読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

今野敏の『ヘッドライン』

2022年06月29日 | 読書

◇『ヘッドライン

   著者:今野 敏    2013.4 集英社 刊(集英社文庫)

     
 今野敏「スクープシリーズ」第2弾。
 警視庁刑事部捜査第一課特命捜査第二係所属の巡査部長黒田裕介が主役の一人。
捜査第二係は未解決事件継続捜査が仕事である。
 東都放送 (TBN)夜11時のニュース番組『ニュースイレブン』のデスク鳩村昭夫。
メインキャスターの鳥飼行雄、女性キャスターの加山恵理子、社会部の遊軍記者で
現在はこのニュース番組の専属記者として動いている布施京一。これが主要登場人
物であり、ここにサブとして東都新聞記者持田豊、黒田の相棒谷口などがいるが、
主役と言えばTBN遊軍記者の布施とその上司である鳩村、そして警視庁の黒田刑事
である。
 スクープシリーズとあるようにTV局でも新聞でも抜きつ抜かれつの争いがあり、
これが小説の種になる。
 どこかに抜かれないように常に如何に独自性のあるニースを打ち出すかが競争で
あり、不思議と布施は独特のひらめきや独自の交友関係から新鮮なニュースを掘り
出してくる。
 一方黒田は未解決事件の一つ、美容学院生惨殺事件の手掛かり難からTBNの布施
が何かつかんでいるらしいとの聞き込みから飲み屋「たち吉」で危うい取引ながら
も互いに情報を交換し合う約束をする。
 布施の情報源であるディスコや危うい感じの外人クラブなどにも連れていかれ、
米国CIA エージェントに紹介されたりもしたが、何となく薬物売買、カルト教団と
の関わりが濃厚となってきて、証拠固めも見えてくる。
 TV ニュースでは映像が命とばかりに布施は家庭用ビデオを活用したりして独自
のニュース種で番組を盛り上げる。立場上鳩村は布施を指導しなければと思いなが
らも布施の独自路線の貴重さを認めざるを得ず、結局スクープ番組を成功させる。

今野敏の新しい視線による作品群を切り開いた作品である。(だがこのシリーズは
5作と短命に終わった)

                         (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする