日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

日本企業に忍び寄る現地暴走の懸念

2010-01-12 | 日本・日系企業
 日経ビジネスの上場さんの記事より。

・日本企業中国法人の昨年の業績は、金融危機の影響で年初には前年比30-50%減と予測していたが、多くの企業がほぼ前年並みは達成した。

・昨年の金融危機の影響で、多くの日本企業が経費削減に取り込み、駐在員の強制送還、1元単位での経費削減を徹底して行い、ずいぶんと経費構造もスリムになった。一方、本社サイドでは中国の現地の事情が、よく分からなくなってきた。

・理由としては間接部門を中心にした駐在員の削減と、本社側の海外出張旅費の削減。経理、人事、総務、法務といった間接部門の駐在員が続々と帰国した。ガバナンスやコンプライアンスの面で本社と密接な連携が要求される部門である反面、現地の責任者にとってはコスト部門であり、本社から派遣されたお目付け役とも言える。

・中国の現地から上がってくる業務報告は、まるで大本営発表みたいなもので素晴らしい業績と夢ばかりになってい、と某中国担当部長は言う。逆に、リスクや問題点が見えなくなってしまっている。

・多くの日系企業を顧客に抱える北京の法律事務所によれば、昨年から日系企業から持ち込まれる訴訟や示談交渉などの事案が急減した。日系企業の経費削減と新規の投資案件がピークアウトしたという事も背景にはあるが、懸念されるのは、問題が起きも、売上や利益に大きな影響を与えない限り現地限りということにして、うやむやにしているのではないか、ということだ。

・多くの日系企業の場合、現地での訴訟や、金銭の支払いを伴う示談は、本社の了解なしには行なえない。従来は法務担当が現地にいて、現地の弁護士や本社の法務部門と連繋をとりながら問題解決にあたっていたが、間接部門の縮小に伴い、その機能を喪失してしまった場合が目立つという。

・ある日系企業の北京の総経理は、
 日本本社による現地への介入は極力排除したい。資料作成を求めるくせに意思決定は遅い。本社のスタッフは中国の事情をよく分かっておらず、現地事情を知らない人が現場を引っかき回されるのは正直いってかなわない。厳しい競争環境の中での業績向上に必死で、それ以外のところで労力は使いたくない。コンプラは本社の専門家の出張教育と、社内規定の遵守、定期的内部監査で十分という。

・リスクマネジメントの専門コンサルティング会社である米国のクロール社によれば、中国において、社内不正を経験したことのある多国籍企業は90%を越えるという。

・現地の責任者や経営幹部の中には、中国駐在10年を越える“猛者”も少なくないが、彼らの多くは生産ないし販売のプロではあっても、必ずしも企業経営のプロではない。LC(貿易決済に使う信用状)の仕組みすら理解できない現地経営者も少なくない。

・厳しい経営環境の中、中国ビジネスへの期待は高まる一方だ。しかし、その反面、経費削減が先行した結果、本社と現地との情報ギャップは大きくなるばかりのようにも思える。日本企業が中国ビジネスを業績のV字回復の起爆剤として期待するのであれば、中途半端な格好での現地任せをせず、しっかりと費用もかけ、情報収集から問題解決を行い得る体制を現地と本社が問題意識を共有した上で進めるべき時に来ていると思う。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100107/212047/

 ふーん。こういう事情になっていたんですね。

 大本営発表の様な報告が届く会社って、現地法人の経営者は日本人かな?それとも中国人かな?後者の方が可能性高いと思うんですけど。

 間接部門の駐在員の問題は難しい所がありますね。日本企業の間接部門の多くが唯の事務やになっていて、経営意思決定支援の機能が欠けている様に思います。間接部門がコンプライアンスやガバナンス重視は重要な機能なんですが、それって間接部門の機能の一部でしかないんです。でも、その一部の機能が全うできれば十分で、それだけに満足しているのが多くの日本企業(大企業ですら)の実態。かつそういう考えの人が役職だけCFOとか、管理部門担当役員になっている(例外はもちろんたくさん存じ上げていますが一般論として)。また、オーナー企業では逆に事務屋さんであることを重宝する(うるさくないからでしょうね)傾向が見える。

