犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>末端地すべりのこと(地すべり1)

2013年06月22日 | 辰巳ダム裁判
 辰巳ダム湖の中央に接する「鴛原超大規模地すべり地(L3ブロック)」の地すべりについて、核心的事項はどうも末端地すべりのことのようである。

 大規模な土塊がいきなり動き出すと言うよりも、部分的に崩れたり、動いたりして、土塊のバランスが崩れ、これが地中全体に波及して、いずれ地すべり土塊全体が動くと考えるのが一番自然なようである。

 となると、末端地すべりの小さな土塊が崩れて不安定にならないように対策するというのは不可欠でもあり、その対策も比較的容易と考えてもいいだろう。少し大々的に考えても抑え盛土による対策であれば数千万円といったところだろう。

 ところが、民間企業の現実的な対策工事と違って公共工事となるとそう簡単ではない。当事者の地元住民ばかりではなく、いろいろな人たち(税金で行われる工事だから、国民全部か)からいろんな意見がでてうまく対応できないとどんどん問題が拡大する。担当の職員は大変である。「左翼の野郎が好き勝手なことをいいやがって」などとツイッターで愚痴をこぼしたくもなろう。

 どうも、辰巳ダムの鴛原超大規模地すべり地(L3ブロック)の対応でもそのようなことが起きたようだ。事業者である石川県の内部でも、対策派と対策無し派と対立があり、結局は対策無し派が抑えて、対策無しとする方向にしたということを風の噂で聞いたことがある。

 対策無し派にしても、小規模な末端地すべりの対策は容易であり、適当な規模の費用を見込みたかったはずである。しかし、L3全体では大規模であるので様々な意見を入れて検討を進めると懸念が拡大し、最終的にはダムの是非の問題まで発展することを恐れたのかもしれない。代替案の費用比較検討の際、ダム案には地すべり対策費用を入れずに見積もり、ほかの代替案と比較して費用も安価であることが最終的にダム案に決めた有力な根拠としている。地すべり費用を見込めば、ダム案が不利になる懸念があったのである。

 平成4,5,6年の石川県作成の報告書では、末端地すべりを検討して、安定計算を対策工、費用まで出している。この図面は、今回の証人尋問でも示して、石川県が当時は、末端地すべりの問題を認識していたことを確認している。ところが、4年のブランクがあり、平成10年の報告書では、末端の地すべり想定面は削除され、削除した理由も記載されていない。

裁判で被告は、末端地すべりは起きないと主張し、理由を2点あげている。
「地すべり土塊の末端の崖地が長期にわたって地形の変化が見られないこと」、
「土塊の地質の性状が一様で特に劣化してないこと」である。
本件の地すべりは数百年それ以上の歴史があるから、数十年のスパンでは変化がわからない、抽象的で具体的な根拠にならないのであり、理屈にもならない理由である。

石川県が依拠するマニュアル「貯水池周辺の地すべり調査と対策」には、風化岩地すべりでは「側部、末端で二次的な地すべりが発生する」と明記されている。どんなことをいわれようが、将来の大きな懸念を払拭するために、末端地すべり対策はやっておくべきだった。

 水俣病の有機水銀中毒問題を思い出す。無機水銀を放出していた「日本チッソ」は当社の無機水銀が原因ではないと主張していた。自然界で無機水銀が有機水銀に変わることはないという説を信じていた。しかし、懸念もあった。もしかして有機にかわるか。絶対無いとして対策しなかった。宇井純は、後年、チッソが水銀除去対策をしておれば被害はかなり小さくなったはず、費用は数百万円でできたと語ったという。鴛原超大規模地すべり地でも、昔、わずかな対策をしておけばよかったと悔やむ時が来ないことを願うばかりだ。(つづく)
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