前回の当番は1件、夜中は無し。
普段患者室に乗っている上司が休みを取っており、この日は救助隊員から一人借りてきてのイレギュラーメンバーでの1当直。
いつもと違う時に限って、何か変わったことが起こったりするものなんですが、大きなことは起こりませんでした。
さて本日のお話は、タイトルにもあります『救急救命士の処置拡大に伴う実証研究』について。
処置拡大と言うことで新しくできる(かも)処置が加わるのですが、まず、現時点で救急救命士は何を行うことができるのか(特定行為と呼ぶ)を解説します。
・器具を使った気道確保
気管挿管チューブやラリンゲアルチューブなどを用いて、より確実な換気をするために気道を確保する。なお、挿管チューブを使った気道確保に限っては、認定を受けた救急救命士のみが可能です。
・静脈路確保のための輸液(点滴)
乳酸リンゲル液と言う物を使い、静脈路を確保するために輸液を行う。静脈路確保ができたら、アドレナリンと言う薬剤を使用しての処置が可能ですが、薬剤投与に限っては認定を受けた救急救命士のみが可能です。
これらの処置は、傷病者がCPA(心肺停止状態)であり、かつ医師の具体的な指示がないと行うことは不可能。
つまりは、CPAだからと言って勝手にやってはならないと言うことになります。CPA状態を確認し、指導医の指示があって初めてできる処置と言うことになります。
昔は除細動(電気ショック)も救急救命士の特定行為に含まれていました。
現場で心電図を取って、除細動の適応波形を確認して指示を受けて、それから除細動…って感じだったのですが、それだと時期を逸することもあったとのことで、包括的な指示に変わり、やがては一般の人でもできるようになりました。それだけAEDも街のあちこちで見かけるようになりました。
・エピペンの使用
ある一定の条件の下、傷病者自身が持っているエピペンを代わりに使用することが可能。CPA状態じゃなくともできる処置であるが、やはり医師の指示が必要になります。
以上が、救急救命士が現在行える処置。これらに加えて、
・低血糖が疑われる傷病者に対し血糖値測定を行い、低血糖ならばブドウ糖を投与。
・重症喘息の傷病者に、吸入薬を使用する。
・ショック状態における、心肺停止前の輸液
この3つが、新たに救急救命士の処置として加わるかもしれません。
ここで『加わるかも』と言ったのは、まだ正式に法で決められたものではないと言うこと。実証研究に伴って、一部改正はしていますが。
日本全国の限られた地域で、これらの処置に関する研修を受けた救急救命士に限って、限られた期間のみ行います。
この3項目の処置の妥当性を検証するのが大きな目的となります。
『非介入』と『介入』の時期があり、非介入では実際に処置は行うことはできませんが、3項目のどれどれに該当して、バイタルサインはどうこうで…などの記録は残しておく。
介入の時期になったら、該当する事案に対して実際に処置を行うことになります。この処置についても、救急隊が勝手に判断して処置を行うことはできず、指導医の指示の下に行う。
そしてあくまでも実証研究と言うことですので、家族等に説明と処置に関しての同意(インフォームド・コンセント、IC)を得て、書類に署名をもらうことが必要になります。
同意が得られれば処置を行ってからの搬送となりますが、同意が得られずの場合は処置は行わず、できる応急処置を行い迅速な搬送をするものです。
CPAになる前に点滴を行うことにより、助けられる命もあるだろうし。意識障害の原因がはっきりすれば、それ相応の処置&病院選定もできるだろうし。
喘息発作も抑えることができるなら、呼吸苦からCPAになるって言う最悪なパターンにもならないだろうし。これだけ考えればメリットの方が大きいとは思うけれど、有害事象もやっぱり起こりうるだろうし、問題点もこれから出てくることでしょう。
実証研究でデータを集めて、どのように変わって行くのか。データが揃って、それを基に国で検討して。
正式に行うってなった場合、どのような教育体制を取るんだろうか。問題は山積みだし、まだまだ時間はかかりそうです。
最近公私ともに忙しく、勉強不足な面もあるために少々説明不足な点があるかもしれません。全然ブログも書けてないですし。
今日はとりあえず、最近の救急現場を取り巻く環境がこう変わりつつあるんだよって言うご紹介でした。
朝晩すっかり冷え込むようになりましたが、日中は多少暑く感じたりと温度差の激しい日々。
風邪などひかぬ様お気をつけ下さい!
