えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・さよならの年お別れの月

2020年12月26日 | コラム
 誰かと会い、口を開けば「今年」のあとに「コロナ」が続く二〇二〇年もわずかとなり、来年に願いを込めた挨拶には心情がこもる。一二月の今頃に人と交わす挨拶は特別で、誰に逢っても後ろ髪を引かれるような寂しさとともに次の年への想像をゆるやかに膨らませる「良いお年をお迎えください」の定型文が暖かい。遠出は出来ないながらもささやかな顔なじみのあちこちに今年との別れを告げてようやっと一月一日を迎える心の支度が整う。
 それでも今年はお別れを告げる以上に、さよならを多く告げていた。緊急事態宣言を皮切りに六月一気に職場周辺の行きつけの店が無くなり、ひっそりと七月に京都の櫛屋「二十三や」は数百年の歴史に幕を引き、あちこちの商店街はシャッターを下ろして静かになった。お別れを告げる暇もなく、街は静かになり新しい店が次を狙い土地を買い集めている。ふと見かけた「地上げ」の文字が薄れる間もなく、今年四月までの普段に別れを告げて見たこともない来年へと向かう。
「潰れるべきところは潰れるんだよ」
 と、縁日の元締めはさらりと言った。
 その辺りをさらりと言えるほど、まだ人生で別れを経験していないのかもしれない。

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