それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

学部の子と会う

2012-06-21 20:01:00 | 日記
今日は午後から学部生の子とお昼ごはんを食べた。

その子と会うのは2回目で、1回目の印象もとても良かったのだが、ずっと前に会って以来、一度も会う機会はなかった。

もう、その子も日本に帰るということで、その前に一度会いたいということだった。

会いたいと言ってくれる以上、断る理由もなく、とりあえず会うことにした。

非常にしっかりした子ではあるが、基本的にあまり人の話を聞かない悪い癖がある。

他方、非常に鋭い観察眼を持っており、彼女が見てきた話や聞いてきた話には一聴の価値があり、学ぶところがとても多い。

また、育ちの良さからくる品と器量の良さを備えている。

最後に会った時よりも、おそらく彼女は太ったに違いないが、彼女の年の女性というものは太っていることこそ美徳である。

イギリスで彼女が感じたことには、僕も大変共感することが多く、今日もなんとなく意気投合して長時間話し続けてしまった。

しかし、彼女の性格はまさに陽そのものであり、若いということもあってとてもパワフルで、普段の不精が祟った私は彼女に時間と体力を吸い取られてしまい、今に至る。

もし3日一緒にいたら、私は動けなくなるかもしれないな、と思った。

若い女の子と付き合う大人の男性って、すごいね。

あと、やっぱり学部生のノリについていくのは大変で(私のことを何となく暇な人だと勘違いしているあたりとか)、一般論として学部生のゼミの指導って大変なんだろうな、やっぱりと思った。

彼女との会話のおかげで、私の専門に関わる話において、とても収穫の多い1日となった。

青い空

2012-06-20 21:48:35 | 日記
論文の詰めがなかなか大変で、時間がかかっている。

この段階に至っても、スランプにはまったり、沢山の発見があったりする。

嬉しいけど、時間が限られている。博論以後の研究のことを考えたりもしている。



バレンティーナがいないと静かだね、などとラケルと話しながら歩く。

今日は一日研究し続けて、そして夜になって僕らは外に出た。

「休憩がてら外出しない?」と彼女が誘ってくれたのだ。

スペインでは、一年中、まして夏ともなれば、仕事終わりに必ずストリートで飲むのだそうだ。

当然イギリスでもそうしたいが、かわいそうに家で研究する限り、誘えるのが僕くらいしかいない。

大学の丘を登ったところにあるパブへ行く。

外のテーブルでビールを飲む。

昨日からようやく暖かくなってきた。

日記によれば、去年も6月末から夏になったとある。

今時期は夜と言ったって、9時過ぎまで明るい。

とにかく、みんな外で飲む季節なのだ。



イギリスの初夏の青空が好きだ。

高くて澄み切った空。深すぎない青。

来月、この空ともしばらくお別れする。

「青い空は遠くなってゆく

あなたの言葉やぬくもりを思い出したら

夕凪が言葉も云わず暮れてゆく」(くるり「青い空」)

アレックスのお母さん、急襲。

2012-06-17 19:56:49 | イギリス生活事件簿
朝、ドアを叩いている人がいた。

アレックスが急いで駆け降りると、一生懸命鍵を開けようとしたが、何か焦っていてなかなか開けられない。

こんなにアレックスが慌てるなんて珍しいなあと思いながら開けてあげると、そこには大変ふくよかな女性と、白髪の大柄な男性が立っていた。

女性は「アレックスの母です」と名乗った。



黒い豊かな髪をひっつめにして眼鏡をかけた女性、つまりアレックスのお母さんは、なかなか眼光が鋭く、フレンドリ-な感じではなかった。

僕の予想を裏切るアレックスのお母さん。

他方、男性は優しげで、こちらは「私の友人よ」と紹介された。アレックスのご両親は離婚している。

お母さんは現在ロンドンで暮らしており、アレックスは度々そちらに顔を出している。



アレックスにとっても今回の訪問は急だったということで、とても慌てていた。

奇しくも、バレンティーナがイタリアに帰った直後であった。

実は、アレックスはバレと一緒に暮らしていることをお母さんに内緒にしている。

バレはこう言っていた。「アレックスのお母さんに、私、とても嫌われているの。」

アレックスはお母さんのいないところを狙って、僕らフラットメイトに「かん口令」を敷いたのだった。



なぜ、バレはアレックスのお母さんに嫌われてしまったのか?

僕が下の記事に書いたようなバレの考え方や行動を詳細に読み取り、その結果、嫌ったのだろうか?

