2007年10月のブログ記事一覧(3ページ目)-ミューズの日記
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今日は入門者用のギターの選び方についてお話します。
ギターは2~3万円からある訳ですが、私は5~6万円以上のギターをお薦めしています。理由は簡単でこの価格帯からようやく音がしっかり出て初心者の方にも弾き易いからです。初心者にとって何が一番重要かと言うと弾き易いと言う事です。では弾き易いということは何かと言うと①鳴る、②押さえ易いではないでしょうか。初心者は楽器を鳴らすタッチがまだ出来ていませんし、左手も上手に押さえるコツを身に付いていません。従って押さえ易く、鳴らし易い楽器を使わないとなかなか上達も難しいですし、場合によっては挫折もしやすくなります。

また、品質と言う点も重要です。しっかりしたメーカー品でないと安かろう悪かろうの楽器になってしまいます。有名メーカー品であればちゃんとした品質管理の下に部品ひとつひとつの材料の吟味から乾燥も充分してありますから安心です。強度の弱い材や乾燥不十分の材を使うとネックの反りやボディーの膨らみ変形が起こり演奏不可能になります。

先日も言いましたが、材のグレードで価格は決定されます。これは数万円から30万円までのメーカー品でも同じです。例えば2~3万円のギターの方が圧倒的に生産数量は多いです。材料の長期備蓄計画も大変です。従ってヤマハの様な信頼できるメーカーは材料の長期備蓄計画を実施して、自然乾燥、人口乾燥、工場内の湿度管理もきちっと実施しているので安心ですが、不誠実なメーカーの楽器には故障が多いです。何故かと言うと、不十分な乾燥のまま材料在庫の回転を速くして運転資金削減をしようとしたり、グレードの低い材でコスト削減しようとするからです。そんなギターを買うと後で後悔する事になります。

現在日本製の最低価格は6万円です。コダイラ、アランフェス、松岡などがその代表ですが、コダイラと同じ工場で生産しているエコールと言う楽器が素晴らしい出来栄えです。コダイラの鳴りを維持しながらも音がしっかりしていて全体の響きがこのクラスで最高です。また、中国製ですがアリアのA50と言う楽器が5万円クラスとしてお薦めできます。バランスよく鳴ります。

また表板は松か杉かと言いますと、一般的には10万円クラスまでは杉をお薦めします。松は松脂もあり杉に比べて硬いためこのクラスでは鳴らしにくい(鳴る楽器を作り難い)です。手工ギター(30万円以上)で使う松に比べてこのクラスに使う材はグレードも落ちますし、乾燥のために寝かす期間も短くなります。そうなると断然杉の方が鳴りやすいギターを作りやすいんです。だから殆どのメーカーが10万円までは杉が多いですよ。タッチがまだ出来ていない人は鳴り易い楽器の方が弾き易いですからね。

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南山大学のギターアンサンブルの皆さんに引き続き、先日は中部大学のマンドリンクラブのギターパートの人達にギターの楽器としての歴史とギター音楽の歴史について簡単なお話をして、DVDで名演奏家の演奏を鑑賞すると言う講座を開きました。そして下記の様なお礼のメールをいただきました。
『先日のギターの勉強会は本当にありがとうございました。とても勉強になり、また良い刺激になったと思います。普段はマンドリン合奏の伴奏パートとしてすることが多く、どうしてもギターの独奏の曲などに触れる機会が少なくなってしまいがちですが、今回の勉強会で皆よりいっそうギターの魅力が伝わったことと思います。これからもいろいろとお世話になることがあると思いますがそのときはよろしくお願い致します。中部大学 林圭祐』

そしてある先生から『それこそブログで紹介したら!』と言われましたのでギターの歴史の部分だけご紹介します。実際にはパワーポイントで要点を纏めてお話をしましたので、話を聞いていただかないと説明が不十分になるのですが、先ず楽器の変遷を年表形式で表すと次の様になります。