普段患者室に乗っている上司が休みを取っており、この日は救助隊員から一人借りてきてのイレギュラーメンバーでの1当直。
いつもと違う時に限って、何か変わったことが起こったりするものなんですが、大きなことは起こりませんでした。
さて本日のお話は、タイトルにもあります『救急救命士の処置拡大に伴う実証研究』について。
処置拡大と言うことで新しくできる(かも)処置が加わるのですが、まず、現時点で救急救命士は何を行うことができるのか(特定行為と呼ぶ)を解説します。
・器具を使った気道確保
気管挿管チューブやラリンゲアルチューブなどを用いて、より確実な換気をするために気道を確保する。なお、挿管チューブを使った気道確保に限っては、認定を受けた救急救命士のみが可能です。
・静脈路確保のための輸液(点滴)
乳酸リンゲル液と言う物を使い、静脈路を確保するために輸液を行う。静脈路確保ができたら、アドレナリンと言う薬剤を使用しての処置が可能ですが、薬剤投与に限っては認定を受けた救急救命士のみが可能です。
これらの処置は、傷病者がCPA(心肺停止状態)であり、かつ医師の具体的な指示がないと行うことは不可能。
つまりは、CPAだからと言って勝手にやってはならないと言うことになります。CPA状態を確認し、指導医の指示があって初めてできる処置と言うことになります。
昔は除細動(電気ショック)も救急救命士の特定行為に含まれていました。
現場で心電図を取って、除細動の適応波形を確認して指示を受けて、それから除細動…って感じだったのですが、それだと時期を逸することもあったとのことで、包括的な指示に変わり、やがては一般の人でもできるようになりました。それだけAEDも街のあちこちで見かけるようになりました。
・エピペンの使用
ある一定の条件の下、傷病者自身が持っているエピペンを代わりに使用することが可能。CPA状態じゃなくともできる処置であるが、やはり医師の指示が必要になります。
以上が、救急救命士が現在行える処置。これらに加えて、
・低血糖が疑われる傷病者に対し血糖値測定を行い、低血糖ならばブドウ糖を投与。
・重症喘息の傷病者に、吸入薬を使用する。
・ショック状態における、心肺停止前の輸液
この3つが、新たに救急救命士の処置として加わるかもしれません。
ここで『加わるかも』と言ったのは、まだ正式に法で決められたものではないと言うこと。実証研究に伴って、一部改正はしていますが。
日本全国の限られた地域で、これらの処置に関する研修を受けた救急救命士に限って、限られた期間のみ行います。
この3項目の処置の妥当性を検証するのが大きな目的となります。
『非介入』と『介入』の時期があり、非介入では実際に処置は行うことはできませんが、3項目のどれどれに該当して、バイタルサインはどうこうで…などの記録は残しておく。
介入の時期になったら、該当する事案に対して実際に処置を行うことになります。この処置についても、救急隊が勝手に判断して処置を行うことはできず、指導医の指示の下に行う。
そしてあくまでも実証研究と言うことですので、家族等に説明と処置に関しての同意(インフォームド・コンセント、IC)を得て、書類に署名をもらうことが必要になります。
同意が得られれば処置を行ってからの搬送となりますが、同意が得られずの場合は処置は行わず、できる応急処置を行い迅速な搬送をするものです。
CPAになる前に点滴を行うことにより、助けられる命もあるだろうし。意識障害の原因がはっきりすれば、それ相応の処置&病院選定もできるだろうし。
喘息発作も抑えることができるなら、呼吸苦からCPAになるって言う最悪なパターンにもならないだろうし。これだけ考えればメリットの方が大きいとは思うけれど、有害事象もやっぱり起こりうるだろうし、問題点もこれから出てくることでしょう。
実証研究でデータを集めて、どのように変わって行くのか。データが揃って、それを基に国で検討して。
正式に行うってなった場合、どのような教育体制を取るんだろうか。問題は山積みだし、まだまだ時間はかかりそうです。
最近公私ともに忙しく、勉強不足な面もあるために少々説明不足な点があるかもしれません。全然ブログも書けてないですし。
今日はとりあえず、最近の救急現場を取り巻く環境がこう変わりつつあるんだよって言うご紹介でした。
朝晩すっかり冷え込むようになりましたが、日中は多少暑く感じたりと温度差の激しい日々。
風邪などひかぬ様お気をつけ下さい!
