ドイツ連邦労働庁が8月に発表した難民の就業状況に関する統計によると、予想よりも就業者が多く、30万人以上となり、前年同期比で88,000人増加しました。社会保険料を払う義務のある仕事に就いている難民は、23万8,000人。
求職者・失業者
「求職中」と労働局に登録されている難民は2018年7月末時点で48万2,000人で、うち実際に失業しているのは18万7,000人、ドイツ全体の失業者の約8%を占めます。数は昨年から横ばいです。「求職中」で「失業していない」人たちは、職業訓練プログラムや語学コース、社会統合コースに通っているために統計上「失業者」カテゴリーに入っていません。この統計の取り方は難民に限ったことではなくドイツ全体の失業者統計がそうなっています。
下のグラフは、難民の統計の取り方を2016年7月に変更したため、それ以前の部分は薄い色で表示されています。
失業中の難民はほとんどが若い男性で、言葉の障壁があまり問題ならない清掃や運送あるいは飲食店のキッチンヘルパー(食器洗いなど)の業種で主に求職活動をしているようです。
第二種失業手当受給者
第二種失業手当(俗に「ハルツ4」と呼ばれる就業可能者のための生活保護)を受給している難民は61万7,000人で、全受給者423万人の約15%を占めます。仕事をして社会保険料を払っている難民が23万8,000人ですから、社会保障の観点からだけで見た場合、かなりの赤字ということになります。もちろん人道的な理由で彼らを受け入れているわけですから、そうした経済的観点のしかもほんの一部だけで判断することはナンセンスですが。短期的に見れば社会保険への払い込みが増えなくても明らかに国内消費は増加し、彼らの社会統合のために発生した需要(ドイツ語教師や社会生活の講師、移民難民局の職員、住宅建設関連業など)による求人も増加しているため、それなりの経済波及効果があります。長期的に見れば、難民の大部分がドイツに定住した場合、第2・第3世代の社会統合率は格段に高くなるため、社会保障の点でもバランスが取れる可能性は高いです。
就業率
2018年5月の時点での難民の就業率は27.2%で、外国人全体の就業率49.3%に比べてもかなり低い水準です。ドイツ人の就業率は68.3%です。
主要8か国からの難民の就職先
下のグラフは2017年5月から2018年4月までの間に失業状態から就職できた主要8か国からの難民の就職先を業種別に分類したものです。それによるとおよそ3分の1が派遣会社に就職しています。
就職できた難民はトータル80,100人で、うち68,700人が社会保険料を支払う義務のある就職先です。派遣会社への就職は23,300人、派遣を除くサービス業9,000人、接客業8,800人、流通及び自動車などの修理・整備6,900人、製造業5,700人、その他14,900人。
難民の失業者が就職できる成功率は、前年同期比ではわずかに向上しているものの、依然として低い水準の4.4%。
難民申請者
2018年7月の新規難民申請者数は過去1年間で最も低い水準の13,000人、決定数(認可及び拒否)は15,000人でした。
2016年~2017年度の難民申請者は、男性が60%、35歳未満が83%(16歳未満が39%、16歳以上~35歳未満が44%)で、若い男性が大部分を占めています。
学歴は高卒が最も多く、40%。中卒の割合も31%で多いですが、全体の39%が16歳未満ですから当然と言えば当然の結果ですね。
出典:
グラフや統計の数字はすべてドイツ連邦労働庁の2018年7月の報告書「Fluchtmigration」からの引用です。