それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

アイドルはストライキもできない以上、搾取され続ける

2016-01-24 07:36:53 | テレビとラジオ
 アイドルは残酷SHOWだ。

 売れればメディアで輝ける一方、舞台以外での様々な苦労は不可避だ。

 低賃金の長時間労働、様々なハラスメント。いかれたファン、おかしな事務所。

 2013年のAKBのドキュメンタリ映画『Documentary of AKB48 No Flower Without Rain 少女たちは涙の後に何を見る?』は、その一部分を見事に映像化していた。

 だらしのない運営スタッフによる様々なミス、過呼吸で倒れていくアイドルたち。

 (映画とは別の話になるが)握手会をすれば襲ってくる奴も来ちゃうし(運営側、防いでくれないし)、本当にめちゃくちゃ。

 事務所で揉めて、半強制的にテレビで謝罪させらた「大御所」のアイドルも記憶に新しい。

 解散を防ごうと一生懸命、昔の楽曲を買うファン。さらに儲ける事務所。売れる週刊誌。

 残酷なことが起これば起こるほど、事務所や運営側に有利になるように思えてならない、このアイドル業界の政治経済。



 アイドルは法律上は一応、個人事業主になっている。

 だから、普通にそのまま労働法を適用する、というわけにはいかない。

 しかし、実態は労働者である場合も多く、その場合には労働法がきちんと適用されるということが判例で出ている。

 とはいえ、アイドルが搾取されている状況には一向に変わりがない。

 アイドルには自らを守る「言葉」がない。

 自らを守る「言葉」とは、法律や経営の基本的な知識や考え方だ。

 よく「どうして学校で勉強するのか分からない」という子供がいるが、それは自分を守る「言葉」を覚えるためである。

 「そういう言葉がない者は、アイドルのように搾取されるんだよ。可哀そうだね。」というのが、本当の社会科であり、素直な子供への疑問に対する誠実な回答のひとつである。

 ファンはアイドルの処遇が残酷であればあるほど応援するため、あまりにも見事な「善意の加害者」が出来上がる。

 アイドルや事務所にネット上で何を言おうと無駄だ。

 市場というのは、儲かるかどうかの問題。

 どんなに素晴らしい目標を掲げようと、どんなにバカみたいなことを言おうと、市場では一定の利益を出し、その場に残ったものが勝者である。



 もしアイドルがストライキできたらどうだろう?と妄想した人もこれまでいたかもしれない。

 かつての労働者のように、生きるために必死でストライキを行う、という架空のストーリー。

 でも無駄だろう。アイドルは横でつながっていないし、つながれないだろうから。

 一部のアイドルが出なくなれば、他のアイドルが登場する。

 スト破りを防ぐのは不可能に近い。

 では、アイドルの熱狂的なファンが不買運動をするというのはどうか?

 事務所の待遇改善を要求し、それまで決して関連商品を購買しないという運動だ。

 ファンという非組織的な集団がもしそれをできたら、日本にブラック企業はひとつも存在しないだろうし、政治は今とは全く違った状態になっているだろう。



 だから、革命によってアイドルが搾取されないユートピアを求めても無駄なのだ。

 何の救いもないが、ファンはファンであるゆえに、その搾取の構造に関与し続けるということを理解する必要がある。

 SMAPの残酷SHOWにこんなに日本人が熱狂しているなんて。

 解散なんてさせないよ、まだ搾取したりないんだから。もっともっとボロボロになるのが、みんな見たいんだから。

 本当にアイドルというのは素晴らしい社会的犠牲である。

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