徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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難民危機~ドイツ亡命法厳格化本日連邦参議院で可決

2015年10月16日 | 社会
昨日連邦議会で可決された亡命法改正法案が本日連邦参議院でも賛成多数で可決されました。改正法は11月1日に発効します。
内容については昨日の記事に書きましたので、ここでは割愛しますが、各州の声をいくつか紹介します。
ドイツの連邦参議院は州政府の代表者たちで構成されます。つまり連邦参議院は各州の利害を調整する場で、日本の参議院とは全く性質を異にします。

ブランデンブルク州では社会民主党(SPD)と左翼党(Linke)の連立政権ですが、州政府内ではぎりぎりまでバルカン諸国を「安全な国」リストに加えるかどうかで議論があり、左翼党はこれに反対していました。また国の州・市町村に対する難民対策の助成金が不十分である、と批判しました。州厚生相ディアナ・ゴルツェ(左翼党)は、「国が補正予算で10億ユーロ追加拠出すると言い、その小さな一部をブランデンブルク州が受け取るというなら、左翼党としては否と言わざるを得ない。これによって発せられるシグナルは間違っている。」と発言しました。(注1)州首相ディートマー・ヴォイトケ (SPD)は改正法案は必要で、賛成派。州政府内での合意が成立しなかったので、参議院では棄権しました。

チューリンゲン州は社会民主党(SPD)、緑の党、左翼党(Linke)の3党連立政権で、やはり政府内での合意に至らず、連邦参議院で棄権しました。チューリンゲン州首相ボードー・ラメロフは、「州は2016年度4億6900万ユーロの予算を難民の世話とインテグレーションプログラムに宛てているのに、国から補助金としてもらえるのはその22%以下だ。州は4億のコストを自己負担しなければならない。この為本来の州政府の行政が立ちいかない。改正法案での国の各州に対する支援補償は不十分」と南西放送(SWR)で発言しました。(注2)
また移住相ディーター・ラウインガー(緑)は臨時収容施設の滞在期間が最長6か月まで延長可能になることに懸念を示しました。「子供のいる家族に対しては、子供の就学義務が滞在3か月目から生じるので、滞在期間を短縮するべきだ。子供は一つの場所で学校に行くべきだ」と発言しました。(注2)

ブレーメン州は社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権で、改正法案に関して意見が割れたため、両党の連立契約に則り、連邦参議院で棄権しました。ブレーメン州緑の党は難民審査の簡易化を部分的に容認できないと主張しました。(注3)
ブレーメン州では今年1月から8月までに3200人が難民申請をしました。うち約1300人が安全とされるバルカン諸国出身者で、通常申請は不認可となります。これまでSPDと緑の党は自主帰国の方針を取ってきましたが、1300件の認可の可能性のない申請に対してたったの72件の自主帰国、30件の送還という実績です。その為SPDも野党のキリスト教民主同盟(CDU)も送還措置強化を含む亡命法改正法案に賛意を示しました。(注4)

ニーダーザクセン州は社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権で、SPDは法案に賛成、緑の党は断固反対で州政府内で意見がまとまらず、やはり参議院で棄権しました。

社会民主党(SPD)と緑の党が政権を握っている州は特に、内閣・州首相会議で合意したこと全てを改正法案に反映してないと内相トーマス・ドメジエール(CDU)を批判しました。しかし、緑の党が与党に参加している州のいくつかは改正法案に最終的には賛成しました。「民主的な政党は協力し合うものだ。これは国内に向けての重要なシグナルで、デマゴーグや右翼ポピュリストたちに対抗するもので、同時にヨーロッパに向けてのものでもある」とバーデン・ヴュルッテンベルク州首相ヴィンフリート・クレシュマン(緑の党)ははつげんしました。(注5)
ラインラント・プファルツ州首相マル・ドライアーは「私たちはずっと難民を収容することに重点を置いてきましたし、これは今後もそうですが、私たちが既に難民統合の真っ最中であることも考慮しなければいけません」と発言しました。(注5)

法案に賛成した州も、国の補助や助成金が十分でないと考えているところが多く、今回の改正法案を「第一歩」としか見做してないようで、さらなる措置を講じる必要があることを訴えています。一先ず、何もないよりはまし、ということでしょうか。

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注1:ベルリン・ブランデンブルク放送の2015年10月16日付の記事より。原文はこちら
注2:チューリンゲン・アルゲマイネの2015年10月16日付の記事より。原文はこちら
注3:ラジオ・ブレーメンの2015年10月16日付の記事より。原文はこちら
注4:ラジオ・ブレーメンの2015年10月14日付の記事より。原文はこちら
注5:ZDFホイテの2015年10月16日付の記事より。原文はこちら