2006年8月のブログ記事一覧(3ページ目)-ミューズの日記
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皆さんは『カミニート』と言うタンゴの歌をご存知でしょうか?日本語に訳すと『小径』と言う意味になりますが、これはボカ出身の作曲家フィリベルトのタンゴの名作なんです。そしてその名の路地公園『カミニート』がボカにあります。
これはボカを愛した一人の画家、キンケラ・マルティンが作ったものです。
彼はボカの港の風景やそこで働く労働者の絵を描き、世界的に有名になります。絵を売って得たお金でボカに病院、学校、美術館などを建てる程彼の絵は高く評価されるんです。そしてフィリベルトの友人でもあった彼は、その名曲『カミニート』を称えてボカに100mの路地公園を作りフィリベルトの肖像を置き、壁にはレリーフをはめ込み、まわりの家の壁を赤、青、オレンジ、緑など鮮やかな色に塗り、カミニートを造ったんです。

カミニートには毎週日曜日になると画家が自分の絵やオブジェ、レリーフなどの作品を持って大勢やって来ます。写真がその風景です。
そのカミニートは観光地になっていて入り口には観光客相手の土産物屋がいくつかあります。私も出張者や日本からのお客さんが来ると必ず連れて行った場所です。『ここがタンゴの発祥の地なんですよ』と紹介しながら、昔の古ぼけた、いかがわしそうな酒場を外からお見せして、『この様な酒場で船乗り相手にホステスが集まり、踊ったのがタンゴの原点なんです』とガイド気分で説明したものです。
そしてカミニートでは必ず路上でタンゴ演奏やダンスをストリートミュージシャン達が披露しています。アルゼンチン赴任その4で掲載した写真が私がカミニートで撮影した1枚です。



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<あれも聴きたい、これも聴きたい> あこがれのレコード

 おいちゃんには今でもときめいてしまうレコードというかCDがある。それはジュリアン・ブリームの演奏する「スパニッシュギターの真髄」と題した1枚のレコードだす。今でもこのレコードだけは、ブリームの数あるレコードの中でも最初から終わりまで通して聴いてもまったく飽きることもなけりゃあ、退屈することもない。全て感心して聞き惚れてしまう。(それにしてもブリームも若いでしょ?持っておる楽器はハウザーでござりまするが、スタイルもいいし髪もフサフサ。若い人が見たら「これだーれ?」ちゅうて言われちまうかも知れん。)スパニッシュといっても、文字通りスペインの作曲家の手になる曲ばかりではなく、ブラジルのヴィラ=ローボスなんかも入っておる。しかし、そこに収められている音楽は、それまで知らなかったわけではねえけども、ここまでかっこええ演奏はそんなになかったように思う。

まず第1曲目のヴィラ=ローボスのショーロス第1番からしてものすごく乗りまくっている。歌わせ方といい音色の変化といい、また間のとりかたといい、まさに非の打ちどころがねえといった名演奏。当時この演奏を聴いて、誰もがこの曲にあこがれちまったんでねえべがと思うくれえ、とにかくかっこええことこの上なし。
作曲したヴィラ=ローボス自身だって、自分の曲がこんなにかっこええ曲だったとは、知らんかったのではねえべがっちゅうくらいかっこえがった。

その後はトローバのマドローニョスなんじゃが、これまた抜群。そのあまりのかっこ良さにあこがれて、学校さぼって名古屋の荒井貿易まで楽譜を買いに行った覚えがある。しかも、当時荒井貿易がまだ地下鉄伏見駅の上にあったころで、何ヶ月も待たされた上、楽譜が入荷したという知らせを受けたんで、喜び勇んで飛んで行ったのでござりまする。当日学校(高校)は運動会で、自分の出番を早々に終えたおいちゃんは、近くの知り合いの家で服を着替えさせてもらい、電車に飛び乗って楽譜を受け取りに行ったんじゃが、帰ってきてそのまま知らん顔で運動会の自分たちの席にこそっと戻ったところ、当然みんなから「おまえどこ行っとったんじゃ」と質問を浴びせられたが、そこは知らん顔で、とぼけとおしちまった。
 そんなことまでして手に入れたマドローニョスの楽譜は、なんと運指がまったく書かれていない、ただ音符だけの楽譜じゃった。それでも嬉しくて嬉しくて、ブリームの演奏から懸命に運指を探って練習したもんでしたなあ。その曲を練習していると、なんだかギター音楽の世界の最先端を味わっているようで、わくわくどきどきしたもんでごわした。

