それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

スープ7

2013-08-15 20:30:18 | ツクリバナシ
サキは花畑にいた。

遠くから誰かがやってくる。

目を凝らしてみると、大きな「くまもん」だった。

サキは花畑を駆けていき、くまもんに抱きついた。

くまもんの目がキラっと光り、大きな口を開けた。

「くまもん?・・・きゃー――。」

ねえ、サキ。着いたよ、空港だよ。という声に起こされた。

ミノルとサキは飛行機の中にいた。

「あぁ、夢か・・・。」サキは寝ぼけながら、窓の外を見る。

空港の周りには何もない。

ただ、平野と山だけが見える。それも本州の山ではない。ヨーロッパのちょっとした山脈みたいなやつが佇んでいる。

「自然・・・。」とサキは呟いた。

こんなに自然しかないと、逆に不自然だなと思った。

ミノルはサキの手を引いて飛行機の外へ向かった。

空港にはミノルの両親がいた。

見た目はごく普通の優しそうな、おじさんとおばさんだった。

やたらニコニコしている。息子の彼女を見られるということで、おそらくテンションが上がっているのだろう。

「いらっしゃーい。初めまして、ミノルの母です。サキさん、遠いところ、わざわざありがとうねぇ。」

「いえいえ、突然お邪魔して本当にすみません。」

ミノルの父はどうしていいのか分からないのか、何となく微笑している。そして、「こんにちは。いらっしゃい。」とだけ言った。



車は空港から何もない、ひたすら真っ直ぐな道を走る。

だんだん美瑛に近づくにつれて、見たこともない丘陵地帯に入っていった。

サキは息をのんだ。

「きれい・・・。」

緑と茶色のなだらかな丘が延々と続いている。そして、所々に大きな木がぽつんと立っている。まるでヨーロッパの絵画のような風景だ。

日本とは思えない。イギリスもこんな感じだろうか?とサキは思った。

「きれいだねぇ。」ミノルもこの風景を見るのは久しぶりであり、そもそも彼も札幌という多少の都会に住んでいたので、この自然には深く感じるものがあるらしかった。

「すごいでしょう。ここは北海道でも一番きれいな丘陵地帯なの。若いから知らないと思うけど、昔、タバコのCMが撮影されたのよ。タバコと大自然、ってなんだかよく分からない取り合わせよね。」と、ミノル母が言った。

「ロマンじゃないかな。」と運転しているミノル父が言った。

「よく分からないでしょ?」と、母がすかさず重ねた。

サキは笑った。お父さん、よく分からない人。という第一印象になった。

ミノルの実家は丘陵地帯の真ん中の道を曲がって、まさに丘の中心部にぽつんと立っていた。

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