翌朝。「志摩観光ホテル ザ ベイスイート」滞在2日目。お天気は、晴とはいきませんが、雨の心配はなさそうです。
(テラスより。厚い雲の間から少し青空が見えます。)
明るい方を見てみますが、雲のため朝陽が昇る場所はよく分かりません。
(散策してみたいので晴れますように。)
昨晩が洋食でしたので、朝食は和食「浜木綿」にしてみました。今日は朝のアクティビティ「館内ツアー」を予約していますので、7時に朝食を。
(部屋もゆったりしていますが、食事処も広々と贅沢に空間を使った作りになっていて、気持ちいいですね。)
朝食の献立。「志摩の朝餉膳」というタイトルです。
(伊勢志摩の食材の名前がずらりと並んでいます。)
隣の席を感じさせないゆったりしたテーブル配置。私たちは窓際に案内されました。
(壁一面が窓になっていて、座って横を向くとこの景色。)
外の景色から店内に視線を移すと、他のお客さんをスクリーンするけれども全く仕切られ感のないガラスのパーテーションに気付きます。よく見ると、和歌が書かれています。
(目立ち過ぎないようにか、ガラスに白字でさりげなく。「伊勢」という朱印がアクセントで、ご当地由来の歌ということが分かります。)
この歌、帰宅後調べてみると、「万葉集」の一首。「嗚呼見の浦に 舟乗りすらむ をとめらが 玉裳の裾に 潮満つらむか」。「嗚呼見の浦」は「あみの浦」と読み、今の鳥羽市の海岸で、持統天皇の伊勢行幸の時、飛鳥京に残った柿本人麻呂が旅先の人々の無事を祈って詠んだ一首だとか。
伊勢神宮があるので古来より歴史が堆積しているのは当然だと思いますが、少し離れたこの地も風光明媚なだけでなく「深掘りできそうな歴史がありそうだなぁ、、、」などとボーッと考えていると、料理が運ばれてきました。
■桶盛り彩々:伊勢志摩産鹿尾菜(ひじき)煮、真珠貝柱胡麻酢和え、伊勢どり野菜浸し、胡麻豆腐・いくら、山芋とろろ、焚合せ
(三重の素材を使った品々。桶の後ろに隠れてしまいましたが、「三点箱盛り」も来ました。伊勢志摩産ちりめんじゃこ煮、唐辛子味噌、梅干し。)
■御飯:海の七草粥 ■焼魚:三重県産干物、出汁巻玉子添え ■伊勢海苔佃煮
(味噌汁はあおさ海苔。御飯は、白御飯、米澤もち麦御飯、白粥、海の七草粥、もずく粥、薬膳粥の中から選びます。焼魚の干物はカマスですが、まぁ肉厚なこと。妻は米澤もち麦ごはん。そちらには炙り用の箱に入った焼き海苔が付きます。)
シンプルだけど素材の良さと丁寧な仕事ぶりを楽しめる、いい朝食でした。この「浜木綿」、夕食を食べてみたくなる素晴らしい食事処でした。
さて、「館内ツアー」は9時集合ですので、まだ1時間ほどあります。昨日は雨だったので行かなかった「屋上庭園」に行ってみます。
(「浜木綿」は4階、「屋上庭園」は5階。このラウンジに出入口があります。ここも2016年のサミットでは使ったようです。)
2016年のG7サミットで各国首脳も訪れた「屋上庭園」。その時の記念写真が飾られています。
(この❝お立ち台❞はそのまま記念撮影スポットとして今も残されています。)
少し歩いて、ラウンジの方を振り返って見ると、この景色。
(既に屋上とは思えない景色です。)
もっと小さい(短い)散策路と庭園だと思い込んでいましたが、意外なほど広くて、十分散策気分を味わえます。
(青空が出てきました。建物の凹型を利用して散策路を大きくカーブさせていて先が見えないこと、左には英虞湾の海の景色が❝下❞に広がること、奥の山々が借景になっていること、いろいろな視覚的効果か、開放的で清々しい気持ちになります。)
そして、ありました!
