予想に反して早くから強い雨が降っている。ペースメーカーの植え込み手術から4ヶ月、前の検査から3ヶ月が過ぎて、今日は定期検診であった。ペースメーカーが正常に動いているかをチェックするもので、検査を受ける身としては「始めますね」と「終わりました」の2つしか分からない。異常があれば医師が何か言うだろうし、異常がなければ何も言わないだろう。私は医者の診断に逆らうだけの知識はないから、とにかく言われたことを忠実に守っている。
カミさんは朝の血圧計測では120-77-65なのに、夜は100-60-90と下がることが気に入らないようで、「薬を変えてもらった方がよいのでは」と言う。最近では100を割ることが多いから、より口喧しく言う。それで「今日はどうしても一緒に行く」と言って付いて来た。診察の先生に自分の心配を告げるけれど、まだ若い医師は「たくさんの患者さんを診ているとこのくらいの人はいくらでもいますので、私からかかりつけの医師に話すよりは、ご本人がそのことを話されたらどうでしょうか」と言う。
本人である私が、別に異常を感じていないのに、数字だけを見て心配することはないと思うのだが、医者から直接聞かないとなかなか納得できないのは仕方ないことだとは思う。手術を受ける前、脈拍数が30台になっても、気持ちが悪いとかフラフラするとか、そうした異常をキャッチできない鈍感な身体だから、「数字の異常を見たなら医者に相談すべきだ」と譲らない。余りしつこく言われ続けると、それだけで病気になりそうだ。放っておいてもいいじゃーないか。苦しむのは本人なのだからと思うけれど、いやそれで、手間をかけることなくあの世に旅立ってくれればいいけれど、何年も寝たっきりの状態が続くようではやりきれないと思うのだろう。
兄貴は話すことも出来ない寝たっきりになり、13年も(?)それが続いた。きっと悔しかったに違いないが自分ではどうすることも出来なかった。おとなしい性格がより正真正銘にあふれ出ていたから、まかない婦のおばさんたちからは親しくされていた。けれども生きていること自体が地獄の苦しみだろう。本人は苦しみさえも分からないのかも知れないが、耐えられないことだと思う。刺身が好きだったから、見舞いに行く時は刺身を持って行ったが、嬉しそうな顔をして食べてくれた。そんな時は分かるのかなと思ったりもしたけれど、本人でなければその気持ちは分からないだろう。
だから、長く患いたくない。寝たっきりには絶対になりたくない。けれどもそれは私の意志で決められることではない。どのようになるのかは、神の裁断に従う他ない。神の裁断がどのようなものであれ、私は感謝して受け入れる。ペースメーカーは順調に作動しているし、お酒は飲めるし、井戸掘りも出来る。こんなにいい生活をさせてもらっている。不満などある筈がない。