中国で何年か仕事をしていれば日系企業の失敗事例を耳にする事は少なく有りません。今日の日経ビジネスの記事に幾つかの事例に加え、中国市場に関しての意見が掲載されていましたのでご紹介します。
・本社が敵: 深セン市にある樹脂成型メーカー。新鋭機器を揃え、一度は成功したが、本社が中国法人の設備投資をせず、中国国内企業との競争に敗れ去った。最終的には本社もおかしくなり、中国法人は従業員が買い取った(当然相当安い値段でしょう)。
「仕事が多い中国なら儲かる、日本で苦しくなったから中国へ、というのは10年も前ならホントだったが、今はウソ」。10年前、東京の中小メーカーから一念発起して出てきた名島董事長は実感を込めて言う。当時はまだ日系メーカーが少なく、製品の売値も高く設定できた。しかし、進出企業も一巡して価格競争で粗利益率は下がる一方だ。
⇒これって
中国市場向け販売でも同じことが言えます。
本社が中国での営業方法を何処まで理解できるか(コンプライアンスとの兼ね合いをどこで折り合いをつけるか)、
継続的に新商品を開発販売できるか。中国人は器用ですので、類似品は直ぐに作られてしまうでしょう。その中で継続的に優位性を保つ必要があります。日本の市場が今後縮小する事から、非常に多くの方が中国向け販売を狙っています。でも、生産と同じか、技術が無く、かつお客さんが日本でないだけに、
より厳しい場に直面するはずです。・安易な幹部社員の現地化:
幹部の現地化を進めたつもりでいたが、工場長が自分の工場で同じ製品を作っていた。工場の幹部はこの工場長が連れてきた近親者で固められていた。
もう1つの会社はコピー商品を作るだけでなく、会社印などを使い、仕入れ代金をごまかして不正に懐に入れていた。工場の隅々まで知り尽くした相手だけに、どんな仕返しをされるか怖い。穏便に解決するための退職金をどうするか、頭を悩ませている。
「権限委譲と放任は違う。日本人は日本語ができる中国人を安易に信用しがちだが、定期的に資金の流れをチェックするなど最低限の管理はしなければならない」と喜多代氏は警告する。
⇒この事例は、あきれるほど見ます。私自身も以前某現地法人の清さんコンサルを行ったのですが、営業、経理、購買、工場長が全員家族でした。総経理は日本人でしたが、その愛人一族に占められていました。
また、買収した企業も元オーナーが類似企業を作り、買収した会社のお金を使って準備をしていた節がありました。日中間の問題もあるでしょうが、当地は領収書だろうが何でも偽造品が作れ、かつ関係さえあれば取引先もその不正行為に協力しますので、証拠を見つけるのは困難です。また、公安(警察)も外資系企業内部の問題は、犯罪ではなく経営上の問題として取り合いません。
極めて安易に現地法人の権限を委譲する会社が多いですね。日本企業の多くが経理は唯の帳簿付けを担っていることが多い為、不正行為等まで踏み込んだ人材が日本人自体に居ない事も大きな課題です。特にサービス業はその傾向が強いですから、今後も失敗事例は増加するでしょう。
・中国市場での人材: 中国の国内販売を目指し、中国拠点に設計や開発の機能を持たせる企業が増えてきた。それも一筋縄でいく話ではない。第一線の生産現場を担う人材と、高度な教育を受けた人材を揃える条件は同じではない。
研究開発のような頭脳集約型の活動を行おうとすれば、いきおい拠点は上海や北京近辺となるが、折からの中国進出ブームである。実務の知識と能力があり、外資系では必須の語学力を兼ね備えた人材となると、完全な売り手市場で、給与は高騰を続けている。「工場進出の段階で給与の高さに驚く日本企業が多い。下調べが足りない」と中国進出コンサルタントの公興和投資顧問、何暁岩董事長は言う。
⇒日本企業で頭がいたいのは、研究開発人材より、