 その次はまたヴィラ=ローボスの練習曲11番。それまでヴィラ=ローボスの練習曲では1番が1番かっこええなあと思っておったが、この11番を聴いてしまって考えが変わった。もう単純!。11番が1番!(ややこしいけども)
今度は高校生にとっちゃあ当時どえりゃあくそ高い「12の練習曲」の楽譜(フランスのマックス・エシック社版)を手に入れた。それから毎日毎日弾いたわなあ。とにかくあのヴィラ=ローボス特有の不協和音にしびれましたなあ。
当時といやあ今から40年以上前だ。学校の同僚に聴かせたら「おめえなんちゅう曲弾いとるんや?もうちょっと分かり易い曲にしてくれん?」と言われちまったが、こっちはなんでこんなええ曲が分からんのか、そこが分からん」とか言ってわけのわからんことを考えとった。きっとギターのことなんか全然知らない仲間うちでは、「あいつ最近変な音楽にかぶれとるぜ」っちゅうようなうわさが立っておったんではないかと思う。

そんなことにはおかまいなしに、そのレコードではその後トゥリーナのタレガ讃歌、ファンダンギーリョ、アルベニスのグラナダ、アストゥーリアスなどと続くが、どれをとってもおいちゃんには目から鱗。近・現代曲に目覚めちまった。だもんだから、それからというもの、そのレコードの演奏をそっくり真似をしようと、毎日一生懸命励んでおりました。真似はどうかな?と少しは後ろめたい気持ちもあったが、、真似は真似でも完璧に真似できりゃあ、それはそれでまずはてえしたもんじゃねえかと割り切って、一生懸命おんなじように弾こうと努力をいたしましたが、それはほれ、土台無理ってもんだわなあ。おんなじようになんか弾けっこねえべ。何回も何回も挫折を味わって、おいちゃんの当時のひとつの目標でござりましたなあ。

今日、久しぶりにこのCD(最近当時のままの演奏がリマスタリングされてCDとして出たので)を聴きかえしてみたら、ふっとそんな青春真っ只中を思い出してしまったのでござりまする。今青春真っ只中の皆さんにも、一度若きジュリアン・ブリームの演奏を味わってくだされたく思いをめぐらす今日この頃でありました。忙中閑有。暑中お見舞い。

内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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昨日はタンゴにバンドネオンが加わったり、楽団が編成されるようになって変わったと言うお話をしました。歌もカルロス・ガルデルと言う名歌手が登場して、下賎な音楽であったタンゴが次第に大衆から上流階級にも浸透していくようになりました。ガルデルは歌だけではなく映画にも俳優として登場して大人気を博した時の人となりました。また、第1次世界大戦後、パリでタンゴが流行したのをきっかけにタンゴブームは世界各国に飛び火する事になります。そしてアルゼンチンタンゴがヨーロッパの音楽的要素を取り入れてコンチネンタルタンゴが生まれた訳です。

最初はボカの港の安酒場やいかがわしい踊り場で生まれたタンゴですから、踊りとしてもいやらしい踊りの汚名を着せられていたそうです。確かに男女がくっつき合い、足を絡ませて踊る姿は当時の上流社会の人々からは白い目で見られていた事は容易に想像がつきます。しかし、タンゴが流行のダンスになってからは、競い合ってコンテストが行われ、優勝したダンサーはあちこちのキャバレーやホールから引っ張りだこになっていきます。そしてダンスとしてもだんだん洗練されて現在我々が目にするような芸術にまで昇華して行ったんです。

タンゴ音楽もピアソラが登場して大きく変わります。彼はバンドネオンの天才奏者として、またモダンタンゴの先駆者として知られていますが、当初はアルゼンチンのタンゴ界からは異端児として扱われ、「あんなものはタンゴではない」とあまり歓迎されなかったそうです。彼は若い頃にニューヨークで育ち、パリで作曲の勉強もしました。そんな環境が彼の音楽を形成していったんでしょうね。ニューヨークでは当然ジャズやロックの影響を受け、パリではクラシック音楽、バロック音楽の影響を大きく受けてピアソラ独特の音楽が生まれたんです。昔ながらのタンゴファンには異質なものに聴こえたんでしょうね。しかし、彼はタンゴを踊るタンゴから聴くタンゴに変えたとも言えます。

日本でもヨーヨーマがサントリーの宣伝にリベルタンゴを使って有名になりましたね。それまではあまりピアソラの名前を知っている人はいなかったのではないでしょうか。何を隠そうかく言う私もアルゼンチンに行くまで知りませんでした。私が赴任したのが93年。ピアソラは丁度私が赴任する1年前の92年に亡くなっていました。しかし、アストール・ピアソラの息子さん・ダニエル・ピアソラとお孫さんのダニエル・ジュニア・ピアソラとはお付き合いさせていただきました。親子で同じ名前と言うのはよくある事ですが、ダニエルはキーボード奏者、ジュニアはドラマーで、ジュニアにはヤマハのドラムのプレーヤーとして良く仕事をしてもらいました。すごく感じのよい好青年です。今思うとあと1年早く赴任していればアストールに会えたのではと悔やまれます。