1400  4コースギター
1500  ビウエラがスペインで全盛
      ヴァイオリン北イタリアで誕生
1600
     5コースギターがポピュラーに
1700  アマティ、ストラディヴァリなどヴァイオリン巨匠の全盛期
      この頃ギター音楽不振
1800  6単弦ギター確立
     欧州の製作者らアメリカへ→新大陸でフォークギター誕生(マーチン)
1900
     アメリカでエレキギター出現(ギブソン・ジャズギター)

ルネッサンス時代の4コースギターはウクレレの原型と言われていて調弦もA、E、C、Gとウクレレと同じです。弦長は56cm程あり、1コースのみ単弦で後は複弦で一般民衆の歌や踊りの伴奏に使われていました。

また、ビウエラは6コース複弦の楽器でルネッサンス時代にスペインの上流階級の間で流行りました。他の国ではリュートの方が盛んになったのですが、スペイン人はリュートをイスラム文化の象徴として排除したと言う説があります。これは8世紀初頭から15世紀末までイスラム教徒がイベリア半島を支配し、その間キリスト教徒が国土を奪い返そうとした時期が約8世紀にも及んだんですね。それをレコンキスタ(国土回復運動)と言うのですが、最後のグラナダを奪回できたのが1492年でした。ご存知のようにリュートの前身は中近東の民族楽器・ウードだと言われています。その異教徒の楽器をスペイン人は嫌ったんだと思うんです。

バロック時代になり5コースギター(複弦・1コースは単弦)、弦長は65cmとなります。このバロックギターの特徴としてはその装飾です。サウンドホールのはめ込み細工や周りの花飾りに懲りました。下駒も口ひげと呼ばれる華麗なものも多く作られました。しかし、指板は表板と同じ高さであったり、フレットはガットで結ぶタイプのものでした。そしてバイオリンの隆盛と反比例して衰退して行き、代わりに6コース単弦ギターが出現しました。
つまり4複弦 → 5複弦 → 6単弦となったのが1780年~1810年ごろで、約200年毎に1コースずつ増えた事になります。そして今7弦ギターと言うのもありますね。

また、6単弦ギターになって装飾より実用性が重んじられるようになり、フレットも金属製になります。指板もサウンドホール近くまで伸びて音域が広がっています。このライセンスを持っているのはヨハン・シュタウファーだといわれています。彼は後にアメリカでスチール弦のギターを確立したマーチンの師匠として有名です。この時期にはヨーロッパの製作家が新天地・アメリカへ移住していきます。その中の一人にC.F.マーチンが居たわけです。一方欧州に残った中の一人、アントニオ・デ・トーレス(1817-1892)が19世紀ギターからモダンギターの形を確立したと言う訳です。

以上、数世紀に亘るギターの歴史を一辺にお話しましたので少し長くなりました。お許しを・・・。

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よく質問される事に「ギターの値段の違いは何から来るのですか?」と言うのがあります。確かにギターは2~3万円台から数百万円と幅がありますよね。弦は同じ6本だし、見た目にはあまり変わらないですからね。

今日は手工ギター、つまり個人製作家のギターの価格の違いについてお話します。現在個人製作家の最低価格は30万円になっています。同じ製作家でも30万円、50万円、80万円、100万円とランクが分かれている場合がありますが、これは一言で言えば材料の違いで価格が変っています。決して30万円は手を抜いて作っている訳ではありません。尤も高いギターの方がバインディング(縁取り)が凝っていたり、ヘッドに彫刻がしてあったりと余分な手間が掛かっている場合もあります。中には糸巻きをロジャースにして100万円のギターが120万円と言う価格になる場合もあります。でも基本的には木材のグレードが価格の違いに大きく拘わっています。

例えば皆さんもご存知のようにハカランダはローズより高い価格帯の楽器に使われる事が多いですね。これは材料コストが高いからです。昔の銘器にはローズウッドが使われているケースも沢山ありますし、現在名器と言われるハウザーやロマニロスもローズを使うこともあるのですが、ハカランダが見た目にも美しく、材質も硬いのでカーンと音の跳ね返りも良く、芯がありクリアーな音が出やすいので、いつしか高級ギターにはハカランダが使われるようになり、ハカランダ神話が確立しました。(ハカランダはブラジリアン・ローズウッドが正式名でローズの一種)しかし、ハカランダは1993年のワシントン条約により入手困難で、最近は従来の4倍~5倍の値段に跳ね上がって製作家も嘆いています。これからどんどんギターの価格も値上がるでしょう。

