ネコのミモロのJAPAN TRAVEL (Mimoro the cat:JAPAN TRAVEL)

「京都観光おもてなし大使」のライターとネコのミモロが、京都の情報や暮らし、グルメなどをご紹介。心和む雑誌のようなブログ

幽玄の世界を独特の色彩で表現する陶芸家 野田芳直さんの個展へ

2012-06-27 | アート

大原に窯をもつ、陶芸家、野田芳直さんの個展が、開催されるというので、ミモロも、そこへと向かいます。

大原に住む野田さんは、独特の憂いを帯びたような色彩で、品格漂う茶器や花入れ、そしてお皿などの作品を多数創作している陶芸家です。

「森の中にギャラリーがあるんですね。素敵な雰囲気…」と、ミモロは、窓から外を眺めます。

森の中の隠れ家という雰囲気の展示スペースには、野田さんの作品がずらりと並んでいます。

ミモロは、ひとつひとつ、作品をゆっくりと見てゆくことに。


野田さんの作品は、まるで憂いを帯びたような深い色彩で表現されていて、「大人の感じの器…」とミモロ。

茶道をはじめ、書画や歴史に造詣の深い野田さんらしく、作品からは、雄大で、かつ、どこか人間の心情を映しだしたような世界感が伝わってきます。
大原の朝靄を映したような茄子色の花入れ。まるで坐禅をしているような静寂感が漂うよう…。

今回の個展の作品で、ひときわ目を引いたのが、「五山の送り」を表現したお皿。

炎のような赤で浮かび上がる「大」「妙法」の文字や鳥居や舟形などの送り火。その周りには、火の粉のように赤が飛び散っています。そして、下の方には、海を思わせる青が、微かに感じられます。
「この作品は、昨年の東日本大震災で、亡くなった方を悼む思いを込めているんですよ」と野田さん。青の色彩が、静寂の中を漂う御霊を思わせます。

昨年は、「五山の送り火」の直前で、津波で流された瓦礫の受け入れを拒否したことも。でも、多くの人が、被災された方に、心寄り添っていることを、表現したかったそう。

器が並ぶ奥の床の間には、狩野山雪の「太公望」の掛け軸が。

個展にいらした方と共に、拝見するミモロです。

茶器も、野田さんが多く取り組む作品で、今回は、歴史的な武将の花押を映したものも。

「これは、織田信長の花押ですよ」と。
「武将のサインね。読めないけど…」

また、大原の雪景色を表現した「大原雪中」と題された器には、野田さんの指の跡が、雪を歩く足跡のように、静かに続いています。


「さぁ、お茶を一服いかがですか?」と。「はい、遠慮なく…」とミモロは大きな机の前に。

抹茶の緑が、いっそう清々しく感じられる器です。またお菓子がのったお皿も、本当に美しい色。まるでお菓子が、水面に浮いているような、静かさが漂います。

「素敵な器で頂くと、お茶とお菓子の美味しさも格別だねー」と。

お茶をいただいたミモロは、また、作品を拝見してゆきます。
「あ、ウサギがはねてる…」
「このお皿には、苺が似合いそう…」
「お酒がすすみそうなおちょこ…」
「美しい文字が書きたくなるねー」硯も趣が。

東京でも個展をなさることが多い野田さん。その器に魅了されたひとときでした。

*「芳直窯」京都市左京区大原戸寺町2 電話075-744-2035


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