(もちろん、ここに立って、妻と交代で記念撮影しておきました。(笑))
❝お立ち台❞には、各国首脳の当日その瞬間の立ち位置と、実際の足型が刻まれています。
(中央が主催国日本の安倍(当時)首相の立ち位置でした。)
ここに立ってラウンジの方を見ると、この景色です。
(一番早い朝食時間の直後ということで、私たちで独り占めです。気持ちいい~。)
この「屋上庭園」はおススメスポットだと思います。特に朝食後のプチ散策に最適です。
(モザイクかけてしまいましたが、私を撮ってもらいました。散策路と植え込み、ラウンジの建物、右に広がる英虞湾の景色、なかなかベスポジでした。(笑))
散策路を戻りながら、「ザ・クラシック」と「ザ・クラブ」を撮ってみました。
(9時からの「館内ツアー」は緑系の屋根の「クラブ」に集合です。)
まだ時間がありますので、「屋上庭園」からロビーに降りて外へ。「ベイスイート」の外回りも散策してみました。
(この外壁の石材が素敵でした。妻と「家の外壁もこんな感じにできたらいいだろうなぁ。」などと妄想話を。)
「クラシック」、「クラブ」から緩やかな坂を上って来るとこの「ベイスイート」の車寄せに至ります。そちらサイドの外からの景色です。
(明らかにホテルの人ではない黒服が結構な人数いました。どうやら、来年5月のG7広島サミットに合わせて開催されるG7国土交通大臣会合の会場がここらしく、本日この後、国交大臣が視察に来るので、お役人が前入りで動線確認などをしていたようです。)
次は、ロビーを通過して、凹型の内側の方に出てみます。
(こっちの方が絵になるような気がします。)
予約サイトなどで「ベイスイート」のシンボル的な写真として掲載されている、このショットを自分でも撮ってみたかったのですが、スマホカメラの画角性能の限界か、どうやってもうまくいきませんでした。
(ネットより拝借。昨晩は雨が本降りでしたので、夜景はそもそも無理だったのですが。)
さて、ちょうどいい時間になりました。「館内ツアー」の集合場所の「ザ・クラブ」までは歩ける距離ですが、ホテルの車で送ってもらいます。もちろん、アルファードクラスの車には私たちだけ。
(「志摩観光ホテル」がスタートした最初の宿泊棟。現在は歴史的建築の保存と資料館的な位置付けとして開放されています。)
ここで「志摩観光ホテル」の歴史を。後程聞いた「館内ツアー」の説明より。
・賢島は、昭和初期、真珠養殖の資材基地の役割を担っていた。養殖場のある鳥羽の神明村から歩いて渡ることができたことから、❝徒歩で越えられる島❞=「徒越島」(かちこえじま)と呼ばれ、その後それがなまって「かしこじま(賢島)」になった。(諸説あり。)
・その後、(御木本幸吉氏が球体の真珠の人工養殖に成功したことで)真珠を買い付けるバイヤーが数多く訪れるようになり、それに目を付けた創業者がホテルを建てたことが「志摩観光ホテル」の始まりであり、その建物が「ザ・クラブ」。
・設計は、昭和を代表する建築家村野藤吾氏に依頼された。しかし、当時は戦後の物資に乏しい時代で建築資材にも事欠いたことから、村野氏はかつて自分が手がけた三重県鈴鹿の「海軍工廠高等官集会所」(とても快適な宿泊施設だった)の柱や梁を移築して「ザ・クラブ」を建築した。
昭和天皇をはじめ皇族の方々、海外の要人も数多く訪れることから、2階へ続く階段は歩きやすい低い段差になっています。
(階段の手すりは当時の物そのまま。「館内ツアー」の集合場所が2階なので、この階段を上りましたが、確かに歩きやすかったですし、自然とゆっくりゆったりと歩くような感覚になります。)
2階、階段を上った所からの景色。
(この柱や梁は移築された当時の資材そのまま。日本の古民家の雰囲気もありながら、洗練されたものを感じる絶妙の趣きがあります。ちなみに、脚立や一眼レフを持った人たちが複数見えるのは、国交大臣視察の取材メディア。)
ここが「館内ツアー」の集合場所にして、2016年のG7サミットの様子を紹介するパネル等展示コーナーです。
(サミットギャラリー。)
各国首脳のサインプレート。
(G7だけど9人なのは、EUの議長と委員長が入っているので。)
安倍さんのプレートを撮っておきました。
(合掌。)
和三盆の落雁。確か、各国首脳にお土産で渡されたか、ワーキングティータイムに出されたか。
(「ベイスイート」のショップで4つ入りを売っていましたが、買おうと思わない値段でした。(笑))
そんなこんなでサミット関係の展示物を見ていると9時となりました。「館内ツアー」のスタートです。まずは、先に書いてしまいましたが、賢島の開発や「志摩観光ホテル」の始まりなど歴史の説明を聞きます。そして、話は2016年のG7サミットの時の説明へ。
