『ロリータ』の冒頭でハンバート・ハンバートが舌先で玩弄する発音のように、万年筆の筆先から走るインクはノートの繊維を潰さずに滑って文字を形作る。船腹の骨組みのような機構の曲げ伸ばしが金属のペン先を支えつつインクをペン先へと運び、筆圧に応じた量のインクが定められた幅に従い流れ出す。単純に美しい道具だと思う。人から貰い受けてペリカン製の吸引式を一本手に入れて数ヶ月経つが、小さな玉の回転でインクを吐き出すボールペンよりもペン先という金具で書いているような手触りがする。
ペン先を折り曲げたりペン先を修理したりという描写を小説で見かけているせいか、プラスチック製の本体のこの万年筆でもペン先は修理してもらえるのか、吸引の仕組み部分を修理してもらえるのか、という不安は拭えない。筆圧が強すぎると折れてしまいそうな反発が返ってきたら、その日の書きものはやめている。
気がつけば筆記用具は貰い物で溢れているが、この万年筆に慣れたらもう一本を誂えてもよいかとも考えている。生き物のように手入れが必要なだけに、書きものをする人の愛着が道具から見える思いがする。なくなる鉛筆よりも、メーカーの機嫌次第で替芯がなくなるボールペンよりも、この道具は長くそのままでいてくれるだろうと信じて。
ペン先を折り曲げたりペン先を修理したりという描写を小説で見かけているせいか、プラスチック製の本体のこの万年筆でもペン先は修理してもらえるのか、吸引の仕組み部分を修理してもらえるのか、という不安は拭えない。筆圧が強すぎると折れてしまいそうな反発が返ってきたら、その日の書きものはやめている。
気がつけば筆記用具は貰い物で溢れているが、この万年筆に慣れたらもう一本を誂えてもよいかとも考えている。生き物のように手入れが必要なだけに、書きものをする人の愛着が道具から見える思いがする。なくなる鉛筆よりも、メーカーの機嫌次第で替芯がなくなるボールペンよりも、この道具は長くそのままでいてくれるだろうと信じて。
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