みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1053「正夢なのか」

2021-04-19 17:52:57 | ブログ短編

 結婚式(けっこんしき)の前夜(ぜんや)のこと。彼女は嫌(いや)な夢(ゆめ)をみた。式の最中(さいちゅう)に、見知(みし)らぬ女が飛(と)び出してきて、新郎(しんろう)の腕(うで)をつかんで逃(に)げて行くのだ。彼女はただ呆然(ぼうぜん)と立ちつくすだけ。
 あまりにもリアルな夢だったので、彼女はバージンロードを歩くとき、その女が来ていないかキョロキョロと見回(みまわ)してしまった。もう、夢と現実(げんじつ)がごちゃごちゃになっていたのだ。彼への不信感(ふしんかん)もわいてきて、それを否定(ひてい)するのに必死(ひっし)になっていた。
 彼女は心の中で――。彼はとっても優(やさ)しい人よ。そんな、浮気(うわき)とか…あたしを裏切(うらぎ)るようなことするはずないわ。あれは、ただの夢なんだから…。
 別(べつ)の気持(きも)ちが――。確(たし)かに優しいわよねぇ。それは、誰(だれ)にでも…他(ほか)の女にだって…。
 何を言ってるのよ。彼がそんなこと…。彼は、あたししか見てないわ。ほら、今だってあたしの方を見つめてるじゃない。彼の愛(あい)は…、あたしだけのものなんだから…。
 愛ってなに? そんな形(かたち)のないものを信(しん)じるなんて…。男は嘘(うそ)をつくものよ。愛してるって言いながら、平気(へいき)で他の女を抱(だ)くことができるんだから。
 式は、いよいよ誓(ちか)いの言葉(ことば)に――。夢では、ここで女が現(あらわ)れて…。彼女は唐突(とうとつ)に後(うし)ろを振(ふ)り返った。飛び出して来る女はいない。神父(しんぷ)さんの言葉が耳(みみ)に入ってきた。
「あなたは、この男を生涯(しょうがい)の伴侶(はんりょ)として、愛し続けることを誓いますか?」
 彼女は、彼の顔をじっと見つめる。彼女の口が、もぞもぞと動(うご)いていた。
<つぶやき>彼女は「はい」と答(こた)えるのでしょうか? それとも、別の選択(せんたく)をするのか…。
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1052「算数の時間」

2021-04-17 17:44:02 | ブログ短編

「こいつが最後(さいご)の一匹(ぴき)だな。こいつをやっつければ…」
「でも、隊長(たいちょう)。本当(ほんとう)にこれが最後の一匹なんですか?」
「偵察機(ていさつき)からの報告(ほうこく)では、全部(ぜんぶ)で五匹(ひき)だ。我々(われわれ)が仕留(しと)めたのは四匹だから、目の前にいるのでちょうどってことだ。みんな、弾数(たまかず)を数(かぞ)えるんだ」
 隊員(たいいん)たちは残(のこ)っていた弾数を報告した。合計(ごうけい)すると84になった。隊長は、
「我々が持ってきた弾が、全部で600だったから、一匹にかかった弾数が…」
「隊長! 大変(たいへん)です。前から、別のヤツが現(あらわ)れました」
「隊長! こ、こっちからも一匹…。こ、これはまずいですよ」
「ちょっと待(ま)ってくれ。えっと…、二匹増(ふ)えたということは…あと必要(ひつよう)な弾数は…」
「隊長、早(はや)く決断(けつだん)してください。このままでは、囲(かこ)まれてしまいます」
「急(せ)かせないでくれ。分からなくなるじゃないか…。今、大事(だいじ)な計算(けいさん)をしてるんだ」
 隊員たちは目配(めくば)せして頷(うなず)き合うと、一人の隊員が隊長の腕(うで)をつかんで、
「隊長、算数(さんすう)の時間(じかん)は終(お)わりです。もう行きますよ。撤退(てったい)するんです」
「何を言ってるんだ。目の前の敵(てき)を前にして、そんなことできるわけないだろ」
「3匹ですよ。まだ他(ほか)にもいるかもしれません。私たちの持っている弾数では、とても太刀打(たちう)ちできませんよ。そんなこと小学生(しょうがくせい)でも分かるはずです」
<つぶやき>こういう場合は、野生(やせい)の勘(かん)を働かせましょうね。そうじゃないと全滅(ぜんめつ)ですよ。
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1051「堕天使」