また表板の材料の最高と言われるのはドイツ松ですが、ドイツ松でもアルプスの北側斜面の材が最高とされています。これは北側は日当たりが少ないため木目幅が狭く気候の変化を受けにくいため、成長が素直で木目が通った材が得られやすいからです。しかし、最近はドイツの木材業者がどこで伐採したか分からない松をドイツで製材して出荷すると、それもドイツ松と言っています。ひょっとしたらドイツ以外の国で伐採された松材かも知れません。従って本当はヨーロッパ松と呼ぶのが正しいかも知れません。

また単に木の種類や産地だけではなくそれぞれでグレードがあります。ヤマハ時代にギターとバイオリンの設計・開発・生産管理も見ていた頃、材料の備蓄計画も管理していました。そして設計担当者と資材部の担当者とで材料手配の打ち合わせもよくやりましたが、同じ種類の材料にもマスターグレード、AAA、AA、Aグレード等と言う区別でコストが大きく違っていました。
従ってハカランダとかドイツ松と言ってもいろんなグレードがあり、価格も大きく違います。またコストも年々上がっています。昨今は値段をキープするには材料のグレードを落とすしか方法がなくなってきています。

更に昨日も述べましたが、どれだけ寝かして乾燥させているかも重要です。何十年も寝かして乾燥した材は貴重ですし、高い価値がある訳です。何故乾燥した材はいいかというと、ある気候状態で木材がそれ以上水分が蒸発しない状態になることで安定すると言う事と木材内部の液状、樹脂分が酸化する事で結晶化して固体化することでよく響くようになるんです。枯れてきて良く鳴っていると言う状態になるんです。

以上、材料の違いがギターの価格決定にに大きく関わっていると言う事と、材料の違いが音の違いに大きく関係してくると言う事です。


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よくある話に「この楽器は弾き込むと良く鳴るようになります」と言う事を耳にします。笑い話ですが、
店の人 「お客さん、このギターは10年くらい弾き込むと凄く鳴って来ますよ」
お客  「私は歳だから10年生きていないかも知れないので、今鳴っているギターを下さい。」

皆さんも弾き込むと鳴ってくると言う話を良く聞くと思いますが、本当はどうなのか疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?また、最初は自分には鳴らし切れない楽器もだんだんと育てて行くもんだと聞いたことがありませんか?そうすると迷ってしまいますね。最初から鳴っている楽器を選んだほうがいいのか、将来鳴りそうな楽器を選んだほうがいいのか。
また、「音が枯れてくる」と言うこともよく聞きますね。「枯れてきてていい音してるね」なんてね。

先ず結論から申し上げると弾き込むと鳴ってくると言うのは正しくて間違っています。振動を与える事で楽器が響きやすくなると言うのは事実ですが、鳴ってない楽器が鳴るようになるかと言うと何とも言えません。寧ろ鳴ってない楽器が鳴るようになる保証はどこにもないと思っていただいた方がいいでしょう。
楽器はケースから出して15分~20分弾いていると鳴ってきます。特に冬の寒いときにはそれを強く感じる事があります。これは自分の指も暖まってくると言う事もありますが、楽器も体温をもらい暖まってきます。寒さで硬くなっていた塗装も柔らかくなります。しかし、これも鳴らない楽器はあまり鳴るようには変化しません。

ヤマハ時代に生ヴァイオリンの設計・開発、生産管理も担当していた時に、ヴァイオリンを出荷する前にある周波数で共振させる工程を入れていました。振動を与える事で木の細胞が整列しなおすと言われています。この整列の仕方は与える振動によって異なってきます。それが弾き手の音が楽器に刷り込まれると言われる所以です。従って最初は鳴らない楽器も弾き込んで育てていくと言うのは良いタッチでよい音を鳴らさないといい音に育っていきません。綺麗な音の木の細胞の整列にしていかないと駄目なんですね。上手く弾きこむ事で音も絞まり、艶も出て、音色に変化が出てきます。これは古い弦(特に低音弦)は早めに換えないといけないということにも繋がります。ボケた音で弾いていると楽器がボケた音を覚えてしまって新しい弦に交換してもボケた音しか出なくなるんです。


