辰巳ダムは、当初、多目的ダムで利水と治水の目的があった。利水機能分のダム容量は既存のダムと交換して、治水専用のダム、いわゆる穴あきダムとなった。(ただ、利水はダムを造るためにこじつけたもであるが、)
そもそもダムは本来、水瓶である。辰巳ダムのように治水の目的だけにダムを造るというのは鬼っ子であり、本来は禁じ手みたいなものだ。よほどの特殊な事情がなければ造られない。ところが、日本ではこれがダム目的の主流になりつつある。発電や利水の目的でダムを造る時代ではなくなったからだ。
治水のためのダムというのは緊急避難的な暫定措置といった性格のものである。なぜなら、「利水目的」では、水不足を補うために水を貯めるダム以外の代替案はないと考えても間違いないが、「治水目的」では、河道拡幅など代替案が複数あるのが通常であるからである。
半世紀もかかるといわれる河道整備などの方法では、時間的な余裕がなくて間に合わないなどの条件がある時の緊急避難措置が治水ダムである。犀川には、すでに犀川ダム、内川ダムと2つの治水ダムが整備されており、緊急性はない。
河道整備を着実に進めればよかったのである。昭和53年に中流の整備を終えて、昭和54年から下流の整備を始めたが、本気で取りかかれば、おおよそ20年後の昭和74年ころには終わっていたはずである。辰巳ダムに拘泥して、平成24年(昭和87年)までかかってしまった。犀川下流の河道整備をいまだにやるはめになっている。
治水目的のダムは、防災システムの一環として計画されることになるが、洪水防止という防災のためにダムという手段を取ることによって、別の「地すべり」という災害の発生の危険性が出て、別の防災対策が必要となるという矛盾にぶつかる。
この「(ダム湛水による)地すべり」災害には二つの特徴がある。
一つは、湛水に起因するダムサイトの斜面崩壊という災害、
もう一つは、湛水に起因するわけではないがダムに湛水されていることで被害が拡大する下流地域のダム津波という災害である。
マニュアルには、「湛水に伴う地すべりの滑動には初期湛水時に発生するものと、ダムの管理段階で発生するものがある。前者は貯水池斜面が初めて水没するときの反応であり、後者は貯水位が繰り返し変動しているときの反応である点が異なっている。このため、地すべりの監視・計測は、単に試験湛水時にとどまらず、ダムの管理段階においても引き続いて実施しなければならない。」(161ページ)とある。試験湛水で初期の反応はわかっても、稼働後の貯水位が繰り返し変動するときの反応はわからない。マニュアルを前提とすれば、運用してみて、想定する豪雨が実際に発生した場合でなければ地すべりの安全性を確認することはできない。
辰巳ダムでは、昨年、半年かけて試験湛水が行われた。幸いに地すべりの兆候は見られなかった。辰巳ダムの試験湛水では、満水に1ヶ月以上かけ、満水状態から3ヶ月以上かけて空にしている。しかし、貯水位の低下は最大でも1日に1mにしか過ぎない。ところが、実際の運用では満水状態から空になるのは19時間(石川県の試算)と非常に短い時間である。試験湛水ではおよびもつかない急激な水位低下が起こる。
急激な水位低下により、土中の残留水圧のため斜面が不安定になる。石川県による安定計算では、R/D比の低下量が5%未満であり、対策工は要らない(すべらない?)と判断しているが、地すべり発生がないとは保証されているわけではない。
そもそもダムは本来、水瓶である。辰巳ダムのように治水の目的だけにダムを造るというのは鬼っ子であり、本来は禁じ手みたいなものだ。よほどの特殊な事情がなければ造られない。ところが、日本ではこれがダム目的の主流になりつつある。発電や利水の目的でダムを造る時代ではなくなったからだ。
治水のためのダムというのは緊急避難的な暫定措置といった性格のものである。なぜなら、「利水目的」では、水不足を補うために水を貯めるダム以外の代替案はないと考えても間違いないが、「治水目的」では、河道拡幅など代替案が複数あるのが通常であるからである。
半世紀もかかるといわれる河道整備などの方法では、時間的な余裕がなくて間に合わないなどの条件がある時の緊急避難措置が治水ダムである。犀川には、すでに犀川ダム、内川ダムと2つの治水ダムが整備されており、緊急性はない。
河道整備を着実に進めればよかったのである。昭和53年に中流の整備を終えて、昭和54年から下流の整備を始めたが、本気で取りかかれば、おおよそ20年後の昭和74年ころには終わっていたはずである。辰巳ダムに拘泥して、平成24年(昭和87年)までかかってしまった。犀川下流の河道整備をいまだにやるはめになっている。
治水目的のダムは、防災システムの一環として計画されることになるが、洪水防止という防災のためにダムという手段を取ることによって、別の「地すべり」という災害の発生の危険性が出て、別の防災対策が必要となるという矛盾にぶつかる。
この「(ダム湛水による)地すべり」災害には二つの特徴がある。
一つは、湛水に起因するダムサイトの斜面崩壊という災害、
もう一つは、湛水に起因するわけではないがダムに湛水されていることで被害が拡大する下流地域のダム津波という災害である。
マニュアルには、「湛水に伴う地すべりの滑動には初期湛水時に発生するものと、ダムの管理段階で発生するものがある。前者は貯水池斜面が初めて水没するときの反応であり、後者は貯水位が繰り返し変動しているときの反応である点が異なっている。このため、地すべりの監視・計測は、単に試験湛水時にとどまらず、ダムの管理段階においても引き続いて実施しなければならない。」(161ページ)とある。試験湛水で初期の反応はわかっても、稼働後の貯水位が繰り返し変動するときの反応はわからない。マニュアルを前提とすれば、運用してみて、想定する豪雨が実際に発生した場合でなければ地すべりの安全性を確認することはできない。
辰巳ダムでは、昨年、半年かけて試験湛水が行われた。幸いに地すべりの兆候は見られなかった。辰巳ダムの試験湛水では、満水に1ヶ月以上かけ、満水状態から3ヶ月以上かけて空にしている。しかし、貯水位の低下は最大でも1日に1mにしか過ぎない。ところが、実際の運用では満水状態から空になるのは19時間(石川県の試算)と非常に短い時間である。試験湛水ではおよびもつかない急激な水位低下が起こる。
急激な水位低下により、土中の残留水圧のため斜面が不安定になる。石川県による安定計算では、R/D比の低下量が5%未満であり、対策工は要らない(すべらない?)と判断しているが、地すべり発生がないとは保証されているわけではない。