◉ 花枇杷 (はなびわ)・枇杷咲く (びわさく)
枇杷の花大やうにして淋しけれ ・・・・・ 高浜虚子 [虚子全集]
蜂のみが知る香放てり枇杷の花 ・・・・・ 右城暮石 [定本 上下]
硝子戸に月のぬくもり枇杷の花 ・・・・・ 矢島渚男 [采薇]
初冬の頃、深緑色のごわごわした大きな葉の枝先に
褐色の毛を密集した太い花軸をだし、
やや黄色を帯びた白色の5弁の小花を多数咲かせます。
花期が長く翌年の3月中旬頃まで順次開花します。
地味で目立たない花ですが、
甘い香りで花の咲いていることに気付かされます。
中軸・花柄・萼片ともに淡褐色の綿毛につつまれて、
ひっそりと控えめに咲く寂しげな姿には趣があります。
[ バラ科ビワ属の常緑小高木、中国・日本原産 ]
また別の猫通り過ぐ枇杷の花 ・・・・・ みなみ
ビワ (枇杷)
関東~九州の暖温帯の、
低地~丘陵の林内や石灰岩地帯に野生化または自生しています。
中国原産説と西日本自生説があります。
現在果樹として栽培されているものは、常緑性の高木で高さ10m内外で、
枝は開出し、樹冠は円形になります。
樹高は、5~10m。
幹は灰褐色で、若枝は淡褐色の綿毛を密生します。
葉は、短い葉柄を持ち、大型の長楕円形または倒披針形状長楕円形で長さ15~20㎝、
鈍頭、基部は狭いくさび形、質は厚く硬く、縁に低い波状の鋸歯があって、互生します。
表面は光沢があり、初め有毛、あとに無毛となります。
裏面は淡褐色の綿毛が密生します。
花期は、11~翌年3月。
枝先に、円錐花序を付け、白色または帯黄白色の5弁の小花を多数咲かせ、
よい香りを放ちます。
雄しべは約20本、雌しべは子房下位で2~5心室に分かれます。
萼は5裂し、淡褐色の綿毛につつまれています。
果期は、 5~6月。
果実は、黄橙色の円倒卵形で、表面に短い綿毛があります。
大果で優良な品種が、長崎県・千葉県(房総)・鹿児島県などの
温暖な地方で栽培されています。
現在多く栽培されている田中びわは唐びわの一品種であって、果実は大きく径約4㎝あります。
葉はアミグダリンやクエン酸などを多く含み、
乾燥した葉をビワ茶とする他、
生薬の枇杷葉(びわよう)として咳止め・暑気あたり・胃腸病などに用います。
果実も咳・嘔吐・喉の渇きなどに効果があると言われています。
果肉は生食されるほか、
缶詰やゼリーなどの菓子・ジャム・果実酒などにも加工されます。
材は堅く、木刀・杖・装飾用などに利用されます。
名は、果実(または葉)の形が楽器のビワに似ていることから
付いたそうです。漢名枇杷の音読みです。