実務家弁護士の法解釈のギモン

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相手方訴訟代理人の忌避(4)

2017-11-29 10:59:27 | 民事訴訟法
 要するに、民事訴訟における弁護士たる訴訟代理人の使命は、公的な使命を帯びているということであり、上記判例も、弁護士法25条1号は、先に弁護士を信頼して協議又は依頼をした当事者の利益を保護するとともに、弁護士の職務執行の公正を確保し、弁護士の品位を保持することを目的としていると指摘する。
 そこで、弁護士法25条1号に違反して弁護士の職務執行の公正に疑義が生じる事態となったときは、裁判官について裁判の公正が妨げられる事情がある場合と同じように考えて、相手方当事者はその弁護士の忌避を申し立てることができるというのが、異議説の本質だと思うのである。つまり、これまで「異議説」という言い方をしてきたが、実は「異議」ではなく、「忌避」なのである。そして、条文上の根拠は、裁判官の忌避を規定した民事訴訟法24条の類推適用となるはずである。

 判例は、民事訴訟法24条の類推は述べていない。それは、「異議」の本質が「忌避」であることにまで思い至らなかったためかもしれない。しかし、排除の裁判に対して民事訴訟法25条5項を類推するというのであるから、その前提として民事訴訟法24条を類推して考えるべきことは明らかだと思う。
 そして、そうだとすれば、排除された弁護士自体が排除決定に対して不服申立ができないのは、忌避の裁判を受けた裁判官自身が不服申し立てできないのと同じことである。

 異議説を忌避説で理解する。これで理論的にも非常にすっきりしたと思っている。近いうちに司法試験でも出題されそうである。

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