2006年5月24日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 村治 昇 ギター教室 発表会

 尊敬する村治昇先生のギター教室の発表会が、5月14日(日)、東京の亀戸で行われ、私も拝見させていただきました。
行けるかどうか、直前まで分からなかったので、結局当日お伺いすることをお知らせしないままの訪問となってしまい、村治先生もさぞかし驚かれたことと思います。

 近々本をお出しになるということは前々からうかがっておりましたが、本の題名をお聞きしたら、どうしても先生の生徒さんたちを見てみたくなったからです。
既にミューズ音楽館の棚にも並んでいますので、ぜひとも皆さんにも読んでいただきたいと思うのですが、その本の題名は「先生!どういうふうに育てているの」というものでした。
 この題名を見れば、おそらくどなたも想像がつくと思いますが、先生のお子さんは知っての通り佳織さんと奏一君。誰だって「どういうふうに育てているの?」と訊いてみたくなるでしょう。でも私は、お二人が世界的なギタリストになったという意味で「どういうふうに育てているの?」というよりも、「どうして、お二人とも、あのように立派なお子さんに育てることができたの?」ということを、常々お訊きしたいと思っておりました。

 奏一君の方は、まだ直接はお目にかかってはおりませんが、NHKのテレビに出演してインタビューに答える彼を見て、若さに溢れた聡明さに心打たれた覚えがありました。いまどき、といったら気分を害される方もおられるかも知れませんが、現代の若者にはなかなか見ることができない姿を見たとき、家内共々いたく共感を覚えたものでした。
 佳織さんの方は、最近何度かお仕事をさせていただいた折にお話しする機会があり、その明るさと、分け隔ての無いやさしい人柄に感銘を受けてしまったのですが、それこそ、そんな素敵な二人のお子さんをどのように育てられたのかは、私だけでなく、誰でも一度はお尋ねしてみたいと考える素朴な疑問ではないでしょうか。

 そんなご両親は、永年どのようなことを考え、どのような我慢をし、どのような苦労を重ね、どのように子供に接してこられたのか。
そんなことに興味の湧かない親など、この世に存在しようはずもありません。
そのヒントの一端でも垣間見ることが出来ればという思いで、今回の発表会を見学させていただきました。結果的には、「ひとえに、先生の子供たちに対する深い愛情」としか言いようの無い、素晴しい体験をすることができた気がいたします。
それは先生の生徒さん、特に小さいお子さんたちに対する言葉、まなざし、接し方、全てが物語っておりました。

 11時30分に一般の部が始まり、1時30分ころまでに20名の方が出演。
かなりの年配の方もおられ、途中で何度も止まってしまうような場面にきても、先生は暖かい目で、そしていつも頭でリズムをとりながら、無言の励ましを向けられていた。
 昼食タイムをはさんで2時30分からいよいよ子供たちのステージ。
 一人ひとり演奏の前に、自分がどんなことをイメージしながらその曲を弾くのか、はっきりとマイクの前で発表してから椅子に座って弾き始めます。なるほど、ただ音譜を弾くのではなく、音楽に対して子供たちなりの意味を持たせて、音楽により親しみと潤いをということなんでしょう。なんとも皆かわいいイメージをもっていることかと、思わず顔がほころんでしまいます。
 そして一人ひとりの演奏に、先生自らがギターを持って伴奏を勤められる。最年少は年中の4人。その上が年長2人。それから上は小1から小5まで20人。さすがに生徒たちも皆一生懸命です。その間、村治先生と生徒たちとのほほえましい光景が、見るものの心をなごませてくれました。

その後は昨年度のジュニア・コンクールの入賞者が6名が出演。皆、小学生とは思えない達者な演奏でびっくり。
そして学生・一般のコンクールの入賞者が2名。
ここらまでくると、最早曲目もトゥリーナのファンダンギーリョやアルカスの椿姫の主題による幻想曲といった、一般のコンサートでも聴かれるような作品になってきます。驚かされるのは、ゲスト演奏として出場した小4の加藤早紀ちゃんによるジュリアーニのソナチネ。これはもう見事の一言。この演奏より拙いプロの演奏はいくらでもありそうな気がします。
その後は藤元高輝君(中2)や松田弦君といったプロ顔負けの演奏が続き、最後に村治先生の指揮によりジュニアと学生・一般の方々のそれぞれアンサンブル。
とくにジュニアによる歌と舞曲(ピポー)が、溌剌として素晴しい。
プログラムによれば総勢57名の出演でしたが、生徒の皆さんと村治先生との深いきずなを見させてもらったような思いがする発表会でした。

村治先生は、単にギターという楽器を教えておられるのではなく、ひょっとしたら人間にとってもっと大切なものを、ギターを教えるというかたちを借りてお教えになっているのではないでしょうか。
いつかミューズ音楽館にも村治先生をお招きすることができたら、そして、小さいお子さんをお持ちのお父さん、お母さん方と囲んで、みんなでお話ができたら、どんなに楽しい有意義な時間を過ごせるだろうという思いがいたします。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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