 米国の概念ではCFOというのは、コンプラやガバナンスにも責任を負うが、もっと経営者に近いんですよね。CEOが病気や事故にあったらその代行者になる事も求められる。まぁ、それが全て正しいかどうか、エンロン事件などを見ると考えさせられる物もありますけど、事務屋は一般に経営の視点がかけていますからね。帳簿付けできない人がCFOやっている会社も多いですよ。帳簿を読めない人は皆無でしょうが。日本は逆ですよね、経理に数字の中身(その数字が結果として出た事業活動とその課題)を聞いても答えられる人って経理部門の管理職でも10%もいないですね。唯の数字になっているんです。本当は経理の数字はお金で、全ての事業活動の結果がでてきているから、数字分析すると様々な問題点が解るのに。

 何度もブログに書いていますけど、現地法人の経営のお目付け役は、必ず日本人を派遣する必要があります。逆に経営者は中国人のほうが良い事が多い、特に販売系なら。マーケティングならともかく、日本国内営業出身者が中国のトップになっても何ができるだろ?中国人スタッフ無しでは多分全く機能しないの事例の方が多いでしょう。もちろん人間力が有る人は、どこでも活躍できますが。駐在経験10年の猛者??ふ。。。これだけ変化の早い社会で唯長い経験がどれだけ役に立つか。

 まぁ、本社側のバランスと社内での国際人材教育の問題ですね。

 間接部門の駐在員の大幅削減自体は、企業規模にもよりますがさほど重大な問題ではないけど、やり方と残すスタッフの能力、そして本社の問題でしょう。現地法人総経理の本社に対する見方はその通りですね。私自身が本社側で管理していた時は、現地事情がわからず建前優位でした。現地から見れば現場を知らない煩いだけの存在だったでしょう。現地の中国人社長も全てを話さないので状況がはっきり分からなかったですしね。正直反省しています。まぁ、訴訟や示談が本社マターというのは、これは当然の事ですね。この辺現地任せにしていたら、その会社が逆に終わっているでしょう。金額と程度の問題はありますけど。

 ガバナンスやコンプラ関係は、仕組みを作る段階では長期出張者も含めて、日本人が多く必要にはなりますね。でも、それも本社側は現地事情を知るスタッフの育成機関として考えるべきですね。できれば、後は一人か二人残して定期的なモニタリングをしていけば良い。3年に1回位の仕組みの変更は普通あるでしょうから、その時また沢山行けば良い。
コメント (3)
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上海発!新・中国的流儀70 必読書です

2010-01-12 | 中国関連書籍書評
上海発! 新・中国的流儀70 (講談社プラスアルファ文庫)
須藤 みか
講談社

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 昨年末に、著者の須藤みかさんとご面談の機会を賜った時にいただいた2冊の著書の内の1冊です。時間が無くてようやく読了したんですけど、正直驚きでした。

 上海に住んでいれば結構の人が知っているけど、中国ビジネスに携わっている日本人が何故か知らない上海事情。
・学歴詐称や海賊版天国の想像以上の蔓延
・水や食、住まいに関する安全性の問題
・テレビショッピングのいい加減さ
・メールを含むネット事情
・突然キャンセルされる飛行機や、暴走族運転手たち
・ごね得を当然に考える中国人たち
・バブリーな宴会
・日本に比べれば遥かに働く女性天国
 当たりの紹介から入って、中国ビジネスに勝ち抜くヒントとして

・日本人は勤勉・責任感があり、チームワークができる。調整能力も高く、相手の意を汲もうとしたり間を読む能力が高い。一方、中国人は自己PR能力が高い、自己主張が強く、声が大きく、社交能力が高い。これらの差をあげつらって非難するのではなく、お互いに標準のスペックが異なる物と理解して受け入れるべきだ

・日本企業は総代理店契約等を含む中国企業との事業にあたり、相手の会社の実態を調べないなどの基本的な調査をしない企業もあリ唖然とさせられる。

・中国系企業に入社した日本人が、経理関係を扱うのは社長かその奥さんだったが、社内で信頼を得るために中国人社長が日本人に経理を担当させた事があった。

・日本人総経理は自分の決済権限内の事ですら、交渉の場で意思決定を行わず、部下は恥ずかしい思いをする。

・日本人のみで常に食事をして、現地スタッフとのコミュニケーションがかけている

・優秀でやる気のある中国人社員は欧米系企業への転職を目指す。一方、努力も競争も面倒くさい人にとって日系企業は非常にいごごちが良く、中国系企業で勤務経験のある現地採用日本人が日系企業に入った時に、あまりの勤務態度の悪さにあきれ返った。