個人的に一番時間取りそうなのは同意書なのかなって気がします。先日その訓練をやったのですが、一から説明して同意書を書いてもらってって言う手間がかかるし、人も取られる。その同意書も、細かくチェックしてやらないと後々問題になりそうで…。
ショックの場合で、かつ病院搬送時間がそうかからなそうな場合は心停止前の輸液をやらずして、搬送優先で良いのかなって思います。ドクターヘリ、ドクターカーも使えるようならば、そちらを考慮しても…。
できる処置が増えるのは良いことだと思いますが、早い搬送をするのも救急車の存在意義ですので、現場であれもこれもとやるよりは、受け入れ困難の生じない体勢を確保できるようになって欲しいなと言う考えもあります。
やっぱり救急現場で一番困るのは、受入先が見つからないことなので…。
急を要するような処置はやっぱり包括的が良いのかなと。その分、教育体制も事後検証も万全の態勢を取らないといけませんよね。
ちなみに、少なくとも私の勤務する地域では、患者が救急車で搬送されることに同意した時点で、パラメディックが必要なケアをすることに、同時に同意したことになります。同意書は必要ありません。
もちろん患者は、薬剤の投与などの説明を受けた後、それを拒否することはできます。
こちらでは、搬送されて来た患者を病院が拒否することはできません。ごく稀に、病院内の非常事態で患者を受け入れられないという連絡がくることはありますが、その非常事態が解除されしだい、その病院は患者の受け入れを再開します。受入先が見つからないというのは、本当に困りますね。受入先が見つからないということがあるならば、余計に現場での処置が拡大される必要があるのではないかと思います。
諸外国に比べれば、日本の救急隊ができることって限られるし、遅れているのが実情なのだと思います。
個人的に救急隊員向けの実務誌を定期購読しておりまして、そこに紹介されていたパラメディックのこと、アメリカの救急事情等を読み、正直なところ羨ましい…なんて思ったところも。
ブドウ糖、喘息発作時の吸入薬、心停止前の輸液の3項目の実証研究も早いところでは先月から始まったばかり。今後救命士の特定行為に入ってくるにしても、まだまだ先のことになるでしょう。
ブドウ糖、輸液(乳酸リンゲル液)、アドレナリンは救急隊で所時していますが、喘息の吸入薬とエピペンは患者が持っている物を使用します。救急隊は所時しておりません。
病院が見つからない理由は、医療機関の受入体制だけの問題ではなくて、患者側のモラルによる部分の方が大きいのかなと思います。俗に言うブラックリスト、常連、アル中、精神症状のみでの救急要請…。背景は多岐に渡ります。
そして、休日夜間の時間帯にそれらは発生する。今も『常連さん』に頭を悩ませています。
こちらにも沢山います、常連さん。特に私の所属する署はあまり裕福な地域にないため、治安もあまりよくないし、ホームレスも沢山いるので、市内の他の署に比べて常連さんの数も多いです。ですが、それでも病院は搬送されてきた患者を拒否することはできません。裁判大国だからでしょうね。実際、搬送や治療に対する同意書よりも、搬送を拒否する患者に対する書類の方が量も多いし、大切だったりします。
大抵どこの署にも1人ぐらいはいる常連さん。でも、うちの署で抱えているのは手に負えなくなるぐらい。消防機関だけの問題ではなく、行政も巻き込んでの話しになってしまいましたが、解決まではまだかかりそうです。
そのような、患者は、やっぱり日本だけの問題じゃないんですね…。
愚痴ですが、一生懸命やってるのがもうちょっと報われてくれると…なんて。最近はそんなことをちょっと思います。
こちらでは、ホームレスで税金など払っていない人から、「市民の税金から給料もらっているんだから、文句を言わずに病院に連れていけ」とか言われます。そして救急車はあくまでも生死に関わる時のものだと説明すると、手を怪我したはずの患者が、胸が痛むと言ってきます。我々が搬送拒否できない病状を知っているんですね。
報われないと思うこともしばしばですが、心肺停止の出動で蘇生できた時の手伝いができた時のことなどを思い出し、心を奮い立たせる毎日です。
お互いに頑張りましょう。
検査したって入院は要しないぐらいだし、経過観察で1日2日程度入院になったって、自分で勝手に抜けだしてくる。で、また救急要請…。やってられませんなって正直思いますね。
>ホームレスで税金など払っていない人から、「市民の税金から給料もらっているんだから、文句を言わずに病院に連れていけ」とか言われます。
同感です。生活保護を受けていて、医療費かからないからって言うのも。そんなの見てると本当に一生懸命働いてるのがバカらしくなってくるんですよね。
義務も果たさず権利ばかり主張する人が多くて嫌になることもあるけど、これぞ救急…で助かった時もあるし、後日消防署にお礼に来られるってこともあります。そんな時はやっぱり良かったなって思ったり。
同じように、そんな達成感を思い出して頑張ろうと日々を過ごしています。お互いに、身体を壊さずに頑張って行きましょう!
またお越しくださいね