えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・『還願』雑感

2021年03月27日 | コラム
 2019年に発売された台湾のRed Candle Gamesの3D探索型ホラー『還願』が自社サイトを立ち上げ、今年3月15日にようやくゲーム売り場へ帰ってきた。
 処女作品にして大ヒットを飛ばした『返校』の次作となる本作は、発売直後にゲーム内のオブジェクトで中国を批判する要素が含まれていたことを強く指摘され、その影響で発売して二ヶ月でSteamによる販売が停止となってしまった。その後も2020年に一度再販するという話が持ち上がったがこれも潰れ、三度目の正直で自社サイトを立ち上げDRM販売に踏み切り正式な販売にこぎつけた「曰く付き」の作品でもある。だがそれ自体はゲームそのものとは関係しない。

 舞台は1987年の台湾の夕飯時から始まる。テレビを見ながら妻が用意していた夕食をつつこうとしていた主人公は、突如目眩に襲われ、気がつくと辺りには自分以外誰もいなくなっていた。妻と娘を探そうと家の中を歩き回る主人公だが、ほんの少し前にいつもの夕方を過ごしていた家は様変わりしており、数々の怪異に見舞われながらも謎を解いて先へ進む、というお話だ。
 
 ゲーム自体はクリック&ポイント式で、調べられるものは予め定められているが、本国台湾では発売前のARG(Alternate Reality Game/代替現実ゲーム)により登場人物やその背景がより深く掘り下げられており、調べられないオブジェクトにも多くの情報が盛り込まれている。そのためプレイヤーは単にクリックできる仕掛けを調べるだけではなく、周囲を細かく見回してさらにゲームを読み込んで行かなければならない。先に進むことだけを目的としても十二分に恐ろしい演出と体験が待ち構えているが、主人公の一家に何が起きたかをプレイヤーがどう読み取るかがゲームの主軸でもある。行間のある小説のような作品だ。

 行く先々に現れる娘と良く似た格好のアンティークドールに、台湾の民間信仰をアレンジしたかのような架空の宗教、赤い傘や靴と共に現れる妻のような化け物たちは、時にびっくりさせるタイミングで飛び出し、時に主人公の死角にそっと現れる。たとえば台所を探索すると妻そっくりのマネキンが料理の真似をしたまま立っているが、台所を出た直後に視点をずらすとすぐ背後にそのマネキンがいる、といった具合の定番の驚かしもあり、主人公にまつわる「お話」が相当に恐ろしいものであったり、といった。

 主人公は当初こそわけもわからず怪異に翻弄されるが、それが直視したくない自分の過去に結び付けられていることが徐々に分かるころには取り返しのつかないところへ迷い込んでいた。この話の展開自体は前作『返校』と似ているが、『還願』には最後の救いが無い。その違いがどこにあるかを読み解くのも、未プレイの方は二本を購入して「読む」ことをおすすめしたい。

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