・日本人駐在員たちの待遇格差、駐在員妻たちの苦労。そして住宅や夜の生活を含む駐在員たちの行動。

 結構自分のブログで書いている事もあれば、へーそうなんだという新しい発見もありました。須藤さんとお会いした時に、「ご本人はビジネスは良く分からないけど」というお話だったのですが、この本読んで認識を改めさせられました。

 ご本人が中国系企業勤務をされていますし、様々な日本人だけでなく、上海のOLたちに直接インタビューされて書かれたのでしょうね。文章はさらっとして毒の無い表現なんですけど、上海で働く日本人に対して、エールの声もある反面、だらしない人たちへの毒針も密かにかくしもっていて、人によってはチクチクするんじゃないでしょうかね?

 読みやすいのでさらって読み飛ばしちゃうでしょうけど、中国関連の事業をする人は、まずは中国に来る前に一度、来て数ヶ月してある程度見えてからもう一度読み返すだけの価値はあるんじゃないでしょうか?駐在員に関しては、企業側も考えるべきでしょうね。銀行と商社の待遇のよさは有名ですけど、銀行なんて今でも給与を倍にしてるんですか。日本企業向けのサービスしかできていないのに。商社も、投資案件の90%が失敗と言われているのに。。。

幾つか個人的体験を。
・日本から中国へのB2CのECサービスを、2007年頃から幾つかの会社が運営しています。でもこの本のネット事情を見たらどう思うだろう?私が一時帰国する前の2006年12月から2007年初頭は、台湾沖地震の影響で国際回線が一つ切れてしまい、実際メールもまともに届かない期間が続きましたし、当然サイトなんて見れません。日本の上海の商工会議所はサロンで何の役にも立たないのですが、アメリカ商工会議所は、2006年夏の段階で上海のネット国際回線以上の悪さについて上海市政府に改善を求めていました(結果はどうだろう。上海は台湾人や香港人を含む外国人が多く、トラフィック量が圧倒的に多い。おまけに上海電信の努力不足の影響で、国際回線に関しては中国国内大都市の中でも最も環境が悪いようです)

 こんな環境を考えたら、日本にサーバーおいて中国向けにプロモーションや物販をするなんて、全くのナンセンスだって事は直ぐ分かるはずなんです。でも結構な投資をして、VCもお金を出している。どこに事業性のロジックを見出したのか、こちらが知りたいです。

・日本人駐在員がローカルスタッフと食事をしないのは別に中国に限りません。アメリカのロサンゼルスにある日本企業でも、駐在員、日本人現地採用、アメリカ人ローカルの3つのグループに分かれる事が一般のようでした。外人とは言葉の問題、日本人同士では所得格差の問題、が原因のようです。

 中国でも同じでしょう。ちなみに、僕が2004年から1年半在籍した日系独立系のコンサル会社も全く同じです。駐在員扱いの社員はいませんので、日本人もローカルなんですけどね。だから社員が名に考えているかなんて実は日本人は誰も何も知りませんでした。大きな日本企業なら当然でしょうね。

 私自体も、その時は今の妻と一緒に食事をしようということで、中国人スタッフと食事をするほうが多かったので色々学んだ物はあります。但し、その後転職した会社では、買収した会社のお偉いさんで赴任したのですが、その中国企業の経営陣以外とはほとんど食事をする機会が無かったですね。誘っても断られましたし、後半は日本本社側から刺される形になり権力が無いとみなされたからでしょう。だから、若い中国語の話せる子は良いとして、おじさん駐在員が簡単に中国人たちの輪の中に入れるかと言うと疑問でもあります。表面的な声は聞けるんですけどね。

 こうやって、自分の経験をあわせて振り返れば(飛行機のキャンセル等も含め)、この本に書かれていることは中国リスクとして抑えておくべき事ばかりなんですよね。さらっと面白おかしく書かれていますけど、中国で商売する人なら絶対に抑えなきゃいけないエッセンスが沢山盛り込まれている本です。

 でもねぇ。。。痛い目見ないと分からない平和ボケした日本企業のほうが数的には多いんですよね。馬鹿は殴られなければ分からない。中国人もそういうところあるんで、良く罵倒するんですけど、日本もなぁ。。結構中国人下に見る日本人、日本はもちろん未だに上海でも多いんですけど、もしかしたら日本人の方が頭悪いのかなと思うこともあります。 
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