さすらうキャベツの見聞記

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レ・ミゼラブル

2011-05-16 23:36:19 | Monday ゆかいな言葉たち
(ブログカテゴリー名(右上)を変えたいなと思いつつ)

 「レ・ミゼラブル」(ビクトル・ユーゴー)のある小さな、小さな一場面。


            ************


 ある日、彼はあるサロンで、まもなく判決がくだる予審中の刑事訴訟の話を聞いた。
 
               

 あるみじめな男が、
一文なしになったあげく、
女と、その間にできた子どもに対する愛情から、贋金(にせがね)をつくったのだ。


 贋金づくりは、そのころまで死刑だった。


               

 男のつくった最初の贋金を使ったために、女が捕まった。
 捕まえたけれど、本人の自白以外に証拠がない。
 自白して、情夫に罪をきせて、男の身を破滅させることができるのは、女だけだった。


               

 女は否認した。
 強要されても、女はあくまでも否認した。

 そこで国王の検事は一案を思いついた。
 情夫の不実(=浮気)をでっちあげ、手紙の断片をうまく綴(つづ)り合せて、
その不幸な女に、彼女には恋敵(こいがたき)がいて、男にだまされていると
信じこませることに成功した。

 すると、嫉妬(しっと)に怒り狂って、女は情夫を告白し、すべてを自白して、
すべてを証言した。男は破滅した。
 近く、エクスで、共犯の女と一緒に裁かれようとしていた。


               

 このことがみなの話題となり、検事の巧妙さに感心していた。嫉妬をだしにして、
怒らせて、ドロを吐かせ、復讐(ふくしゅう)心から正義を引き出したのだ。
 司教は黙って一部始終を聞いていた。話が終わると、彼は訊(き)いた。


「男と女はどこで裁判されるのかね?」

「重罪裁判所ですよ」


 彼はつづけて言った。

「それで検事は、どこで裁判されるのかね?」

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