とり止めもなく書いていたら話があっちこっちに行ってしまいましたね。今日はこの辺で・・・。

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先回はビザも取得してやっと現地でアパートも決まったと言うところまでお話しましたが、アルゼンチンと言えば皆さんは何を思い浮かべますか?
先ずはアルゼンチン・タンゴでしょうか。バンドネオンの巨匠、アストール・ピアソラを思い浮かべる人もいるでしょうね。サッカー好きな人はマラドーナでしょうね。又はパンパ(大草原)とガウチョ(牛飼い)と言う言葉を思い出す人もいるでしょうね。今日はそのタンゴについてお話いたします。

首都のブエノス・アイレスにはタンゴの発祥地と言われる港街があります。ボカと呼ばれるこの地区は昔はアルゼンチンの玄関だったんですね。牛や作物、金や銀がこの港からどんどんヨーロッパに輸出され、ヨーロッパからは大理石から移民まで全てがこの港に到着したそうです。そんな地区で働く労働者や船乗り相手の酒場や踊り場でそれはたいそう賑やかだったそうです。いろんな国からの人達が入り混じり、音楽もいろいろと融合していく中でタンゴは生まれたんです。キューバからハバネラが伝わりそれが後にタンゴの原型となるミロンガの元になり、スペインからはアンダルシア・タンゴが運ばれてきて、更に黒人が持ってきたリズミカルなダンス音楽カンドンベや既存のフォルクローレなどが入り混じってタンゴが生まれたと言われています。

タンゴと呼ばれるものは1880年頃に生まれたと言われています。スペインから独立して70年後くらいです。最初はごちゃまぜの音楽を持ち寄りの楽器演奏していたんですね。でも主役は踊りなんですね。踊るための音楽だから楽器にはあまりこだわらなかったんですね。主にギター、フルート、バイオリン、クラリネットなどが使われていて歯切れの良い踊りやすい曲が好まれたそうです。今ではタンゴと言うとバンドネオンが主役の楽器ですが、当時はまだ入っていなかったんです。後にドイツからバンドネオンは伝わって来ました。皆さんが良く知っている「ラ・クンパルシータ」はバンドネオンが入ってから生まれた歌なんです。そう、歌詞のついた歌なんです。このバンドネオンが入ってタンゴも変化していきます。力強い旋律の中にもどこか哀愁漂う音楽になって行きます。そして踊りの音楽から聞かせる音楽に変わっていきます。そして楽団が結成されるようになると更に聴かせる音楽になっていくんですね。(つづく)

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真夏日ですね。外は大変な暑さですね。
そんな暑さの中、この週末もミューズでは2つのイベントで熱気ムンムンになりました。

8/5(土)は『ブラジル音楽の夕べ』と題したフルートとギターのコンサート。
8/6(日)はワンコイン講座『~初歩の和声学~ハーモニー分析による名曲解説その3』でした。

ブラジル音楽の夕べはブラジル帰りの渡辺有美さんのフルートと矢橋幸男さんのギターによるショーロやボサ・ノヴァ、ワルツも含め様々なリズムのブラジル音楽を披露してくれました。渡辺さんはパラグアイやブラジルに滞在経験があり、現在は名古屋大学大学院でアウグスティン・バリオスの研究をされているという変り種。有美さんの本場の香りをもった演奏に手馴れた矢橋さんのギターがいい雰囲気を出していました。
聴きに来たお客さんも矢橋さんの生徒さんを含め、ブラジル音楽好きの人達でミューズサロンが熱気で包まれる中、2階の教室では矢橋さんの師匠でもある佐藤正美さんのレッスンが行われていて、昨日のミューズはブラジル音楽で包まれました。

今日は服部修司さんによる3回シリーズの初歩の和声学の最終回。今回は名曲中の名曲、ソルの月光とタレガのラグリマを例題に和声分析による演奏のアドバイスと転調についてお話をしてもらいました。3回全てに参加した人は5名ほどでしたが、今日も20名の参加者が熱心に耳を傾けていました。今回は服部さんが用意された資料が足らなくなりました。予約なしで来られた方が予想以上に多かったため資料が足らなくなった次第です。是非事前のご予約をお願い致します。予約されていたお客様にしてみれば『予約していたのに何故資料がもらえないのだ』となってしまいます。当日出掛けられる直前でも結構ですのでお電話いただけると急遽コピーを増やす事も可能です。

ここで皆さんにお知らせです。
ワンコイン講座も来月で12回目を迎えます。来月は『私の脱力法~もっと楽に弾くために~』と言うタイトルで高岡さんにお話していただきます。13回目は『ラスゲアードとフラメンコのリズム』です。14回目は未定です。
そこで『こんなテーマでやって欲しい、あの先生にこんなテーマでやって欲しい』と言うリクエストを募集いたします。採用させていただいた方には弦をワンセットプレゼントいたします。
また一方では、ここらで一度お休みして今後のワンコイン講座のあり方を見直そうかとも思っています。更に充実した内容にするためにワンコインにこだわるのを見直すかも知れません。そこで皆さんの声をお聞かせいただければ嬉しいです。メールかファックスでタイトルと内容を出来るだけ詳しくお知らせください。勿論お店で直接お話いただいても結構です。お待ちしています。

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