「弾き込むと鳴る」と言うのはこう言う意味合いともう一つが木が枯れてきて楽器が鳴りやすくなると言う意味合いがあります。木が古くなると木の細胞が結晶化します。それが枯れた感じとなります。従って製作家も40年~50年経過している古い材を最高級モデルに使用する事があります。現在ミューズにあるギターでは加納さん、一柳さん、三浦さんの100万円のギターがそうです。中には古い家具や教会の木材を使うと言う話も聞いたことがあるでしょう。


以上の事から、「弾き込むと鳴ってきますよ」と言う言葉はあまり信じないほうがいいですね。寧ろ、「その1」でお話したように現在あなたが一番弾き易い、気持ちよく弾ける楽器を選ぶことがいいでしょうね。


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先日の箕面市でのイクリプス体験会&ギター展示・試奏会にお出で頂いたお客様からメールで次の様なコメントがありましたのでご紹介させて頂きます。

『スピーカーは非常によかったです。20年前に元同僚から説明された「スピーカーも楽器」という言葉に、長年抵抗感がありましたが、それがほぼなくなりました。スピーカーの色をなくすという言葉は元同僚から聞いた言葉とは全く逆の発想で感銘をけました。』

このイベントはブログでお馴染みの内生蔵さん宅をお借りして実施したのですが、当然スピーカーの解説は内生蔵さんが行いました。内生蔵さんは昔からオーディオマニアでご自宅には輸入物の高いスピーカーが5セットも設置されています。1本150万円もするスピーカーもあるんですよ。当然プリアンプ、パワーアンプ、CDプレイヤー、レコード・プレイヤーも1台何十万円もするものが何台もあります。
そして富士通テンのイクリプス推進担当の方が内生蔵さんの話を聞いて勉強になりましたと言う程にそのオーディオに関する知識たるや相当なものです。

そんな彼の話を聞きながらイクリプスと、1本で軽自動車が買えるくらいの輸入スピーカーと聞き比べして、イクリプスの音が如何に自然な音を再生しているかを皆さんで実感して頂きました。上記のお客様の言葉にある『スピーカーの色をなくす』と言うのはこう言う事です。『CDに録音されている音を素直にそのまま再生する。スピーカーキャビネットによる共鳴、余分な音を限りなく発生させない。そのためにイクリプスは卵型の形状をしており、スピーカーユニット(コーン紙)の振動が外装に伝わらないような構造になっている。パルス信号を正確に再生すること。その為には立上りが速く(振動を瞬時に始め)、振動し出したコーン紙が瞬時に止まる。振動が瞬時に止まらないと余分な音が残る事になるから。』これらが出来る事で音源に余計な色を付けることなく素直に自然に再生すると言う事です。
これは従来のスピーカーの音作りと言う発想とは全く逆の発想になるそうです。スピーカーの個性をなくすと言う表現も出来ますが、音源に一切の色を付けずにそのまま再生できる個性とも言えます。

この為にCDを再生しても中央で音を聴くとスピーカーからは音が聞こえず、音像がスピーカーの中央奥にくっきりと、まるでそこで演奏しているかのように聞こえます。キャビネットが共振したり、余分な音を発生すると音はスピーカーから聞こえてきますが、イクリプスではそれは皆無と言ってもいいでしょう。

この特製、個性がギタリストの間でPAシステムとしても高い評価を得ていると言えます。ギターの生音をそのまま再生してくれる訳ですからね。従来のスピーカーは生音に何らかの色が付き、生音と異質な音がスピーカーから聞こえてくるためにギターリストが嫌っていた訳です。『やはり生音がいい』『やはり生音でないと』と。

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