大原に窯をもつ、陶芸家、野田芳直さんの個展が、開催されるというので、ミモロも、そこへと向かいます。
大原に住む野田さんは、独特の憂いを帯びたような色彩で、品格漂う茶器や花入れ、そしてお皿などの作品を多数創作している陶芸家です。
「森の中にギャラリーがあるんですね。素敵な雰囲気…」と、ミモロは、窓から外を眺めます。
森の中の隠れ家という雰囲気の展示スペースには、野田さんの作品がずらりと並んでいます。
ミモロは、ひとつひとつ、作品をゆっくりと見てゆくことに。
野田さんの作品は、まるで憂いを帯びたような深い色彩で表現されていて、「大人の感じの器…」とミモロ。
茶道をはじめ、書画や歴史に造詣の深い野田さんらしく、作品からは、雄大で、かつ、どこか人間の心情を映しだしたような世界感が伝わってきます。
大原の朝靄を映したような茄子色の花入れ。まるで坐禅をしているような静寂感が漂うよう…。
今回の個展の作品で、ひときわ目を引いたのが、「五山の送り」を表現したお皿。
炎のような赤で浮かび上がる「大」「妙法」の文字や鳥居や舟形などの送り火。その周りには、火の粉のように赤が飛び散っています。そして、下の方には、海を思わせる青が、微かに感じられます。
「この作品は、昨年の東日本大震災で、亡くなった方を悼む思いを込めているんですよ」と野田さん。青の色彩が、静寂の中を漂う御霊を思わせます。
昨年は、「五山の送り火」の直前で、津波で流された瓦礫の受け入れを拒否したことも。でも、多くの人が、被災された方に、心寄り添っていることを、表現したかったそう。
器が並ぶ奥の床の間には、狩野山雪の「太公望」の掛け軸が。
個展にいらした方と共に、拝見するミモロです。
茶器も、野田さんが多く取り組む作品で、今回は、歴史的な武将の花押を映したものも。
「これは、織田信長の花押ですよ」と。
「武将のサインね。読めないけど…」
また、大原の雪景色を表現した「大原雪中」と題された器には、野田さんの指の跡が、雪を歩く足跡のように、静かに続いています。
「さぁ、お茶を一服いかがですか?」と。「はい、遠慮なく…」とミモロは大きな机の前に。
抹茶の緑が、いっそう清々しく感じられる器です。またお菓子がのったお皿も、本当に美しい色。まるでお菓子が、水面に浮いているような、静かさが漂います。
「素敵な器で頂くと、お茶とお菓子の美味しさも格別だねー」と。
お茶をいただいたミモロは、また、作品を拝見してゆきます。
「あ、ウサギがはねてる…」
「このお皿には、苺が似合いそう…」
「お酒がすすみそうなおちょこ…」
「美しい文字が書きたくなるねー」硯も趣が。
東京でも個展をなさることが多い野田さん。その器に魅了されたひとときでした。
*「芳直窯」京都市左京区大原戸寺町2 電話075-744-2035
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