実務家弁護士の法解釈のギモン

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差押えの処分禁止効ってなんだ?(2)

2010-01-25 12:31:02 | 民事執行法
 前回は,私の理解している実体法学上の差押えの効力であるが,これとは別に,手続法学上は,差押えの効力(特に不動産に対する強制執行の場合)として,現行民事執行法は手続相対効を採用しているということがよく言われる。手続相対効の考え方は,次のとおりと理解している。
 まず,差押えの処分禁止効が,絶対的なものなのか,相対的なもの何かという考えの違いがあり,絶対効で考える必要がなく,相対的効力とすれば十分だといわれている。その結果,差し押さえられた不動産を第三者に譲渡することが出来なくなってしまうわけではなく,単に差押債権者にその譲渡の効力を主張することが出来ないに過ぎないといわれる。
 ただし,相対効を各関係者に対して個別に貫くと(個別相対効),「ぐるぐる廻り」の現象が生じるといわれる。たとえば,Aが債務者の不動産を差し押さえた後にBが抵当権を設定し,その後に一般先取特権を有するCが配当要求をしてきたような場合である。Bの抵当権はAの差押えに遅れるため,その効力を主張できないが,Bの抵当権と一般先取特権者であるCとの関係だけでみれば,Bの抵当権の方が優先するはずである。ところが,単に差押えをしたに過ぎない一般債権者であるAは,一般の先取特権者であるCに劣後する。そのため,Cの二重差押えや配当要求があれば,CはAに優先する。
 これが,「ぐるぐる廻り」といわれる現象で,AはBに優先し,BはCに優先し,CはAに優先するという,解決しがたい現象が生じるのである。
 そこで,相対効といえども,その効力は手続単位で考えることとし,差押えに抵触する処分については,Aの差押えに基づく当該手続に参加する全ての関係者に対して効力を対抗できないとするのが,手続相対効といわれるものである。
 この手続相対効によれば,上記の「ぐるぐる廻り」の現象についても,Bの抵当権は差押えに抵触する処分なので,執行手続上無視され,Aの差押えに対して配当要求をするCが優先的に配当を受け,つぎにAが配当を受け,Bは配当に預かれないという結果で処理することになる。
 現行民事執行法は,不動産執行についてはこの手続相対効を採用したといわれ,それを表した条文が,民事執行法59条2項,同法84条2項,同法87条2項,3項であるといわれるようである。

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