友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

サンデル教授の6つの命題

2010年08月30日 18時48分06秒 | Weblog
 昨日、このブログで触れたハーバード大学の先生の授業が、今日の朝日新聞に1面を使って載っていた。東大で行なわれたこの特別授業は10月31日と11月7日の2回に分けて、NHK教育テレビで放送されるそうだ。先生の名前はマイケル・サンデルさん。1953年生まれだから、57歳の働き盛りだ。プロフィールを見ると、アメリカのブランダイス大学を卒業後、イギリスのオックスフォード大学で博士号を取得している。ブランダイス大学って、どこにあるどんな大学なのだろう?

 専門は政治哲学で、ハーバード大学では「Justice(正義)」の講座を担当しているが、毎回1千人もの学生で教室が埋まる人気授業だそうだ。対話型という授業の進め方に人気の秘密があるようだ。東大で行なわれた特別授業でも学生たちは、「すごかった」「もっと話したかった」と感想を述べている。新聞を読む限りではよくわからないところもあるが、時にはユーモアも交えて主題に突っ込んでいく展開は面白いと思った。テレビでは生の雰囲気は味合えないだろうけれど、ぜひ見てみたい。

 この日、サンデル教授が用意した命題は6つあった。1)漂流ボートでの殺人は許されるか 2)指名手配された兄を警察につきだすか 3)イチローは高額な年収に値するか 4)自国民と他国民、どちらを救う? 5)多額寄付者の入学を認めるか 6)オバマ大統領は原爆投下を謝罪すべきか。 すぐに答えが出せそうだけれど、考えてみると堂々巡りになりそうなものもある。私はこういう論議が好きで、高校2年のホームルームで「人生の意味について」を論議しようと提案して総スカンを食らったことがある。真面目な提案だったのに、賛成者は一人しかいなかった。

 漂流ボートも兄を警察にも、実際にあった事件のようだ。漂流ボートのような事件は他にもあったと思う。戦争で何も食べるものがなく、人肉を食べたという兵士はいたし、最近ではアンデスの山奥に飛行機が墜落し、人の肉を食べて生き残った話もあった。私は人の肉は食べられないが、私が死んだら食べていただいてもかまわないとは言える。兄を警察へという命題は、古代中国でも孔子が不正をした父親を訴えるべきかと弟子に問うていた記憶があるが、肉親愛か正義かと迷うところだ。コソ泥程度ならいいけれど、突き出せば必ず死刑になると分かっているとなおさら正義を持ち出すのが難しい。けれども逆に、それほどの重大な犯罪ならかばうこと事体が犯罪となるだろう。

 1)や2)は個人の道徳観の問題だけれど、3)から6)はどういう社会を求めるかという問題でもある。自分が他人を救うことのできる状態にあるのであれば、自国だとか他国だとかは関係ないし、目前の事態に集中して対処する以外にないと思う。先の世代が行なったことであっても、その責任を感じることは非難されることではないと思うし、謝罪を表明することで両者の関係が悪くなるとは思えない。けれども、国民の中には、私の友だちの中にも、「いつまでも謝る必要はない。つけあがるばかりだ」と言う人もいる。情けない人だなと私は思う。
コメント (4)
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