みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0554「偽りの仮面5」

2019-05-27 18:24:45 | ブログ短編

「一千万?!」主人は顔を真っ赤にして言った。「そんな金、何に使ったんだ! お前は、俺(おれ)が拾(ひろ)ってやったのに、その恩(おん)を仇(あだ)で返すとは――」
 主人(しゅじん)は妻(つま)を殴(なぐ)り倒(たお)した。妻は叩(たた)かれた頬(ほお)を押(お)さえながら、
「何よ! あなたは、私のことなんか愛(あい)してないじゃない。お金にものをいわせて、私のことを…。それでも私、あなたのために尽(つ)くしてきた。だけど――」
「尽くすのは当たり前だろ。俺の足を引っぱるようなまねをするんじゃない!」
 女は二人のやり取りを、無表情(むひょうじょう)な顔で傍観(ぼうかん)していた。止める気などまったくないようだ。妻は、やけになり夫(おっと)をソファに押し倒して、
「あなたには、家族(かぞく)なんてどうでもいいのよ! 私、知ってるのよ。――あなた、若い女を囲(かこ)ってるんでしょ。忙(いそが)しいと言いながら、よその女と…」
「うるさい! 俺が外(そと)で何をしようと、お前が口を出すことじゃない」
 女がぼそりと呟(つぶや)いた。「そうですね。あちこちにお付き合いがおありのようですから」
 夫婦(ふうふ)は、ここに他人(たにん)がいることに改(あらた)めて気がついた。妻は首(くび)をかしげながら女に言った。
「どうして? あなた、どうして、そんなことを知ってるの?」
 女はわずかに微笑(ほほえ)むと、「あら、意外(いがい)だわ。もうご存知(ぞんじ)だとばかり思ってたのに。あたし、この人の愛人(あいじん)のひとりなんです」
 妻はその場にへたり込んだ。まさか、愛人からお金を借(か)りているなんて…。
<つぶやき>この女はどこまでこの家族と絡(から)んでるのよ。最初に出てきた女子高生も…。
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