消防士 兼 旅人の日記

消防署での出来事、ダラダラした日常生活を綴ります。

市民だけの話じゃない Part2

2008-06-29 13:01:20 | 救急隊の本音
先日、救急車の非常識・不適切利用がニュースに掲載されていました。

救急車をタクシー代わりに利用したり、順番待ちが嫌で救急車呼んだり。あるいは、○時○分に来て下さいなんて予約しようとすることもありました。


前回の記事や過去のコメントで、不適切利用は何も一般市民に限ったことじゃないと言う事を少しばかりお話しました。今回は病院から病院間への搬送で実際に私が遭遇した事例です。

尚、これはあくまでも救急隊の視点から見た意見、率直な気持ちです。病院関係者からは意見・反論等あるかもしれませんが、ちょっと書かせて頂きます。


朝の引継ぎ前に、消防署の外線電話がかかってきました。

電話は消防署近くにある病院(救急告示)からでした。内容は

『○時に救急車一台お願いします』と。


その時間に在署しているとも限りませんし、必要になったらその時に119番するなりして下さいと言うことで断りました。

結局その前に出場してしまい、違う隊が転院搬送のため出場した様ではありましたが。


『救急車を予約する』この間掲載されたニュースでこんな使い方をする人がいると報じられました。

ですが一般市民だけに限らず病院もこんな使い方をしている。

処置困難や転院先で専門の治療を必要とする、医師または看護師の同乗があるならばまだ分かります。ですが、本人または家族のみの同乗。そして処置も何も無し。緊急性があるとはちょっと考えにくいのもあるのも事実。


それならば民間救急車でも良いんじゃないの?


同乗してしまうと医療スタッフが回せなくなってしまうからと言う理由があるのかもしれません。

だけど、緊急性も処置も何も無い。ただの搬送手段として使われるケースも多くあります。医師看護師の同乗がある方が少ないぐらいです。

それならば民間救急車でも良いはずだと考えるのです。


消防署の救急車は無料で、民間救急車は有料。

救急患者を受けてやってるんだから、使ってやれって考え方なの?

医師や看護師の態度を見て、残念ながらそう思うことがあります。

こんなことで救急車を使うんじゃないって患者さんに怒ることはあるのに、我々だって病院に対して、こんなことで使わないで欲しいと思うことはあります。民間救急車を使うことは考えないの?

病院のお抱えタクシーじゃないんですよ。


紹介した事案のように、予約なんて言語道断。

急な事故やケガ、病気のため、一刻も早く病院へ行く必要のある人を運ぶのが私達救急隊の仕事。

その仕事をちゃんとさせて欲しい。タクシー代わりなどで使われるようなことが無く、本当に救急車を必要とする人の下へ早く到着できるように。


何度も何度も繰り返しますが、救急車の適正利用にご理解、ご協力をお願い致します。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
けさのこと (けい)
2008-06-29 20:19:02
早朝、突然家人が倒れました。
救急要請が必要な事態かそうじゃないか、すごく悩みました。脳こうそくを疑ったからです。
休日でもやっている電話相談に聞いて、1箇所からは「すぐ119番した方がいい」とも言われました。
結局さんざん迷った末、もう一日様子を見ることにしました。不思議なもので、そうやって腹を決めたら、本人の様子もだんだん落ち着いてきました。

後から振り返れば、あの時は119番しないで正解だったのです。
でも、その判断の境界はすごく微妙でした。
「あの瞬間、あそこでもう少し違う展開になっていたら、呼んでいたかもしれない」と思います。

ここに書くかどうか、少し迷ったのですが、わかったつもりになっていても、いざとなると難しいものだなあという苦い教訓が残りました。

明日、タクシーで近くの病院を受診します。
落ち着いたら、改めて状況を整理してまた書き足すかもしれません。
うちの経験を書くことで、本当は救急車が必要な方まで要請をためらうようなことになってはいけないですし、そこはケース・バイ・ケースで最善の判断をお願いしたいと思います。けれど、とっさの判断は後知恵とは違う、このことを思い知らされたような気がします。