中国国内の日系企業に勤務する中国人、そして日本企業に勤める中国人の中で、中国市場に販売・マーケティングをした人は極めて少ない事です。過去の日本企業の進出が生産、調達が中心でしたので、管理面等はある程度できますが、中国市場の中国人向けに物を売れる、かつ日本語ができるとなると極めて少ないです。かつある程度のビジネス経験を持つとなると1万人どころか1000人もいないと思います。また、営業系は自分に自身を持っていますので、長期的に雇用できる人材となるともっと少なくなりますね。
日本人や、現地に本企業向けの営業に長けている人は割りと居ます。私自身がどうせ中国にいるなら、現地の日本企業相手ではなく、中国市場に営業できる中国人がいないかと数年前にそういう人を探しましたけど、見たこと無いです。今回の帰国後、現状ネット中心とはいえ嫁がそういう才能に長けていることにびっくりしたと同時に感謝する限りです。
・外資優遇策は続かない
⇒法人所得税の外資優遇策が無くなりました。
・人民元高より制度改革のリスク
⇒中国市場向けの場合は人民元はリスクではないでしょうが、諸制度改革も業種によって影響を受けるでしょう。
携帯コンテンツに関しては、SP(サービスプロバイダー)業界の収益源が不法なコンテンツに関連していた(ポルノ系や出会い系等)ことから、数年前キャリアが大きく規制し、市場そのものが半分以下に縮小。アメリカにや香港に上場している企業も上場廃止や、業績の大幅な悪化に追い込まれました。同様の事は全ての産業にわたってありえると思います。
・実質的な市場は4000万人:
中国の人口は約13億人。中国の市場規模については見方により、沿岸部の人口4億~5億人、もしくは人口の13億人とされる。
JETRO香港センターの船矢祐二氏は昨年、中国に進出した日系企業のヒアリングを基に興味深いリポートをまとめた。結論は
「日本企業にとっての中国市場は4000万人相当」というものだ。
中国には内陸部を中心に貧しい農村の人口が8億~9億人いる。日系企業が販売対象とするような所得水準ではないため、中国の統計上「都市人口」とされる約 1億5000万世帯(人口4億6500万人)を対象とした。1世帯当たりの勤労者は平均1.6人だから、日系企業のターゲットとなる世帯の月収は3200 元(約4万1600円)となる。この世帯が全体のどれだけを占めるかを世帯別の所得統計から導いた。
所得統計から導いた。
7階層に分けた所得層の中でこの水準をかろうじて上回るのは最高位の1500万世帯だけ。人口にして3960万人しかいない。これは平均値だから
ここに属する世帯でも水準に達しない世帯も多い。ただデータは2001年のものなので、その後の経済成長を考えれば全体の底上げは見込める。これらを相殺
すれば、やはり4000万人という数字は妥当な線である。4000万人台の人口は韓国やスペイン1カ国に相当する。
⇒データが2001年のものと古いのですが、私が昨年計算してみますと、ブログ右のホームページに掲載していますが、所得月2000元以上が人口1.3億人、月5000元以上が23百万人です。
Eコマースで物を買ったことのある人が、2000元以上で24%(32百万人)、5000元以上で43%(1千万人)と概算しており、中国向け販売ツールとしてネットがかなり有効だという発見をしたものです。それで当初は妻のお小遣い稼ぎだった淘宝での販売をビジネスとして真面目に始めた経緯があります(未だに楽天に出店しているネット小売の一つと見られますが、このツールのポテンシャルはもっと大きい事を発見しています)。
上述JETROだと月2000元の月収者の世帯あたり所得と計算していますが、その伝で行くと、1.35億人が月収2000元以上。1世帯1.6人とすると
84百万世帯が日本企業のターゲット顧客ということになりますので、倍になってしまいます。上記のデータが2001年、この記事も2004年時点のものですが、近年都市部を含めホワイトカラー層の給与が毎年10%以上、時には20%程度も上昇していますので、自分の出している80百万世帯がターゲットという方が現状を示していると思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20090220/186818/