息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

水の迷宮

2012-02-24 10:45:27 | 石持浅海
石持浅海 著

片山という男が死んだ。
その3年後、命日に羽田国際環境水族館に届いたメールから
事件が始まった。

生物への執拗な攻撃。必死で守る職員たちと、それをあざ笑うかの
ような犯人。
残念ながらミステリとしてはあまり成功していない。
動機とか謎解きとかいまひとつ面白みに欠けるのだ。
それに殺人が起こっているのにもかかわらず、扱いの軽さがなんだか
非現実的。

しかし“水族館モノ”として初心者が読むならおすすめ。
なかなかわからない裏方の仕事の数々。温度や水質に心を配り、
わが子以上に細やかな配慮をするスタッフの姿にはひきつけられる。
どうしてもスタッフになりたくて、何年も空きを待っている人も出てくる。
好きで興味があって、もちろん勉強もして就いた仕事への気持ちは、
はかりしれないものなのだろうな。

そしてこの水族館、一度閉館までささやかれながら復活したという
旭山動物園のような経歴をもっている。
だからこそスタッフはここを守りたいし、スキャンダルは嫌だ。

結末は意外。わりときれいに終わるのだけれど好みは分かれる。

ガーディアン

2010-12-28 10:42:59 | 石持浅海
石持浅海 著

どんなことからも自分を守ってくれる存在、ガーディアン。
っていうと、なんだかほのぼのストーリー…のはずがない、この著者で。

主人公、勅使河原冴にはずっと昔からガーディアンがついており、
彼女に危害が加えられそうになると、相手は骨折だの激突だの、
その悪意に応じた、いやさらにプラスアルファの被害を受ける。

そのガーディアンは亡くなった父親なわけだが。
何しろすでにこの世になく、理屈もへったくれも超越して娘への愛だけがある。
微調整不可能。手抜きなし。要するにはた迷惑。

なんとこの守りの法則は、孫娘までも対象とされてしまった。
って、結構大変です。

おとぎ話の世界なら、守られてるなんて素敵ってことでハッピーエンドのはずですが、
やっぱりそうはうまくいかないのね~。
安全と自由なら、普通の人は自由を取りたくなっちゃうよね~(え、違う?)
としみじみ思いました。

人柱はミイラと出会う

2010-12-17 10:07:51 | 石持浅海
石持浅海 著

著者はわりとクールで大人っぽい感じの作品が多いと思っていたのだが、
これは奇想天外、スパイスの効いた、実に楽しい一冊。

人柱やお歯黒、黒衣に参勤交代、なんで? と思う風俗が現代に生き残った
パラレルワールドの日本を舞台に、女子大生と外国人留学生、職業が“人柱”の男などが
事件を解決していく。

事件といっても、トリックはすべてパラレルワールドならではのルール。
密室だって、人柱専用居室(建物の完成まで出てこられない)で起こるし、
結果的に人柱がルール違反をした建物は、完成を目の前に崩れ落ちる。

黒衣は現代の政治家へのアイロニーかと思えるし、参勤交代はえ?もしや合理的と
考えてしまったり。だって陳情って大切なんでしょ。
笑いながら読んでるのに、こんなところでちくりと刺すのはさすがの実力か。

これシリーズ化しないかなあ。