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スピッツの「スピカ」と、Nokkoの「人魚」を勝手に解説

2011-01-20 10:15:14 | コラム的な何か
最近はまっている曲がふたつありましてね。

ひとつが、スピッツの「スピカ」で、もうひとつがNokkoの「人魚」(作曲は超大御所の筒美京平)です。

両方とも90年代を代表する楽曲であります。最近、80年代ブームが終わったら、90年代ブームが来るのかなあなどと安直に考えている今日この頃であります。



スピッツの「スピカ」は椎名林檎がカバーしたバージョンもすごく良いのですが、オリジナルもやはり負けてはいません。

Nokkoの「人魚」にいたっては、やたらカバーされています。安室、Bonnie Pink、中孝介などなど。そのなかでも、秀逸なカバーが「羊毛とおはな」(ギターリストと女性ボーカルのデュオ)によるカバーであります。



それはいいのですが、このふたつの楽曲に共通なワンポイントのコード進行の話を書きます。

両方の楽曲のポイントは、言ってしまえば、歌詞とメロディの奇跡的な組み合わせでありまして、コードはそれほど重要ではありません。

でも、コードとメロディの関係は気になります。

音楽を知っている人にとっては、なんてことはない話で、知らない人にはどうでも良い話です。

要するに、誰にとっても需要の無い話なのですが、コード進行初学者には重要です。



1、スピカのサビ

まず、「スピカ」のサビのコード進行を見てみましょう。

サビ

| Dからベースが一音ずつ下がる | その続き | Gからベースが一音ずつ下がる |その続き| | A A/G | F#m7 D/F# | Em7 | C A/C# |

| Dからベースが一音ずつ下がる | その続き | Gからベースが一音ずつ下がる |その続き| | A A/G | F#m7 F#7 | G G/A | D |

まず、ひたすらベース音が下がる展開です。

その上に、ストレートに

「ファ# ソ ラ ド#(上) レ(上)」(コードはおよそD)

「ソ ラ シ ファ#(上) ソ(上)」(コードはおよそG)

「レ ミミミ ファ# ソ ラ」(コードはおよそA→D)

と、コード進行ほぼそのままのメロディがたたみかけるように乗ります。音列とコード進行が異常に一致しているので、聴き手に対して非常に素直な印象を与えます。

下から一気に上に飛んでいくので、男性の歌い手は結構きつい。しかし、この素直で一気に上昇する音列が、この曲の良さなのです。

スピッツのヒット曲には、コードに逆らわない異常にナチュラルで、一気に上昇する爽快なメロディが乗る傾向にあるような気がします。

そのなかで、最高のアクセントになっているのが、最後の「A→A/G→F#m7→F#7」。歌詞で言うと、「幸せは途切れ~ながらも~」の部分です。

しゃくりあげるようなメロディと、このF#7(IIIのメジャーコード、つまり副Vにあたる借用和音)の組み合わせに、ファンはイチコロです。



2、Nokkoの人魚:Aメロの最後

Nokkoの「人魚」で一番印象に残るのが、Aメロの最後。歌詞で言うと「その笑顔をしぐさを愛しくて」です。

Aメロのコード進行を見てみましょう。

| C Em/B Am7 | FM7 G | Dm7 | G |

| C E7 | Am7 D7 | C Dm7 | F F/G C|

素直できれいな進行です。前半はメロディも基本的にこの進行に対して、どストレートな展開です。

問題の後半、メロディは「ミ ファ ソー ミ ファ ミ ソ#ー ミ ファ ミ」と、CからE7(IIIのメジャーコード、つまり副Vにあたる借用和音)への展開がぴったり。非常に分かりやすい、90年代っぽいパターンです。

つまり、ここでもスピカと同じ借用和音で、曲にアクセントをつけています。

普通に曲を書くと、IIIのメジャーコードは頻出すぎてアクセントにならないような気がしますが、ここまできれいに展開すると、たかだかIIIのメジャーコードでも、強いアクセントになってしまうというマジック。

これがふたつの曲の共通点であります。



3、まとめ

要するに、どっちも非常に分かりやすいくらいきれいなコード進行の上に、きわめて素直な展開のメロディが乗るという、いかにも「90年代Jポップ」という感じの構造になっていました。

この素直さは、しかしタイムレス。時代関係になく美しいと感じます。

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