2005年8月1日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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グラナダには二日しか滞在しなかったので工房めぐりに全ての時間を費やしました。グラナダに来れば誰しもあの有名なアルハンブラ宮殿を見学するものですが、私はアルハンブラ宮殿を訪問せず、工房巡りの方を優先してしまいました。しかも宿泊したホテルが「アルハンブラ宮殿ホテル」なのにですよ。30年近く前に初めてグラナダを訪問したときには宮殿を見学していたので「まあいいじゃないか、一度は見てるし、又来るチャンスはあるさ。」と自分に言い聞かせながらせっせと工房を回りました。

先日はPaco San Tiago Marinの訪問をお話しましたが、今日はその叔父であり、グラナダの巨匠、Antonio Marin Monteroのお話です。
彼の工房は「えぇっ!こんな所に工房があるの?」と言うような細く寂れた坂道の角にありました。泊まったホテルの左側の坂道を右側にグラナダの街を見下ろしながら下っていくと、途中Centro Manuel de Falla、ファリャ・センターがあり、もう少し下ったところの本当に寂しい角にあったんです。しかもとても小さい工房なんです。ノックして入ると甥のホセ・マリン・プラスエロが一緒に仕事をしていました。

アントニオ・マリンはもう白髪で随分と年配の印象を受けました。実際70を越していますが、ひと頃体を壊して急に老け込んだとの事です。しかし、とてもやさしい人で、突然の訪問者を快く受け入れてくれて笑顔で応対してくれました。私はヤマハに31年勤めたことや、今度独立してギター専門店を開くこと等を話すると"Que bien, buena suerte!"「それはいい、頑張ってください!」と励ましてくれました。そして一緒に行っていた江崎さんを「この人は昔、Eduardo Ferrerに就いて勉強した人だよ」と紹介すると嬉しそうに「そうか、そうか」と親しみを感じた様子でした。アントニオ・マリン自身も28歳で独立するまでフェレールに就いて勉強した人ですから。

残念ながらその時は見せてもらえる完成したギターがなかったのですが、我々が工房を出ると外まで出てきて手を振ってくれるではありませんか。しかも単に儀礼的ではなくいつまでも見送ってくださるんです。それはもう感激しました。

そして翌朝もう一度工房を訪問しました。私は彼は日本に正規の輸入代理店を持っていることを知っているので、昨日は躊躇していましたが、思い切って彼に訊いてみました。「どうすればあなたのギターを作ってもらえますか?」そうしたら彼は「注文を送りなさい、そしていつ頃取りに来るか事前に言いなさい」と答えてくれました。私はとても嬉しかった。僅かな時間の会話で信頼してくれたんだ、と思えたからです。しかし、独立開業する初っ端からルールを破りたくないと思い、今はまだ彼に注文を送っていませんが・・・

しかし、彼のギターは大好きで、どうしても欲しい。日本に帰ってからいろんなところに訊いて回りました。でも手に入れることは出来ませんでした。そして今回やっと手に入れました。念願のアントニオ・マリンです。少々高かったですが、購入しました。素晴らしい楽器です。弾いていて楽しい楽器です。今週写真を撮って新着情報で詳しくお知らせしますね。それまではこのブログを読んだ人だけが知っているアントニオ・マリンです。


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