北京政府が不動産規制を再開しましたが、80歳の何氏は不動産投資を止めようとは考えていません。彼女は最近香港のツエンワンのエレベーターの無い35年もたった50m2のマンションを13百万円で売却したそうです。元々は30年前に100万円で買った物だそうです。彼女はこの資金を元手に中国のシンセンに2つのマンションを購入するそうです。シンセンの不動産は、今年20-30%価格が上昇したのですが、昨今の中国政府の不動産価格を統制しようとする動きのもかかわらず購入するようです。
彼女に限らず多くの香港からの投資家が中国大陸の不動産市場を強気に見ており、一方で北京政府の不動産価格統制の方針や政策を認識しています。
上海では、中国国営建設エンジニアリング社が、シンジャンワンチェン地区の住宅用地を450億円で購入(平米辺り33千元=坪150万円)し、これは過去の高値記録になっている。広州でも不動産開発業者3社のコンソーシアムが3000億円で一区画を購入した。
この2つの取引は、温家宝首相が不動産価格の過熱を警告した数日後に行われており、政府の意向が不動産取引には反映されていないことを示しているようにも思われる。何故か?
アナリストによれば、不動産価格を巡って中央政府と地方政府の間で激しい綱引きがある。地方政府は不動産価格の上昇を望んでいる。また、国営企業も余剰資金を不動産投資に回しており、それが利益を向上させていると言う背景がある。
地方政府は中央の不動産価格統制をそのまま遵守する事は容易では無い。もちろん、政策の開始直後は素直に守ろうとするが、直ぐに自分たちのインフラプロジェクトやその他のプロジェクトの資金が枯渇してしまう事にきずく。中央政府から僅かな補助金が出る以外は、
地方政府は自分たちの事業資金を自ら確保する必要がある。そして、その資金調達の大きな手段が、地方政府保有不動産の売却なのだ。中央政府がなんと言おうと、それ以外の資金調達の方法が限られている。
地方政府幹部の業績評価が経済の成果で行われており、政府幹部は現職でいる間できる限り不動産を売却して資金を獲得しようとし、後任者に資産を引き継ごうとはしない。短期的業績向上には、不動産の売却が手っ取り早いからだ。地方政府の財政支援策として、税制改革等が検討されているがそれはまだまだ時間がかかる。
ロイヤルスコットランド銀行の呉不動産ファンドマネージャーによれば、地方政府の財政収入の30-50%が土地の売却による。その為に中央政府の不動産政策は地方政府にとっては財政を傷つける事になる。参考までに
杭州の財政収入は00億元だが、土地の売却で710億元も調達しており、財政収入の77%も占める。
シマオ不動産のCFOホイさんも、「地方政府の財政は不動産の売却とそれに伴う印紙税に依存している。昨年末、北京政府は不動産取得に伴う前渡金を50%にし、残金も原則1年以内にすると決めた。この政策は開発業者のキャッシュフローを厳しくするだけでなく、地方政府も収入獲得の路も阻害し、現在行っている経済開発政策に伴うプロジェクト資金の不足を招く」。「また、高額で不動産を取得した企業は国営企業が多い。彼らは不動産開発業者より遥かに懐が深い」。
昨年第一四半期に、北京の優良な土地の大半は地元の国営企業が取得した。北京都市開発集団や、北京集団開発集団、BBMG等が有力業者だが、不動産開発をしない企業も多い。中央政府の野放図な金融政策や、経済刺激策に伴い過剰流動性が発生しており、国営企業は不動産投資を行うその資金の流れ路になっている。
2009年上半期に、国営企業は中国主要都市の土地の60%以上を購入しており、不動産開発業者を大きく上回っている。中国人民銀行によれば、昨年11月までに9兆元(120兆円)の融資が大手国営企業に行われており、目的は道路、橋梁、その他の経済発展のためのインフラ建設となっている。しかしながら、大半の融資が国営企業の中国市場、及び香港市場の株式投資や不動産投資に回されているという説もある。
地方政府幹部の評価が、利益や仕事をどれだけ生み出すかにかかっているために、不動産市場の抑制には利害関係の摩擦が生じる。土地の売却が昇進の機会をもたらしているからだ。地方政府が中央の不動産価格政策に反抗したとしても非難するべき物ではない。地方政府は中央が主導する経済刺激策には速やかに協力を申し出ている。しかし、その資金は地方政府保有不動産の売却資金で賄われるのだ。
中国の不動産価格は、1998年の土地改革以降3倍以上になっている。政府は何度も価格の過熱を警告しているが、経済成長やそれに伴う所得の工場、投資の選択が他に無い事から、家を買う事が大陸中国人の最も根本の投資になっている。
http://www.scmp.com/portal/site/SCMP/menuitem.2af62ecb329d3d7733492d9253a0a0a0/?vgnextoid=96886dbab70e5210VgnVCM100000360a0a0aRCRD&ss=&s=Home
上海の不動産価格は、2004年時点でも非常に高く感じました。その後外資系企業の中国不動産への投資規制など、様々な規制の結果多少は落ち着き、2008年初頭にはシンセン等で価格お下落が生じていたのですが、一昨年の金融危機以降再び不動産意関する規制が外れて昨年はかなりの価格上昇が見られました。
上海に関しては、昨年末の中央政府の政策のおかげか、既に価格の下落が始まっています。
中国の不動産価格は、取引の最低価格も政府が指定するようなので(中古は別でしょうが)、ある程度下げ幅も政府の管理下で行われるのだろうと思います。だから、バブル崩壊に伴いどれだけ価格が落ちるかは予測しかねます。日本のように市場が決めるのであれば、順当なところが現在の半額。少なくとも30%程度は落とすべきだろうと思います。
上海では流入人口が増加しており、数年前に1700万人だった人口が昨年末には2000万人になったと言う報道を見ました。中国でもこれから都市化が益々進んでいくでしょう。戸籍制度による管理は当面残るでしょうが、豊かな都市にお金が集まる。仕事が集まる。そして人が集まる。上海の場合は今後は工場のワーカーの流入は減るでしょうが、サービス産業の下を支える人たちを中心にまだまだ人口は増えるかもしれません。
そうやって考えると、今の上海市内の過剰なマンションの需要を満たすだけの人口の供給はある。ともいえるでしょう。ただし大きな問題はその不動産の価格のはずです。上海市のこの300万人の増加人口のうち、月間世帯所得5000元以上の人たちはどれだけいるでしょう?事業を行い成功したごく一部を除けば、都市社会の底辺を支える人たち、勝手は工場の工員だったが、今では宅急便やさんの配送員、レストランや小売店舗の店員。結局の所所得の低い人が圧倒的な比率を占めています。
だから、増加人口=現在の供給過剰マンションの購入者、賃借者には単純にはなりえない。これも、格差社会と言われながら所得の比較的平準化した日本にいては見えない事実です。
唯、地方政府の財政収入に占める土地売却代金の比率がこんなに高いと言うのは知りませんでした。
本当に難しいですね、この国の政策運営は。どう考えても不動産はバブル。経済成長がしばらく続くにしても、いずれどこかでそのバブルは崩壊するしかない。中央政権の力が強いだけに、徐々にガス抜きしていくのかなと思っていました。でも、その時には不動産会社や銀行がこけるだけでなく、地方財政までこけてしまう。日本のバブル崩壊どころの騒ぎじゃないですね。
どうも中国のみの事業展開は、ナイフの上を歩いているような気がしてしまいます。アメリカ人のように、徐々に足を抜いてインドとか、他の国にも資金を回しておかないと恐ろしいですね。