上海発! 新・中国的流儀70 (講談社プラスアルファ文庫)須藤 みか講談社このアイテムの詳細を見る |
昨年末に、著者の須藤みかさんとご面談の機会を賜った時にいただいた2冊の著書の内の1冊です。時間が無くてようやく読了したんですけど、正直驚きでした。
上海に住んでいれば結構の人が知っているけど、中国ビジネスに携わっている日本人が何故か知らない上海事情。
・学歴詐称や海賊版天国の想像以上の蔓延
・水や食、住まいに関する安全性の問題
・テレビショッピングのいい加減さ
・メールを含むネット事情
・突然キャンセルされる飛行機や、暴走族運転手たち
・ごね得を当然に考える中国人たち
・バブリーな宴会
・日本に比べれば遥かに働く女性天国
当たりの紹介から入って、中国ビジネスに勝ち抜くヒントとして
・日本人は勤勉・責任感があり、チームワークができる。調整能力も高く、相手の意を汲もうとしたり間を読む能力が高い。一方、中国人は自己PR能力が高い、自己主張が強く、声が大きく、社交能力が高い。これらの差をあげつらって非難するのではなく、お互いに標準のスペックが異なる物と理解して受け入れるべきだ
・日本企業は総代理店契約等を含む中国企業との事業にあたり、相手の会社の実態を調べないなどの基本的な調査をしない企業もあリ唖然とさせられる。
・中国系企業に入社した日本人が、経理関係を扱うのは社長かその奥さんだったが、社内で信頼を得るために中国人社長が日本人に経理を担当させた事があった。
・日本人総経理は自分の決済権限内の事ですら、交渉の場で意思決定を行わず、部下は恥ずかしい思いをする。
・日本人のみで常に食事をして、現地スタッフとのコミュニケーションがかけている
・優秀でやる気のある中国人社員は欧米系企業への転職を目指す。一方、努力も競争も面倒くさい人にとって日系企業は非常にいごごちが良く、中国系企業で勤務経験のある現地採用日本人が日系企業に入った時に、あまりの勤務態度の悪さにあきれ返った。
・日本人駐在員たちの待遇格差、駐在員妻たちの苦労。そして住宅や夜の生活を含む駐在員たちの行動。
結構自分のブログで書いている事もあれば、へーそうなんだという新しい発見もありました。須藤さんとお会いした時に、「ご本人はビジネスは良く分からないけど」というお話だったのですが、この本読んで認識を改めさせられました。
ご本人が中国系企業勤務をされていますし、様々な日本人だけでなく、上海のOLたちに直接インタビューされて書かれたのでしょうね。文章はさらっとして毒の無い表現なんですけど、上海で働く日本人に対して、エールの声もある反面、だらしない人たちへの毒針も密かにかくしもっていて、人によってはチクチクするんじゃないでしょうかね?
読みやすいのでさらって読み飛ばしちゃうでしょうけど、中国関連の事業をする人は、まずは中国に来る前に一度、来て数ヶ月してある程度見えてからもう一度読み返すだけの価値はあるんじゃないでしょうか?駐在員に関しては、企業側も考えるべきでしょうね。銀行と商社の待遇のよさは有名ですけど、銀行なんて今でも給与を倍にしてるんですか。日本企業向けのサービスしかできていないのに。商社も、投資案件の90%が失敗と言われているのに。。。
幾つか個人的体験を。
・日本から中国へのB2CのECサービスを、2007年頃から幾つかの会社が運営しています。でもこの本のネット事情を見たらどう思うだろう?私が一時帰国する前の2006年12月から2007年初頭は、台湾沖地震の影響で国際回線が一つ切れてしまい、実際メールもまともに届かない期間が続きましたし、当然サイトなんて見れません。日本の上海の商工会議所はサロンで何の役にも立たないのですが、アメリカ商工会議所は、2006年夏の段階で上海のネット国際回線以上の悪さについて上海市政府に改善を求めていました(結果はどうだろう。上海は台湾人や香港人を含む外国人が多く、トラフィック量が圧倒的に多い。おまけに上海電信の努力不足の影響で、国際回線に関しては中国国内大都市の中でも最も環境が悪いようです)
こんな環境を考えたら、日本にサーバーおいて中国向けにプロモーションや物販をするなんて、全くのナンセンスだって事は直ぐ分かるはずなんです。でも結構な投資をして、VCもお金を出している。どこに事業性のロジックを見出したのか、こちらが知りたいです。
・日本人駐在員がローカルスタッフと食事をしないのは別に中国に限りません。アメリカのロサンゼルスにある日本企業でも、駐在員、日本人現地採用、アメリカ人ローカルの3つのグループに分かれる事が一般のようでした。外人とは言葉の問題、日本人同士では所得格差の問題、が原因のようです。
中国でも同じでしょう。ちなみに、僕が2004年から1年半在籍した日系独立系のコンサル会社も全く同じです。駐在員扱いの社員はいませんので、日本人もローカルなんですけどね。だから社員が名に考えているかなんて実は日本人は誰も何も知りませんでした。大きな日本企業なら当然でしょうね。
私自体も、その時は今の妻と一緒に食事をしようということで、中国人スタッフと食事をするほうが多かったので色々学んだ物はあります。但し、その後転職した会社では、買収した会社のお偉いさんで赴任したのですが、その中国企業の経営陣以外とはほとんど食事をする機会が無かったですね。誘っても断られましたし、後半は日本本社側から刺される形になり権力が無いとみなされたからでしょう。だから、若い中国語の話せる子は良いとして、おじさん駐在員が簡単に中国人たちの輪の中に入れるかと言うと疑問でもあります。表面的な声は聞けるんですけどね。
こうやって、自分の経験をあわせて振り返れば(飛行機のキャンセル等も含め)、この本に書かれていることは中国リスクとして抑えておくべき事ばかりなんですよね。さらっと面白おかしく書かれていますけど、中国で商売する人なら絶対に抑えなきゃいけないエッセンスが沢山盛り込まれている本です。
でもねぇ。。。痛い目見ないと分からない平和ボケした日本企業のほうが数的には多いんですよね。馬鹿は殴られなければ分からない。中国人もそういうところあるんで、良く罵倒するんですけど、日本もなぁ。。結構中国人下に見る日本人、日本はもちろん未だに上海でも多いんですけど、もしかしたら日本人の方が頭悪いのかなと思うこともあります。