アレックスのお母さんは実は薬学博士の資格か何かを持っていて病院に勤務している。つまり、どエリートなのだ。

お母さんはアレックスに博士課程への進学をすすめており、ことによるとアレックスにも同じような理系の研究者になってもらいたいのかもしれない(どういうわけか、研究者の親は子供を研究者にさせたいケースが結構頻繁にある)。

少なくとも、アレックスはかわいい息子であるに違いないし、おそらくは出来の良い息子としてある程度認識されているのではないかと思う。

そういう人が息子のパートナーに求める人物像はいかなるものであろうか?

エリートで、しっかりした女性?ことによると研究者とかの?

お母さんがバレンティーナと会って驚愕したであろうこと、そして落胆したであろうことは、容易に想像できるのだった。

(ちなみに、どうしてこんなに良く出来た男であるアレックスがバレンティーナを選んだのか、全く僕にも理解はできないのだが、おそらく何かがとても魅力的なのだろう。確かにバレは楽しい人ではある)。



僕は午後からラケルと図書館に行き、それぞれ研究に励んだ。

帰ってくると、アレックスおよびお母さんとそのお友達の姿はなく、僕らは音楽をかけながら早目の夕食をとった。

「ワイン、飲む?」とラケルが僕にたずねる。

「あとでいいよ。」

「あら、今日は日曜よ!」と、いたずらな笑顔でグラスを2つ持ってくるラケル。

僕らはワインを飲む。

ラケルは言った。「彼ら、あとで帰ってきて、バーベキューするわね。」

そう、アレックスは大量の肉を解凍して出て行ったのだ。

けれど、フラットメイトの僕らが誘われることはないだろう。アレックスのお母さんはそういう感じでは全くなかった。



お母さんがどういう目的でこのフラットにやって来たのかは分からない。

ただ、ひとつだけ明らかなのは、アレックスが借りてきた子猫のように大人しくなってしまったことと、お母さんとの会話が異常に緊張感のあるものであるということ。

そして、あの部屋にバレンティーナがいないとしても、そこに全く女の影を感じ取らない母親はいないであろうし、ましてあのお母さんであるならば、なおさらだということ。



僕らの夏は、あと一か月と少しで終わる。

バレンティーナの思想

2012-06-16 14:25:36 | イギリス生活事件簿
僕がどうしてバレと一定程度の距離を保とうとしているのか、その説明がとても乱雑だったことを反省し、少しだけその後の話を書く。

バレはとても僕が思うところの「女性らしい」人間だ。

彼女はものすごくロマンチストで、情に厚い。

他方、非常に打算的なところもあり、使えるモノやヒトを最大限に使う。

この一見矛盾しそうなふたつの原理が彼女のなかで仲良く働いている。

打算とロマンが組み合わさるとどうなるかというと、辻褄のきちんと合う物語が彼女のなかで生成され、それに沿って行動することになる。

僕は彼女の語る物語がしばしば半分フィクションであることに、ある日、気がついた。

それは非常に興味深いものだった。

アレックスはこう証言している。

「彼女はドラマのなかの女王なのさ。」

バレンティーナの打算とロマンの組み合わせは、彼女の周りに色々なドラマを生み出す。それはとても面白く、また目が離せない。

僕はその物語の熱心な観察者となった。



ただ、僕はたとえそれが親友というものであろうと、そのなかの当事者にだけはなりたくない。

ところが、徐々にその当事者に彼女が僕を勝手に引きいれようとしているのが分かった。

それは言いかえれば、とても仲良くなったということでもあるのだが、僕はそこまで仲良くなりたくないのと、もうひとつ重要なことなのだが、フラット内の秩序をとにかくバランスよく保ちたかった。

僕がネットの件を持ちだした結果、彼女の頭のなかで僕の位置がエースと同じところまで降格し、フラットは再び僕の理想とする秩序に戻った。

エースと僕は1セットと見なされ、ちょうど良くなった。

もうすぐ僕は帰国する。そうしたら、僕はイギリスでのことをすべて一度記憶の奥の棚に仕舞いたい。ちょっと楽しみ過ぎた。

theのこと追記

2012-06-15 19:30:49 | コラム的な何か
以前、theをどこで付けるかの話を書いた。

で、オチが「辞書に書いてあるとおり」というものだった。

ただ、辞書に書いていないことで重要なことが2つある。

詳細は省くが、要するに次の点。

(1)theが付くはずの場所だが、ある要件を満たすことで省かれる場合がある。

(2)ある要件を満たす時、theが付いても、付かなくても、どっちでもいい場合がある。

それだけです。