明らかにはできないが、所見書には目立つほどの内容があった」と述べた。朴前大統領の健康が急速に悪化した場合に直面することになる政治的負担も考慮したということだ。
李明博元大統領も高齢なのに赦免除外…「大統領選をにらんだもの」との批判も
ただし、69歳の朴前大統領を赦免しつつも、80歳の李明博元大統領は除外したため、大統領選挙を考慮した「野党分裂戦術」だとの指摘が出ているのも現実だ。大統領府は、国民感情と服役期間の違いにすぎず、政治的考慮はないと説明する。大統領府のパク・スヒョン国民疎通首席は、韓国放送(KBS)のラジオ番組のインタビューで、「朴前大統領は、拘束期間が年末現在で4年9カ月になる。全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚(ノ・テウ)両氏に比べて2倍以上の期間を刑に服している」とし「これに比べて李元大統領は高齢ではあるが、拘束期間が年末現在で780日ほどだという点なども考慮して(特赦の対象に)ならなかったと認識している」と述べた。