読んでくださってありがとうございました。
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けいさんへ (ムサシ)
2008-06-29 21:51:00
電話相談等で119番通報しなさいと言われたら、遠慮なく呼んで頂いて構わないですよ。

突然の手足のしびれ、麻痺、失語、喋り方がいつもと違う、強烈な嘔気や頭痛が見られれば脳梗塞の疑いがあります。


突然倒れた、その時は意識があるにしても、それは救急車を呼んだって構わないのです。全救急出場の半数以上は軽症と言う統計が出ていますが、その中には一時的に意識レベルが悪かったが、だんだん回復してきて結果軽症だったと言うのも含まれています。
(餅を喉に詰まらせたが、取れたために結果軽症と言うケースなど)



今問題にしているのは、わざわざ救急車じゃなくても…と言うこと。タクシーにしたり、順番を待つのが嫌だ、軽微なケガや発症後数時間、数日してから救急要請をすること。こう言ったこと以外なら呼んだって構いません。


お大事になさって下さい。
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Unknown (丸坊主)
2008-06-29 21:59:42
救急車の適正利用
簡単な様で難しい問題ですね。
私が住む市には4署6隊の救急隊があるのですが、「病院間の転院搬送時に民間救急(病院救急車)を利用できないのか?」と消防本部に質問を投げかけました。
すると、「転院搬送は消防の仕事に定められている。転院搬送などで救急隊が全て出場中で他の救急要請が来た事は今まで一度も無い。」と回答が。
結果的に今までは「偶然なかった」でしかないと思うのですが。
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丸坊主さんへ (ムサシ)
2008-06-30 07:10:25
おはようございます。

転院搬送は確かに救急業務としてはあるのです。転院搬送は、いったん医療機関に収容された患者を処置困難などで、緊急に他の医療機関に運ぶ必要があるときに転院搬送の要件を満たします。

ですが、今は緊急性も無く同乗も無し。処置も無し。ただの搬送手段と化しています。


神奈川県の横浜市では、こういった救急車の利用はお断りしているとの事。ベッド満床、かかりつけ医の転院、家族希望は受け付けないとのことでした。

そういった緊急を要しない転院搬送に対しては、民間救急や病院の救急車を使ってくださいと指導しているようです。


丸坊主さんのおっしゃるとおり、『偶然無かった』と思うのです。私の市では、時々救急事故多発状態で、消防隊などが予備の救急車を運用することもあります。(救命士不在の救急隊)


不適切利用が無くならない限り、救命率の向上は無いでしょうね。
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わかってもらうには (ネコむし)
2008-06-30 09:44:08
介護相談をしていたら、一人で通院するのは難しい高齢者の急な体調悪化、入院先からの転院等に関わります。
主治医から「熱あるの?じゃあ救急車で来て」と指示され、救急受診結果、点滴1本で帰る事もしばしば。「救急車呼ぶ程じゃないんだけどな…」思っても、医師の指示には逆らえないし。
転院でも同じく、医師の一声で搬送手段が決まります。
民家救急を紹介すると、高額料金がかかるので、年金暮しの方等には負担が重いからと「だからタダの方をと指示してるんじゃないか」と言われたりもするんです。
経済的支援、独居者への支援など広い範囲で取り組む必要があります。
一般市民への広報活動の他、例えば医師会への普及啓発も必要かもしれませんね。
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ネコむしさんへ (ムサシ)
2008-07-01 15:37:53
救急車の出場件数を減らすには、一般市民だけでなく記事にも挙げた警察官や医師の協力も不可欠だと思います。

救急に非協力的、または縁の無い医師はこの問題に全く関心が無く、非常識な使い方をしてくれます。


患者側が民間救急は高いからってダダをこねることも考えられますが、そこをあえて医師から説得してもらいたいと思うのです。

我々が言いたいって言うのが本音ですが…今のこの世の中、そうはさせてくれないです。


国をあげて、この問題に取り組む。ただ非常識な使い方の紹介だけでなく、具体的な策を考えないといけませんね。
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民間救急 (けい)
2008-07-01 16:48:51
ごていねいなお返事ありがとうございました。
おかげさまで、通常の診療時間中に無事初診を受けることができ、これから精密検査です。脳こうそくじゃありませんでしたが、まだまだ気は抜けません…

