絵に込められた思いもよらない怖さを探り出すというのが、本書の著者のスタンスである。
きっかけは、ダヴィッドの描いた刑場へ引かれていくマリー・アントワネットのスケッチだという。
見ただけで恐ろしさが伝わってくるゴヤの「我が子を喰らうサトリュヌス」等も取り上げているが、見ただけでは怖さを感じないような、よく知られているドガの「エトワール、また舞台の踊り子」、ティントレット「受胎告知」、ジェリコー「メデュース号の筏」、ラ・トウール「いかさま師」(本書の表紙の絵)など、20作品が取り上げられている。
絵が描かれた時の歴史背景・神話など話題が豊富で、絵に込められたメッセージがよく分かり楽しい読み物だ。