10年前までは「アジアの小さな国の言語」というイメージが強かった韓国語は、英語とともに「大衆音楽の代表言語」になった。

2020-12-06 07:49:44 | 韓国文化

[寄稿]

世界大衆音楽の代表言語になった韓国語…

「K-POPの言語」の意味

登録:2020-12-05 06:41 修正:2020-12-05 09:20
 
ロバート・ファウザーㅣ言語学者
 
防弾少年団(BTS)が昨年2月10日(現地時間)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステイプルズセンターで開かれた第61回グラミー賞授賞式で、韓国歌手としては初めてプレゼンターを務めた/AFP・聯合ニュース

 寒くなり、新型コロナウイルス感染者が急速に増えている。自宅に留まる時間が長くなり、ZOOMを通じて様々な大学の特別講義を聴講している。韓国関連の講演はほとんど欠かさず見ているが、その人気を物語るようにK-POP関連の講座が特に多い。これまであまり関心を払わなかったことを少し反省すると同時に、社会言語学的にK-POPをどう説明できるか考えてみた。

 1950年代に入って急浮上したロックンロールは、第二次世界大戦で勝利した後に世界秩序を確立した米国と英国から生まれた「新しい声」だった。新しいだけではなかった。旧世代の保守性に対する抵抗の意志が込められていた。さらに、テレビが普及し、制作技術が発達するにつれ、より多くの人々が手軽に音楽を楽しめるようになったのも、ロックンロールの急速な広がりに貢献した。米国と英国はもちろん、世界的に大衆音楽産業が定着し、ロックンロールはその覇権の先頭に立った。

 ロックンロールの言葉はほかならぬ英語だった。これを基盤に大衆音楽をはじめとする大衆文化全般に、英語はもちろん英語圏の文化が深く浸透した。非英語圏の国では歌詞は自国語になっていても英語圏で流行する大衆音楽スタイルが人気を集めた。韓国も例外ではなかった。シン・ジュンヒョンやサンウリムが代表的な事例だ。

 K-POPはずいぶん前のロックンロールがそうだったように、急速に世界の隅々まで広がっている。ところが、彼らの言語はどうか。韓国語だけの歌詞は珍しい。世界を席巻している防弾少年団(BTS)の歌を見ても、韓国語と英語を混ぜた歌詞が多い。BTS以前に爆発的なヒットを記録したPSYの「江南スタイル」も韓国語の歌詞に英語の歌詞が含まれている。言語の混ぜ方も歌ごとに違う。韓国語の文章に英単語を使ったり、ある歌はその逆パターンだ。韓国語の文章を英語に変えて歌ったり、リフレーンやいわゆる「サビ」の部分だけ英語の場合もある。このように構成された「K-POPの言語」を通じて、世界人類は歴史上初めて先を争って韓国語を聞いている。10年前までは「アジアの小さな国の言語」というイメージが強かった韓国語は、英語とともに「大衆音楽の代表言語」になった。

 かつてロックンロールがそうだったように、新しい音楽には旧世代の保守性に対する抵抗意識が込められている。「K-POP」を通じて鳴り響いている韓国語の歌詞は、それ自体が長年大衆音楽界で覇権を握ってきた英語に対する反撃のようにも見える。

 
BTSの歌とK-POPを韓国語学習と結びつけた本が英語圏で販売されている=アマゾンよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 米国に住む私もBTSの活躍ぶりを日々目にしている。海外メディアとインタビューしたり、広報映像などで主に話すのはリーダーのRMで、他のメンバーは簡単な挨拶とジョークだけのことが多い。皆個性が強い。ネイティブスピーカーを真似るわけでもなく、韓国式の発音でもない。短い文章やいくつかの単語を使ったり、韓国語で話したりもする。笑い方とジェスチャーも非常に華やかだ。PSYはインタビューのたびにとても流暢な英語で語っていたが、BTSはまるで「K-POPの言語」で愉快なショーを見せているようだ。

 このような差はどこから生まれただろう。2010年代の英語に対する態度の変化にその手がかりを見つけることができる。米国に留学した経験を持つPSYが流暢に英語を話すのは当たり前かも知れない。ところが、BTSのメンバーの中には海外留学経験のある人がいない。RMは韓国で趣味として英語を学んだ。BTSのメンバーらは誰も英語を拒否するわけではなく、気楽に必要に応じて使っている。自分たちの活動の中核は音楽とダンスなので、流暢な英語で話すのはあまり重要ではないと思っているようだ。むしろ「K-POPの言語」を使った方がブランドイメージを高める。

 
BTSの歌とK-POPを韓国語学習と結びつけた本が英語圏で販売されている=アマゾンよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 彼らの「K-POPの言語」を聞いていると、大衆文化の覇権を永遠に握るかのように勢いに乗っていた英語圏の力が弱まったのを感じる。韓国語から派生したものの、韓国語だけではない、他の言語を簡単に受け入れることで登場した混合言語が、大衆文化の新たな覇者として登場する姿を目撃しているような気もする。民族や人種、ジェンダーの区分が明確でなくなった今日に合った未来言語の感受性とは、このような形ではないだろうか。K-POPが今よりさらに大衆文化全般に強力な力を発揮することができるなら、大衆文化の境界を押し広げることを越え、新しい言語で思う存分表現できる未来言語への変化を引き出す契機になるかもしれないというのが、彼らを見守る私の考えであり、願いでもある。

 
//ハンギョレ新聞社
ロバート・ファウザーㅣ言語学者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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