今回119番しなかったのは、遠慮とかやせがまんとかではなく、救急情報センターから教えられた当番病院に本人が行きたくないなどと言い出したためです。「ん?待って、生死の境でそういうワガママを言える余裕はないでしょう」と思ったら、やっぱり生死の境じゃなかったわけです(苦笑)。「明日まで待って、救k…」とか口走ったりもしていたので、そこは毅然とダメ出ししておきました(苦笑2)。1日待って、以前にかかっていた病院で診てもらうことができたので、本人も安心したようです。

さて、上でご紹介のありました横浜市に住んでいますが、民間救急サービスの周知については、まだ全然進んでいないという印象です。(適正利用のPRは、ごみ収集車を使って毎日のように行われていますが。)地元消防本部(安全管理局)のサイトには、認定搬送業者の情報もありますが、利用者が自分から「民間救急」で検索でもしない限り、なかなか目に留まることもないのが現状。なにせ値段が値段だけに、大きな声では言いにくいのかもしれませんね。だけど、救急車だって間接的とはいえもっとずっと高い費用がかかってるわけで。

こちらでは10月に、通報時の重症度判定と救急車以外のサービスへの案内が本格的に始まるので、市民に認知されるようになるのは、それ以後でしょうか。
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けいさんへ (ムサシ)
2008-07-02 21:36:06
お返事が遅くなりました。

今まで無料で使っていたものが、民間救急の利用によって有料となる。確かに使うにはためらいも出てくるでしょうね。

緊急性の無い転院搬送を民間救急に委託するだけでも出場件数は減ってきます。東京、横浜ではトリアージや民間救急を大々的にPRするように力を入れてきていますが、消防は各市町村単位。今は大きな都市で試験的に行っている所ですが、これがもっと全国的に広がってくると少し変わってくるのかなって思います。


必要な時には遠慮なく呼んでもらって構わないものですが、まずは救急車の存在意義をまず分かってもらわないといけませんね。
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周知徹底 (おばちゃん)
2008-07-03 00:58:30
どうもです
昨秋別居してる義父が脳出血で救急車のお世話になりました。
早朝義母から電話。義父がろれつがまわらず体が動かない。 救急車呼んで掛かり付けの脳外科に運んでもらって!
こちらから病院へ電話して名前、容態、救急車で行きますを告げたところで保留音。待ち切れなくて切りました。管轄の消防署へ搬送の確認、やはり義母は、事の重大さを認識仕切れてないようでまだ通報されてませんでした。
管轄外からの電話なので119ではありませんが、救急要請として出動して頂きました。
お蔭様で春から自宅で生活してます。左側にマヒはありますが、杖を使い自力歩行しています。

私の居住地では福祉車両のタクシーで家族等が付き添う、の転院・通院がそこそこかな?大型で無ければ、一般のタクシーと料金は代わりませんから。社会福祉協議会が福祉車両の無料貸出もしてくれてます。
こんな情報が広まってれば良いんですがねぇ。
「救急車を使う=税金を使う」って内容を話したら「エッ!」って驚かれた事がありました(ノ_・。)
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おばちゃんさんへ (ムサシ)
2008-07-03 07:35:19
頭が痛い、胸が苦しいなどの場合、重症化する可能性も結構ありますのですぐに119番して頂きたいところではあります。

でもそんな人に限って、やせがまんをする人が多く、周りの家族が119。拒否するんですが、説得して運んでみてやはり重症だと言う事もありました。


高齢夫婦だけのお宅へ行くと、たまにおばちゃんさんのおっしゃった様なことに遭遇することもあります。今起こってる事の重大さが認識できていなく、もうちょっと遅かったらどうなっていたんだろう?って思うことも。


救急車の適正利用を!と訴えて行くには、今の現状とそれに代わる搬送手段をもっと周知しないといけませんね。それが課題です。

まだまだ時間がかかりそうではありますが…
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