(サミットギャラリー前で説明を聞きます。右のクラシックな時計は、「近鉄 標準時計」で、その昔、近鉄電車の標準時を刻んでいた重要な時計。スイス製。)
奥に見える、サミットのワーキングランチで使った円卓へ移動。
(円卓は尾鷲のヒノキ材、椅子の張地は伊勢木綿、椅子の背の張地の縁取りステッチは伊賀組紐。あらゆるところに三重県のものが使われています。)
ここでサミット以外のことで説明のあったこと。
・作家の山崎豊子さんはこの「ザ・クラブ」で「華麗なる一族」を執筆した。特に、冒頭の夕陽の情景を書くために、何日も夕陽を見続け、ついに最初の一文を書くことができた時の感動はその後も語り続けていた。(滞在時執筆に使っていた机が、写真奥の障子窓の前に置かれている机。)
・「華麗なる一族」が1970年代に初めてドラマ化された際、当時の有名俳優が一堂に集まってここでロケをやったことから、平成のドラマ化の時もロケ地として検討されるも、主演の木村拓哉はじめ出演陣のスケジュールが全く合わず、結局誰一人ロケに来なかった。なのに、お客様から「キムタクが泊まった部屋はどこ?」という電話をたくさんいただいた。
「ザ・クラブ」での説明が終わると、1階に降りて「ザ・クラシック」へ移動。
(写真奥に屋根が見えるのが、今いた「クラブ」。「クラブ」と「クラシック」は道路を挟んで向かい合っています。2階に渡り廊下もあり。)
こちらが「ザ・クラシック」のロビー。(「クラシック」は全114室。「ベイスイート」は50室(全室スイート)。)
(「ベイスイート」とはまた趣きが違いますが、落ち着いた雰囲気、私にも分かるセンスの良さは共通しています。)
ロビーからレストランへ続く広々とした空間の壁にあるこのオブジェ、タイトルは「リアスの風」。
(3色のパーツが複雑に組まれています。ゴールドは海に陽の光が反射するキラキラを、茶色は島々の樹々を、緑色は上空から見た「ザ・クラブ」の屋根の色を表わしているそうです。説明されないと絶対分かりません。(笑))
「リアスの風」の前を通って、「クラシック」のレストラン「ラ・メール ザ クラシック」へ。
(全面ガラスにレースのドレープカーテンが素敵です。)
2016年のG7サミットのワーキングディナーのテーブルセッティングが飾られています。
(このテーブルの向こう、大きな柱の2スパン先では、お客さんが朝食を楽しんでいます。ちなみに、このテーブルセッティングでは、座って記念撮影も自由です。)
座る勇気はなかったので、記念にセッティングをアップで撮っておきました。
(SHのイニシャルは「志摩観光ホテル」だと思いますが、この素敵なプレートはどこの製品だろう、、、触るのは禁止かな。)
ここの天井が特徴的とのこと。ちょっと説明が聞き取れなかったのですが、天井の木材は❝裏面❞を使っているとか。
(確かに板ごとの色がマチマチですが、それがまた味になっています。「夕陽が差し込むと美しく見える」みたいなことを言っていたような、、、。)
ここで説明のあったことで覚えていることはこんな感じです。
・なぜサミット首脳会議の会場が賢島になったか。ここは❝入口❞が限られていて守りやすい(警護しやすい)地形であること。セキュリティレベルは各国により水準があり、最も厳しいレベルを採る米国は「ザ・クラシック」の屋上にスナイパーを配置していたとか。
・「志摩観光ホテル」の5代目の総料理長、高橋シェフは独学で料理を学び、29歳で総料理長に抜擢された。提供する料理も一変させ、反対意見のある中、それまでのコースの数倍の高い料理を提供する方針を打ち出し、これがお客様の評判を呼び、料理が中心のホテルとして発展していく出発点となった。今も当ホテルの名物となっている「海の幸フランス料理」の創作者。ちなみに、そのレシピが難しすぎて当時の料理人の半分が辞めていった。
・現在の樋口宏江総料理長は7代目。
ここにはひときわ目をひく大きな絵画がかかっています。藤田嗣治さんの「野あそび」。
(系列の「シェラトン都ホテル」から、新装の際「ホテルのコンセプトに合わない」ため「ザ・クラシック」に移設されたもの。)
この「野あそび」の説明をほぼ最後に、約30分の「館内ツアー」は終了です。「志摩観光ホテル」の歴史、「ザ・クラブ」、「ザ・クラシック」の見所などを分かりやすく、楽しく説明していただけますので、とても印象に残ります。初めての宿泊なら「館内ツアー」はおススメです。
さて、「ベイスイート」への帰りは歩くことにします。(笑) 「クラブ」の全景を記念に写メ。
(不思議な雰囲気を持つ建物です。コルビジェ建築とは全然違うものですが、なぜか同じような美しさを感じます。)
