2007年10月のブログ記事一覧(2ページ目)-ミューズの日記
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今回次の様なご質問を頂きましたのでそれに対してお答えいたします。
質問『楽器に張ってある弦はみんな同じものですか?楽器と弦の相性もあると聞いたことがありますが。また楽器と弦の相性ってどのように判断したらいいのでしょうか?』

先ず、楽器に張ってある弦はみな違います。製作家が自分が一番よいと思う弦を出荷するときに張ってます。しかし、その弦がそのギターと一番相性が良いかどうかは分かりません。製作家の多くは精度の良さや張りの強さなどで選んでいる場合が多いですね。時にはその楽器の売り(例えば大きな音)を協調するのに適した弦を選ぶ場合もあります。また、お店の人によって考え方、好みも違いますので張り替える弦もまちまちになります。

では楽器と弦の相性をどの様に判断するかですが、これはなかなか難しい問題です。解り易いお話をします。硬い音で張りの強い楽器に張りの強い弦を張るとますます硬く、張りが強くなりますし、まろやかな音で張りの弱い楽器に張りの弱い弦を張ると少し頼りない音になりますね。立上りがよくてパンと鳴る楽器には少々張りの強い弦を張るとその特徴である鳴りが協調されていいでしょうね。しかし、この楽器と弦の相性と言うのは誰が決めるかと言うと弾く人が決めるんですね。好みによって相性判断も違ってきます。

例えばグラナダの製作家でアントニオ・マリン・モンテーロ、ホセ・マリン、パコ・サンチャゴ・マリンなどマリン一族はカーボン弦を張ってきます。しかもドイツ製の弦で日本では販売されていません。これは立上りがよく、音が金属的にはなりますが、歯切れがよく大きな音がします。彼らはギターの売りをこの立上りの良さ、歯切れの良さと鳴りにしているからそのカーボン弦を張ってくるのでしょう。これを好む人もいますが、普通のナイロン弦の方が落ち着いていて好きだと言う人も居ます。これは好き好きですね。弾く人の好みです。

従って、よく質問される事に『一番のお薦めの弦はどれですか?』と言うのがありますが、いつもこう答えています。『いろいろ違う弦を試してみて自分でこれが一番合うなと思う弦を見つけてください』と。




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今日は具体的なギターの選び方についてお話します。

先ずは予算内のギターを2本ずつ弾き比べをする事です。2本のギターを同じピッチに調弦してから同じフレーズや音を楽器を換えて弾き比べます。3本以上を一度に弾き比べしないことです。何故なら殆どの方は分からなくなります。AとBを弾き比べしてどちらかを選びます。もしAが良ければAを残して次にCと比較します。つまり1対1のトーナメント方式で決めていくのです。しかし、必ず音合わせをしておいてから弾き比べすることです。ピッチが違ったり音が合っていないと比較できません。
そして自分が弾くだけでは判断が付かないときは第3者に弾いてもらって正面で音を聴き比べすることも重要です。自分が弾いて聴く音と第3者が弾いた音を聴くのとでは違って聞こえてきます。

その時に難しい曲やまだ弾けていない曲などを弾かない事です。何故なら演奏する事に気を取られて音を聞き分けする余裕がなくなるからです。たまに楽譜を取り出して練習中の曲を弾く人がいますが、楽譜を見て弾くと言う事は音を判断する神経が半減してしまいます。簡単な曲やフレーズ、和音、アルペジオなどを弾くと良いと思います。そして音に強弱をつけて歌うように音を出すことです。自分が出したい音(音色)や強弱の抑揚がつけ易い楽器を選ぶためです。これは「楽器の選び方 その1」でお話したとおりです。
ここで判断する要素は、鳴り、音色、分離、バランス、弾き易さなどです。弾き易さはネックの形状、太さ、フレットの大きさ、高さ、弦の張り、弦長などが影響してきます。

より細かに弾き比べをする時には、あくまでも1例ですが、次ぎの様な弾き比べもいいでしょう。
1.高音でメロディーを弾く曲(例えば禁じられた遊びやマリア・ルイサの様な)、又は高音の音階を弾く。
2.低音を使う曲(例えばワルカーの小さなロマンスやロボスの前奏曲1番の様な)、又は音階を弾く。
3.中音域の曲(例えば11月のある日など)、又は音階を弾く。
4.和音を弾く(例えばミランのパバーヌ第3番など)
5.アルペジオを弾く(例えばロボスのエチュード1番)

これらを弾く事で高音から低音にかけてのバランス、音の分離などを比較します。指の動く人は早いスケールなどを弾いて楽器がもたつかないか、立上りが速い楽器かどうかも弾き比べるといいでしょう。

そして最後の決勝戦で迷う場合は第3者にも音出ししてもらうことと、自分でも10分~15分はその楽器を弾く事です。素質の良い楽器はどんどん鳴ってきますし、自分が気持ちよく弾けるのはどれかが分かって来る筈です。

さて、次回は皆さんの疑問・質問にお答えすると言う形をとらせていただきますので、コメントで疑問・質問をお寄せ下さい。私で答えられる範囲でお答えしたいと思います。



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皆さん、この所随分と乾燥しているのをご存知ですか?今日も30%になり慌てて加湿器を出しました。冬場にエアコンをつけるから乾燥し過ぎて木が割れたり、フレットが飛び出したりすることがありますが、この時期も結構乾燥するんです。
楽器に最適な湿度は45%±5%ですが、35%を切ると要注意です。

最近私も乾燥肌になりがちで、足首の上が痒くなってきて乾燥しているのを実感するんですが、皆さんもこの乾燥には気をつけてください。冬場のエアコンをつけるときが恐いと思い込んでいて意外と今の時期を油断してしまいます。

去年のこの時期にあるお客さんがハンザーIIIの新作を買われて表板にクラックが入ってしまったことがありました。対策としては①ギターの部屋に加湿器をつける。②湿度保持剤をケースに入れる。などですが何かやっていますでしょうか?


