徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

難民ヘイトイラスト~はすみとしこ

2015年10月01日 | 社会

2016年1月16日アップデート:この2015年10月1日に書いた私のブログ記事がいまだに「はすみとしこ」や「難民」などのキーワードでの検索結果として読まれているようなので、ここに最新のドイツにおける難民による犯罪情報を右翼の犯罪とも併せて紹介したブログ記事へのリンクを貼っておきます:http://blog.goo.ne.jp/mikakohh/e/bfc251071e0b22bc3a56fc037e7108c0

大晦日にケルンなどで起きた女性襲撃多発事件で、この記事を読んでくださっている方の一部は「はすみとしこ氏の正しさが証明された」と思い込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん「偽難民がいる」あるいは「難民の中にテロリストがいる」ということは事実で、それはいついかなる時も完全否定できることではありません。はすみとしこ氏の問題は感情的な思い込みによって【多い】という言葉を使うことと、下のイラストで何の個別ケースを考慮することなく、難民全てが「他人の金で好きなことをする人間」であるとレッテルを張ったことにあります。余りにも強引な「一般化」が問題なのです。その強引な一般化が差別であり、侮辱であるのです。彼女は在日外国人に対してもかなりの攻撃をし、様々なきちんと証明できないデマや出所不明の偽統計を拡散しています。それを鵜呑みにして彼女に賛同するような無批判な方は知性が足りないとしか申し上げようがありません。

私は海外にいる(元)日本人として日本から出ない日本人には体験できないようなことを体験してきています。私の周りには日本人でない人しかいないのです。だから、何か日本で事件が起きたり、日本の政治家が失言を連発したりすれば、当然「なんで日本ではあんなことを言う人が大臣(あるいは首相)になれるのか」聞かれますし、「あんなのが選ばれるなら日本の国民はよほどレベルが低いんだな」と言われることもありますし、福島原発の対処の仕方や、年間20mSVのところへ住民を帰還させようとする人権無視の政策なども含めて、「なんであんなのを野放しにしているのか?」という批判にさらされるわけです。歴史的事実を認めない日本人、無知な日本人などなど。ネガティブな日本人像はいくらでもあります。一部に変な日本人がいることや日本の政治家が相もない失言を繰り返すのも否定できない事実ですが、それを例にとって「だから日本人はみんなそう」と思われたら、あなた方はどんな気持ちがしますか? そのことをよく考えてから、はすみとしこ氏のイラストのことや難民のことを考えていただきたいものです。(以上2016年1月16日のアップデート)

 



FBやツイッターをやっていると気がめいるほどの差別発言やヘイト、扇動、デマ等々に出くわします。
この度、私の気に障ったのは下の「はすみとしこの世界」というハンドルネームでFBに公表された難民を侮辱するイラストです。



いつまでFBに載せたままか分かりませんが、これが公表されたURLはこちらです:https://www.facebook.com/984279651598190/photos/a.984889011537254.1073741836.984279651598190/1217327478293405/ またはhttp://on.fb.me/1L5CtpS

このイラストの元となっている写真があります。


これはVire's Attachedというサイトに載せられたシリア難民キャンプで過ごさざるを得ない子供たちの写真のうちの一枚です。真夏の中東。日中は蒸し風呂で夜は冷え込む。ゴミが散乱し悪臭が漂う。狭いテントに雑魚寝し1日1回の炊き出しで飢えをしのぐ。難民キャンプの子ども達が強いられているのは動物以下の生活です。そんな中でも少女はカメラを向けられてはにかむような笑顔を見せます。そんな笑顔を邪悪な心をもってなぞると上のようなイラストになってしまうのでしょうか?
私は、人がどうしてここまで無知で無理解でいられるのか不思議でなりません。
はすみとしこ氏はさらにこのイラストに

{ってか、あのシリア難民?ほとんど「移民」だろw

 不幸にも溺死してしまった自称シリア難民のお子さん一家は、実はトルコ在住家族で、トルコ政府から無償援助を受け取っていた。パパは船には乗っていずトルコに残り、ママと子どもだけが乗船。先に母子家庭を装って難民申請→定住GETし、後からパパを呼び寄せる手筈だったのではないか、との疑い。}


とコメントしています。まず「自称シリア難民」という言い方が侮辱的です。自称ではなく、実際にシリアから逃げてきた難民だからこそ、トルコで難民としての最低限の援助を受けていたわけです。この家族がなぜトルコからさらにヨーロッパに向かおうとした本当の動機は分かりません。ただ、一般的にシリア人はとても誇り高く、人の世話になるのを良しとせず、自分で働こうとします。だから、トルコにいる200万人のシリア難民たちのほんの一部しか難民キャンプにいないのです。大部分の人たちが何らかの形でトルコで働いているのです。「パパは船には載っていずトルコに残り」というのはお金の問題です。密航費は高いので、先の子どもと母親を逃がそうとしたのです。「母子家庭を装って」というのは中傷以外の何物でもありません。難民申請審査の際に母子家庭が優先されるということはありません。出身国とどれだけ追い詰められていたか、ということが審査では重要となります。シリアから逃げてきたのなら、家族親戚一同揃って来ても難民申請が受理される可能性は非常に高く、別に「母子家庭」という条件で同情を引く必要など全くないのです。

はすみとしこ氏はまた移民と難民の区別も付けられないようです。日本を代表する総理大臣安倍晋三からしてその区別がつけられず、難民受け入れを人口問題で答えるとんちんかんさを披露しているくらいなので、もしかしたらそれが日本の標準的なリテラシーなのかと絶望的な気分になります。移民とは自らの意志で他国へ行ってそこに定住する人たちのことです。難民とは内戦などで生命の危機に晒され、家や生活基盤を破壊されてやむを得ず避難する人たちのことです。「避難民」なのです。もちろん、もともと裕福な人たちが、家やお店などが破壊され、取りあえず全財産持って車で逃げる、ということもあります。トルコにBMWに乗って避難したシリア難民も中にはいたそうで、トルコ人たちが驚いたそうですが、いかに財産を持っていようとも、難民であることには違いがないのです。なぜなら、彼らには帰るところが無くなっているわけですから。少なくとも戦闘が終わるまでは帰れないわけです。そこが移民と根本的に違う点です。そういう事情を知ろうともせず「生きたいように生きていきたい、他人の金で」とは随分な侮辱ではありませんか。

私はこのFB投稿を見てすぐにFBに不適切報告をしましたが、「問題ない」という回答が返ってきました。何人もの人が同じことをして同様の回答をもらったようです。
そして今Change.orgで「シリア難民を侮辱するイラストがレイシズムであることをFBに認めさせる」キャンペーンが始まりました。これを読んだ皆さんもご賛同していただけるようお願いします。
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