息をするように本を読む

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と、なんだかだらだら日常のことなども

悪魔の文化史

2013-05-16 10:01:00 | 著者名 ま行
ジョルジュ・ミノワ 著

悪魔という言葉がもつ時に恐ろしく、時に退廃的で妖しげ、
そして人を惹きつけてやまない魅力にあふれるイメージは、
聖書が誕生するはるかに前から、人類とともに育ってきたという。
実に4000年。悪魔ってすごい。

文句なしにただ恐れられる存在から、次第に役割を持たされていく悪魔。
そこには完璧なはずの神の仕事であるこの世界に、なぜか残る不幸な部分を
一手に引き受けるという重要な役割を担っていた。
そしてその役割が確定したとき、それを利用するものもあらわれる。

宗教家が自らの対局にある仮想敵として利用したり、あらゆる不運や苦しみの
原因として語られたり、「魔女狩り」に代表される儀式のために使われたり。
光があれば影ができるように、ある程度の悪は仕方がないことないのだろうが、
利害がからんだり、不満のはけ口にされたとき、それはむしろ感心するほどの
たくみさになる。

興味深かったのは悪魔の姿かたちだ。
それは空中に住むとも言われ、角がある半人半獣であると言われ、
どんな姿もなれると言われる。
それは人が恐る姿の変遷でもある。
近代ではスマートで魅力的なイメージも多い。

優等生よりもちょっと不良っぽい少年が人気を集めるように、
闇の香りがする存在は魅力に溢れているのだろうか。

──宗教の世界ではますます居心地の悪さを感じている悪魔も、
文化や人文科学あるいはオカルトの世界においては、大変な人気を博している。

確かに。悪魔がいなくなることはないのだな。