2021-04-15 17:50:53 | ブログ短編

 彼女は、闇(やみ)の世界(せかい)では堕天使(だてんし)と呼(よ)ばれていた。彼女に関(かか)わった人たちは、次々(つぎつぎ)に災難(さいなん)に襲(おそ)われていたからだ。それを知らない人たちは、彼女の美しさに惹(ひ)かれ、彼女のことを信頼(しんらい)し疑(うたが)うことはなかった。今日もまた、彼女に惹かれた男が――。
「失礼(しつれい)ですが、ご一緒(いっしょ)させてもらっても…。私、山本(やまもと)といいます。今、名刺(めいし)を…」
「ここで、そういうのは…」彼女は微笑(ほほえ)んで、「あたし、小夜子(さよこ)です。以前(いぜん)、どこかで…」
「はい、知り合いのパーティーでお目にかかったことが…。あの時は、実業家(じつぎょうか)の息子(むすこ)さんとご一緒でしたね。その時から、あなたのことが忘(わす)れられなくて…。あっ、失礼…」
「かまいませんわ。山本さんは、どこかの社長(しゃちょう)さんなんですか?」
「ああ…。まあ、小さな会社(かいしゃ)ですよ。でも、あの時の彼が、あんな死(し)に方をするなんて…。あなたも、おつらかったんじゃ…。とても仲良(なかよ)くされていたので…」
「あの人のことは、よく知(し)らないんですよ。知り合ったばかりだったので…」
「ああ、そうなんですか…。あの…、もし良(よ)かったら、またお目にかかれますか?」
「ええ、いいですわよ。あなたが、元気(げんき)でいてくれれば、きっと会えますわ」
 男はパーティー会場(かいじょう)を後(あと)にした。しばらくして、会場の外(そと)で事故(じこ)があった。暴走(ぼうそう)したトラックが歩道(ほどう)に突(つ)っ込んだのだ。何人かの怪我人(けがにん)と、死者(ししゃ)が一人――。
 死んだのは、山本というフリーのジャーナリストだったそうだ。
<つぶやき>彼女はときに、純真無垢(じゅんしんむく)な笑顔(えがお)を見せることもある。本当(ほんとう)の彼女の姿(すがた)は…?
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1050「しずく125~戦意喪失」

2021-04-13 17:44:29 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねの攻撃(こうげき)は一方的(いっぽうてき)だった。月島(つきしま)しずくは何度も倒(たお)され、傷(きず)だらけになっていた。それでもしずくは立ち上がり、ふらふらになりながらもつくねに向かって行った。
 変化(へんか)が起きたのは、しばらくたってからのことだった。突然(とつぜん)、つくねの目から涙(なみだ)があふれてきたのだ。それに一番驚(おどろ)いたのは、つくね自身(じしん)だ。涙はぬぐってもぬぐっても止まることはなかった。つくねは目がかすんできて、動きが鈍(にぶ)くなってきた。それでもつくねは、やみくもに拳(こぶし)を振(ふ)りまわし、しずくを攻(せ)め立てた。しずくは、ここで初めて攻撃をかわして、つくねの拳を両手(りょうて)で受(う)け止めた。
 それは一瞬(いっしゅん)のことだった。しずくの手から光が放(はな)たれた。その眩(まぶ)しい光は、つくねの戦意(せんい)を喪失(そうしつ)させた。その場に座(すわ)り込んでしまったつくねに、しずくは笑(え)みを浮(う)かべて言った。
「約束(やくそく)は果(は)たしたわよ。あなたならきっと…取り戻(もど)せるわ……」
 しずくは気を失(うしな)ってしまった。つくねの顔に一瞬、戸惑(とまど)いの表情(ひょうじょう)が表(あらわ)れた。涼(りょう)たちがしずくの名を叫(さけ)ぶと、つくねは我(われ)に返(かえ)って姿(すがた)を消(け)してしまった。
 涼と初音(はつね)は駆(か)け寄(よ)ると、しずくの身体(からだ)を抱(だ)き起こした。しずくは目を開けると、
「ねぇ、この傷…、残(のこ)っちゃうかなぁ。もう、美人(びじん)が台無(だいな)しよねぇ。ハハ……」
「バカ! なに言ってるのよ」涼が涙をにじませて、「誰(だれ)が、美人なのよ」
<つぶやき>これは作戦(さくせん)なの? つくねが再(ふたた)び現(あらわ)れたとき、記憶(きおく)が戻っているのか…。
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1049「忘れてた」

2021-04-11 17:53:51 | ブログ短編

 僕(ぼく)はスケジュールの確認(かくにん)のため自分(じぶん)の手帳(てちょう)を見ていた。今日のところに、彼女の名前(なまえ)が…。僕は、思わず声をあげそうになった。今夜は、彼女と会う約束(やくそく)が――。僕は時計(とけい)を見た。すでに、約束の時間を三時間も過(す)ぎている。やばいやばいやばい…。僕は心の中で呟(つぶや)いた。最近(さいきん)、仕事(しごと)が忙(いそが)しくて残業(ざんぎょう)が続いていたから、完全(かんぜん)に忘(わす)れてしまっていた。
 僕は慌(あわ)てて、彼女に連絡(れんらく)しようとスマホを手に取った。そこで…、ふと思った。彼女から、メールも電話(でんわ)も、何の着信(ちゃくしん)もなかったのだ。――これは、どういうことだ? いつもなら、ちょっと遅(おく)れただけでも、バンバン着信が入ってくるのに…。
 まさか…、彼女も忘れてる? そんなことって、あるんだろうか? でも、あるかも…。彼女から何もいってこないのは、彼女も忘れているからなんじゃ…。これは、いいぞ。このままなかったことにしてしまえば、彼女から怒(おこ)られることもないはずだ。
 いや、ちょっと待(ま)て…。本当(ほんとう)にいいのか、それで…。このままにして――。まさか、彼女に何かあったのか…。事故(じこ)とか、病気(びょうき)とか…、それで連絡できないのかも――。
 僕は彼女に電話した。何度か呼(よ)び出し音(おん)があって、彼女が電話に出た。
「どうしたの? こんな時間に。まさか、明日のデート行けないとかじゃないわよね」
「あ、明日…? まさか、それはないよ。明日、どこ行く? 待ちきれないよ」
 僕は彼女としゃべりながら、安堵(あんど)していた。僕の…、書(か)き間違(まちが)いだったみたいだ。
<つぶやき>忙しいと、間違いがおきやすくなってしまいます。心に余裕(よゆう)を持ちましょう。
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