「志摩観光ホテル」のエリアマップ。歩いてみると位置関係が更によく分かります。
(このマップがあるのは、ここからが「ベイスイート」のエリアという感じの地点。)
振り返って見ると、「ザ・クラシック」と「ザ・クラブ」が見えます。
(全く歩ける距離ですね。(笑))
時刻は10時前というところです。「ベイスイート」の部屋に戻って来ました。12時チェックアウトですので、バスタブにお湯をはって、英虞湾を見ながら最後のバスタイム。残りの時間を100㎡を超える部屋でゆっくりと過ごします。
チェックアウトしました。チェックアウト後の過ごし方としては、①賢島駅に戻って英虞湾クルーズ、②「ベイスイート」ではチェックアウト後もラウンジを使うことができるので、ここで過ごす、の2択です。で、妻がまさかの「卓球をやりたい」。
(ロビーのサイネージがいろいろな情報を流しています。何と、「ザ・クラブ」1階に卓球ルームがあるようです。しかも、「プロ選手モデルのラケットからお好きなものをお選びいただけます。」という刺激的なフレーズ。(笑))
チェックアウトの時にフロントに訊いてみると、空いていたので「卓球ルーム」を即予約。すぐにプレーできるようですので、受付となる「ザ・クラシック」のフロントへ。(車で送ってもらいました。(笑))
「クラシック」のロビーのソファに座っての受付は、まずはラケットを選ぶところから。「プロ選手モデル」のラケットのメニューを見せてもらいます。
(さすが「志摩観光ホテル」です。素人が使ってもいいのかというモデルが並んでいます。どれを選んでいいのか全く分からないので、私は「伊藤美誠モデル」、妻は「石川佳純モデル」にしました。)
ラケット選びが終わったら、「卓球ルーム」がある「ザ・クラブ」へホテルの方が案内してくれます。
(まさか戻って来るとは。どうやら妻は近いうちに卓球で友人と勝負する機会があるらしく、その練習をしたいとか。)
それにしても「ザ・クラブ」のどこに「卓球ルーム」があるのかと思っていたら、1階のここでした。
(右のドアの向こうが「卓球ルーム」。案内してくれたホテルの方に聞くと、「今年のGWにこのアクティビティ(卓球)を始めました。」とのこと。ここに来てまでやる人がいるのか聞いてみたら、「それが結構人気のアクティビティなんですよ。」とのこと。へぇ~。(笑))
さぁ、ラケットを出して勝負です。
(プロ仕様ですが使いやすい。❝本物❞のラケットのためか、妻も私も時々鋭い打球を放つことができました。)
1時間弱のマジ卓球。若干汗ばんだので、「今こそ風呂に入りたい。」と思いましたが、さすがにそれは無理。道具を「ザ・クラシック」のフロントに返却して、ぶらぶらと「ベイスイート」に歩いて戻りました。
(チェックアウト後も滞在し続けられるのは嬉しいですね。もちろん、荷物はフロントで預かってくれます。)
5階のラウンジに行ってゆっくりします。
(スポーツの後の一杯、たまりません。(笑))
もっと人がいるかと思いましたが、私たちの他は1組だけ。静かなラウンジでゆっくりさせてもらいました。お天気の方は相変わらずスッキリはしませんが、いい景色です。
(この後、日が差してきてまぶしくなり、窓際から内側の席に移動。)
ラウンジでは無音でホテルの紹介ビデオをエンドレスで流しています。今朝の「館内ツアー」で知った、山崎豊子さんの「華麗なる一族」の冒頭の一文と、賢島の夕陽のシーン。
(「陽が傾き、潮が満ちはじめると、志摩半島の英虞湾に華麗な黄昏が訪れる。」 再訪してこの夕陽を見てみたいものです。)
ラウンジは2時間弱いたでしょうか。チェックアウト後の過ごし方①案の英虞湾クルーズの船が見えました。
(「賢島エスパーニャクルーズ」の船。意外と、乗るよりもこうやって眺めている方がいいのかも。)
ここまでずっとノンアルコールのドリンクを飲んでいたのですが、最後の一杯はこれにしました。
(「今月の地酒」、何と魅力的な響きか。(笑) 「三重の寒梅」の純米吟醸。てっきりこのプレート前の黒いレバーを押せば出るのかと思ったら、水でした。(笑))
気を取り直して、ワインクーラーに入っている「三重の寒梅」の瓶から少々注ぎます。
(最後の最後にこらえきれず、日本酒を。肴がほしいところですが、乾きものでがまんです。)
時刻は15時前。そろそろ出発の時間です。預けていた荷物を受け取って、賢島駅へ。2日間の滞在で何人のホテルの人と会ったか分かりませんが、素晴らしいホスピタリティでした。夫婦で再訪を誓って、「志摩観光ホテル ザ ベイスイート」を後にしました。
、、、「志摩観光ホテル ザ ベイスイート」一泊旅行④(完)〔近鉄特急「しまかぜ」乗車[復路]編〕へ続く。