2006年5月18日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> いろいろアランフェス アリリオ・ディアス編

 以前にも登場したことのある、おいちゃんの大好きなベネズエラのギタリスト、アリリオ・ディアスには、知られるところでは、2回のアランフェス協奏曲の録音がある。一度は1968年の録音で、指揮者はラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス。オーケストラはスペイン国立管弦楽団。そのレコードのB面はジュリアーニのギター協奏曲イ長調 作品30。国内で発売されたのは、初来日したあと、何年かしてからじゃねえかなあ。上の写真でいうと一番右のジャケット。
ちなみに、真ん中はあとで購入した輸入盤。(中身は同じ)

ディアスのおっちゃんは1923年生まれだから、1968年といやあ、満45歳。最も油の乗った鰤(ぶり)みてえなもんで、テクニックも完璧。安定感抜群。
さっそうとオーケストラを従えて、とても早めのテンポで演奏しとる。
1楽章もそうだが、特に2楽章がかなり早い。時間にして8分40秒。3楽章も5分ちょうどで、とにかく全体的な印象は、かなり急いだ感が強いが、それでもさっきいったように、抜群の安定度で演奏しとるもんだから、安心して聴けるってもんだ。
ところで、それじゃあディアスのおっちゃんの、もう一つのアランフェスはってえと、これがちょっとはっきりしねえところがあるけども、うわさでは、録音はおそらく1956年から1957年ころではねえべかっちゅうもんが、1976年ころになって出てきた。(左端のジャケット)しかもモノラル録音。
しかも指揮は、アタウルフォ・アルヘンタ。
そう、イエペスの第1回目のアランフェスの録音で指揮をしておった、あの有名なアルヘンタさん。(録音は1960年前後で、イエペスは20代後半から30代の前半のころ)オーケストラは同じスペイン国立管弦楽団でおます。

そもそもアランフェス協奏曲が作曲されたのが1939年。
初演が1940年で、ソリストはレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサちゅうなげえ名前のギタリストで、当時スペインではセゴヴィアと双璧をなしていた有名なお方。(若いころの演奏を、昔SPで聴いたことがあるけども、モーレツなテクニシャン。しかもセゴヴィアのような甘く巨匠風な演奏でなくって、切れ味するどいシャープな演奏といったスタイルで、おいちゃんは大好き)
その時の指揮者は、アラームバリとある。

デ・ラ・マーサが、今日に残るアルヘンタとアランフェスを録音したのが、1954年(デ・ラ・マーサ58歳)だから、アリリオ・ディアスがアルヘンタと録音したのは、その2・3年後っちゅうことになる。
アリリオ・ディアスがアルヘンタとアランフェスを録音しておったというだけで、結構驚いちまうけども、演奏を聴いてみるともっと驚いちまう。
何に驚いちまうかってえと、とにかく演奏が遅い。
イエペスの演奏では2楽章が9分55秒。ほぼ10分だ。
それに引き換え、ディアスの演奏は12分30秒。なんと2分35秒もなげえ。
先ほど紹介した1968年のブルゴスさんとの録音は8分40秒だから、アルヘンタとの録音は、それよりも3分50秒もなげえっちゅうことになるやんけ。
聴いてみても、ほんとに遅い、遅い。粘る、粘る。
その遅さたるや、その長さたるや、「あしびきの ながどりの尾のしだり尾の ながながし曲を ひとりつまびかん」てなもんで、なげーったらなげーったら。
そのくせ1楽章は、テクニックが結構いい加減というか、早いパッセージなんかも、最後はちょこっとごまかして弾いとるところが多いし、3楽章になると、アルヘンタはもう少し早よーしてちょって言っとるみてゃーにテンポアップしたがっとるんだが、ギターのソロのところになると、またテンポを元に戻しちまう、ということの繰り返しをやっとる。

デ・ラ・マーサがレコード録音した時は、SPレコードに入らないと困るというので、2楽章を無理やり早く弾かされたらしくて、8分21秒という短い時間で入れておるんだども、ディアスの時は、それからたった2・3年後というのに、延々粘って12分30秒もかけて演奏しておる。
同じディアスのおっちゃんの演奏が、時代と共に大きく変化したのか、その時の気分でそうなったのかようわからんが、昔、東欧でやったコンサートの実況録音を、NHKラジオで聴いたことがあったけども、その時の演奏は、パガニーニの大ソナタを無謀なほど、恐らく便所の火事、いや、「やけくそ」な気持ちで弾いとるんでねえのかと思えるほどのスピードで弾いておった。(失礼)
ひょっとしたら、ディアスのおっちゃんは、結構ムラっ気やったんやろか。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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