竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

★グリム童話ミニ講義7★:間宮先生の講演:小さな版(50話)で世に広まった!いばら姫の版の変遷

2013年06月08日 | 日記
先週末には日本口承文芸学会に行ってきました。

間宮史子(白百合女子大学)先生の講演
「200歳を迎えたグリム童話 ―その現代における意義― 」をとても興味深く拝聴しました。

グリム童話には大きな版(200話)と小さな版(50話)があります。
グリム童話は、実際にはダイジェスト版の小さな版を通じて世に広まりました。

大きな版(Grosse Ausgabe)は 初版(1812)から7版(1857)まであり、
小さな版(kleine Ausgabe)は 初版(1825)から10版(1858)まであります。
さらに話によっては、グリム兄弟が書き残したメモ:エーレンベルク稿(1810)もあります。

いままで、大きな版によるテキストの比較はすでになされています。
例えば「いばら姫」については、わたしもブログ:★グリム童話ミニ講義6★で紹介しました。
ぜひ、ご覧下さい。

ところで、間宮先生は、小さな版も視野に入れて、グリム童話のテキスト比較をされています。
そのうち、「いばら姫」の比較分析をご紹介しましょう!



レジメの一部をコピーさせていただきました。

OHは エーレンベルク稿(初稿)を示しています
Gは 大きな版、数字は版を示していします。
Kは 小さな版、数字は版を示していします。
――→ は その方向への変移、
----→ は その方向へ影響を及ばした可能性、
= は 同一、
≠ は 非同一、
* は特に加筆がめだつ版を示しています。


表をじっくりご覧ください。

その下に説明があるように、面白いことがわかってきます。

初稿(OH)から初版(G1)で 加筆され、具体的になり、特に後半の描写が膨らんでいる。
第2版(G2)で、さらに全体的に書き換えと加筆がされている。
小さな版第2版(K2)で 予言の動物がザリガニからカエルに変更されている。
小さな版の第4版(K4)では 13番目の女の悪さを強調する描写がなされ、状況描写が加筆されている。
さらに、大きな版の第6版(G6)と小さな版の第8版(K8)においてそれぞれ説明や状況描写が増えています。
それによって最終的には大きな版と小さな版とが同一のテキストではなくなっています。

細かいことですが、グリム兄弟は、完全版とダイジェスト版を通じて、なんと合計18ヴァージョンを通じて
少しづつテキストの改定を施して、子どもたちが読みやすいメルヘンに仕立て上げていった努力の跡がみられるのです。
そのおかげで、グリム童話は世界の子どもたちに愛されるようになったのですね。

きょうは、グリム童話ミニ講義、第7弾でした。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