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昨日は建孝三さんとゲストの鈴木信子さん(ソプラノ)によるコンサートでした。
同じ日に多治見で中部日本ギター協会の「アンサンブルの集い」があり、東海学生ギター連盟の合同発表会が名古屋工業大学内であり、中日と巨人の雌雄を決するゲームがあり、とタイミングが悪かったですね。折角の素晴らしいコンサートが少し淋しかったです。
プログラムもスリムではあるものの魅力的な内容だったんですよ。
<プログラム>
1.アルバの鐘/E.サインス・デ・ラ・マーサ
2.ノクターナル OP.70/B・ブリテン
3.バーデン・ジャズ組曲/J・イルマル
  1) Simplicitas
   2) Berceuse
   3) Ronda a la Samba
4.組曲「スペインの城」/ F・モレーノ・トローバ
  1)田園叙情詩     2)トリーハ(哀歌)
  3)美しい少女に    4)沈める思い
  5)祝祭        6)眠れる王女
  7)吟遊詩人の恋唄   8)セゴヴィアの王城
5.「ファリャの7つのスペイン民謡」/M.デ・ファリャ*
  1)ムーア人の織物
  2)ムルシア地方のセギディーリャ
  3)アストゥリアーナ  4)ホタ   5)子守歌
  6)カンシオン     7)ポロ
                  *ソプラノとギター

特に2曲目のブリテンのノクターナルは建さんが75年に東京国際コンクールで優勝したときの曲で、この曲を聴きたいと来ていただいた方もいます。コンクールのときは神掛かった演奏だったそうですね。ご自分でも言ってましたが「第一音を出したときから最終音を出し終わるまで別世界に居た」そうです。その時の演奏を聴いた人もご来場いただきましたが、その時に比して更に磨きが掛かった名演をだったと大好評でした。それはそうでしょうね。コンクール以来32年、プロとして活躍されてきた人ですから。

また、ソプラノの鈴木さんは建さんの奥様の親戚で名古屋市にお住まい。ギターと一緒に歌うのにも慣れていらっしゃる様子で息の合った歌を聞かせていただきました。驚いたのは建さんのギター。ソプラノの声に埋もれることなく美しい音色でとてもよく鳴っていました。57年のフレタI世。弾かせて頂きましたがフレタらしくない素晴らしいフレタでした。

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輸入ギター、特に銘器と呼ばれるハウザーやロマニロスは新作なのに何故こんなに高いのですか?と言う質問をよく受けます。確かに日本人製作家の場合は最高でも100万円ですよね。先日、ギターの価格は材料のグレードで決まると言いましたが、それでは300万円するギターは日本製最高の100万円より3倍もいい材料を使っているのでしょうか?それは違いますよね。寧ろ日本人製作家の方がいい材料を使っている場合があります。
また、300万円のギターは100万円の3倍いい音がするのしょうか?それも違いますよね。

答えは簡単です。需要と供給のバランスで価格は決まっているのです。
例えば70年代初頭にジュリアン・ブリームがホセ・ロマニロスと言うギターを使い始めた途端にロマニロスは世界中に知れ渡り、価格が高騰しました。つまり、世界中から注文が入って製作が追いつかなくなり値段が上がった訳です。ラミレスやフレタ、ハウザーもセゴビアが使って有名になり、世界中から製作依頼が入ると何年も待たないと入手できない時代がありました。
1975年にスペインに行ったとき、パウリーノ・ベルナベの工房に行って注文したら7年待ちと言われました。当時はイエペスがベルナベの10弦ギターを使っていましたので、尊敬するイエペス先生が使っているベルナベが欲しくて注文台帳に名前と住所を書いてきました。

こう言った銘器と呼ばれるギターは製作本数も限られています。年間で10数本でしょう。中には年間に10本に満たない製作家もいます。1本1本、材料を吟味して、その材料の性質にあった板の厚みや響棒の削り具合、塗装の厚さも含め、細やかな配慮をしながら作ると本数は自ずと限られてきます。日本人製作家にも年間製作本数が10数本と言う人が居ます。例えば仙台の三浦さんです。彼曰く、一度に平行して製作出来るのは2本まで。3本以上同時進行すると1本1本に細やかな目配りが出来なくなるそうです。従って三浦さんのギターは100万円のモデルに限定して直売しかされていません。卸販売出来るほどの本数が作れないんですね。従って楽器店には並んでいません。唯一ミューズだけがショールームとして楽器をお預かりしています。

しかし、最終的には楽器の命は音です。銘器と呼ばれる楽器はどこか違う、音に芯や品があったり、粘りがあったり、どことなく魅力的な音色だったり、響きが違ったりするんですね。そして60年代、70年代のI世、II世の作品が随分と高値で取引されていますよね。これは既に製作家がこの世に居ないのでもう新作が出て来ない、年数が経っていて良い音になってきているなどの理由で高くなっています。これも需要と供給のアンバランスに起因するものですが、投資目的で取引される事もあり価格高騰に拍車をかけています。10年ほど前からのアメリカが正にそれで、この10年はアメリカがクラシックギターの価格相場を上げているとも言えます。事の発端はエレキギター、フォークギターのビンテージものです。今やエレキやフォークのビンテージものは数百万円で取引されています。中には10万ドルを越えるものまで出ています。アメリカのギターセンターと言う最大のチェーン店の幹部が日本にクラシックギターの買出しに来た事もあります。

以上、今まで皆さんが疑問に思われる様な事を中心に総論めいたお話をしてきました。次回から具体的に実際選定する時の注意点などをお話します。

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