EEG賦課金とは消費者から見た場合、電気料金に含まれる税金のようなもので、いわゆる「エネルギー転換」のコスト、ともいえます。2015年度はkw当たり6.17セント(8.42円)です。
EEG賦課金の算出方法は基本的に、買取価格 ― 販売価格です。
再生可能エネルギーのkw当たりの買取価格は、設備稼働開始年度と太陽光か風力かの種類によって決められます。基本的に設備稼働開始から20年間の定額買取が保証されていますが、買い取り価格は年々下がる一方で、今年は去年の半額となったため、新たな設備投資は急激に減少しました。
販売価格は電力取引市場EPEXで電力を販売した場合に得られるkw当たりの価格です。買取価格の方が販売価格よりも高くなるのはこのシステム導入時からのことですが、2015年9月は記録的な安値、kw当たり平均3セント(約4.1円)以下となり、買取価格との差額が大きくなるので、またしてもEEG賦課金増額が不可避となるでしょう。翌年度のEEG賦課金額は毎年10月15日に決定されます。
再生可能エネルギー協会(AEE)が調査会社Emnidに委託した、9月の世論調査によると、EEG賦課金額が「適切」または「低すぎる」と回答した人が63%で、「高すぎる」と答えた36%を大きく上回っていました。
いくらエネルギー転換が重要と考えていても、このままEPEXでの電力取引価格が低迷すれば、消費者の負担が増加し続けることになるため、いずれEEG賦課金額を高すぎると考える人たちが適切と考える人たちを上回ってしまうかもしれません。
EEG賦課金の問題点
EEG賦課金の制度上の欠陥として、まず電力を「定額」買取するにもかかわらず、自由市場における変動価格で電力を販売するため、助成金の役割を果たすEEG賦課金のための支出に変動が起きやすく、計画しにくいことが挙げられます。
次に賦課金の不均等な配分が挙げられます。本来は電力消費の激しい鉄鋼業などの企業が国際競争力を失わない事を目的とした賦課金の負担軽減特例でしたが、2013年度よりこの軽減特例の恩恵に与れる対象企業が著しく拡大され、その企業に割引された分だけ個人消費者の負担分が増えるというゆがみが生じてしまいました。
軽減特例の基準は、年間電力消費量1ギガワット時以上で、生産コストの14%以上を占める場合、賦課金の90%が免除されます。10ギガワット時以上100ギガワット時未満で99%の免除、100ギガワット時以上で1kw当たりの賦課金0.05セントとなります。この特例によって免除される額は年間約25億ユーロと見積もられています。つまり電力消費の少ない企業や個人消費者は25億ユーロ(約3408億円)余計にエネルギー転換のために貢献していることになります。
環境保護の観点から言えば、電力を大量消費する企業こそペナルティとしてより多くEEG賦課金を払うべきですが、ここで働いているのは環境保護ロジックではなく、残念ながら経済ロジックです。このEEG賦課金減免は明らかに企業優遇であり、欧州委員会は「国の助成金」とみなして問題視しています。このような矛盾は、当時連立与党だった自由民主党(FDP)の経済優先主義のたまものです。この政党の自由は新自由主義の自由、民主の民には資本家のみが含まれる、というような政党ですので、さもありなんな政策でした。因みに自由民主党(FDP)は前回の連邦議会選挙で得票率5%の壁を超えることができず、連邦議会に議員を送り込むことができませんでした。