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手塚眞監督『ブラックキス』

2007-05-11 16:19:47 | ノンジャンル
 WOWOWで手塚眞監督の'06作品「ブラックキス」を見ました。あらすじは以下の通りです。
 ドラッグ漬けのモデル・カスミと同居することになった新人モデルのアスカは、向かいのホテルで殺人が行われているのを目撃します。その殺人は生きながら解剖し、目にバラを10本突き刺すという猟奇的な殺人でした。アスカは殺人現場の近くにいるところをフライデイされますが、かえってそれがきっかけとなり、売れっ子モデルになります。カスミの知り合いが次々に殺され続け、アスカの目撃談から当初犯人だと思われていた女性も殺されて剥製になった姿で発見されます。魔の手はアスカに迫り、黒尽くめの全身タイツを来た女性に襲われますが、すんでのところで黒タイツの女はビルから落下し死にます。事件は解決し、カスミは父との仲を修復するため、アメリカに渡りますが、それを不敵な表情で見る女性がいるのでした、という話です。
 最初に犯人と疑われた女性が死んだ後、犯行を続ける人物が誰なのかが、結局最後まで明かされません。また、最初の殺人のシーンがヘクター博士を思わせる猟奇的なものだったので、期待しましたが、その後の死体は何ていうこともなく、期待はずれでした。主演の女の子がかわいかったのが、せめてもの救いでしょうか?
 手塚眞監督は漫画家の手塚治虫氏の長男で、私は今から20年ほど前に彼の自主映画を見ています。その映画は好感が持てるもので、20年後の彼はどうなっているのかな、と思ったのですが、ちょっとガッカリでした。彼はヒッチコックが好きなようで、冒頭とラストのシャワーカーテンは明らかに「サイコ」からの引用でしょうし、ネオンで「Vertigo」(「めまい」の原題)と一瞬映るところもありました。ただ、残念ながら、ヒッチコックの域に達するにはまだまだ、というのが素直な感想でした。冒頭の死体のシーンはかなりすさまじいので、猟奇殺人が好きな方はその部分だけオススメです。あと、ハーフの若いきれいな女の子が好きな人も、楽しめる映画かもしれません。

桐野夏生『アイム ソーリー、ママ』

2007-05-10 17:12:34 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「鬼畜な主人公の殺人が壮快」だと誉めていた桐野夏生氏の「アイム ソーリー、ママ」を読みました。あらすじは以下の通りです。
1、「愛の船に乗った子供たち」児童福祉施設の元保育士・美佐江は25才下の元園児と結婚していますが、久しぶりに会った元園児アイ子に灯油をかけられ、焼死します。
2、「葬式帰りの喫茶店」寝たきりで悪態ばかりついている妻を持ち、女装癖のある隆造は昔美佐江に紹介され里親をしていましたが、美佐江夫婦の葬式の帰り、昔里親をした子たちと話しているうち、盗癖のあったアイ子の話になり、家に帰ってアルバムを出すと、彼女の写っていたはずの写真は全てなくなっていました。
3、「人生のありったけの記憶」アイ子は職場の焼肉店で、ホテルのメイドをしていた時に殺した老婦人のうそ八百の自分の人生をまねて気取って語っていると、警察が美佐江夫妻の火事の件で聞き込みに来ます。アイ子は翌日職場を去ります。
4、「肉と脂と女と男と汗」アイ子は横須賀に住む元娼婦の家を訪ねましたが、知らない男が住んでいたので、睡眠薬で眠らせ絞殺します。
5、「経営巫女のブルース」霊感を持つ社長として知られ、ホテルチェーンを経営する志都子の子供を交通事故から救ったアイ子は、その場で志都子の家のお手伝いさんに採用されます。
6、「死に様は選べない」志都子の腹心・山瀬のところに、アイ子の名前は出さずに、アイ子に注意せよ、という警告文がファックスで送られて来ます。志都子の夫と愛人が心中に見せかけて殺されます。
7、「彼は荒れ狂う」辞めたお手伝いの豊美が帰って来て、アイ子を怪しみます。志都子の夫の葬式が終わってから、アイ子の身元調査が行われることになります。
8、「言葉にできないほどの孤独」家を出たアイ子は、自分のことをファックスで流した人間を殺すため、昔自分が育った娼館を探します。
9、「男に人生を預けてはいけない」娼館は今はクリーニング屋になっていますが、娼婦の一人・静子が土地建物の権利書を不当に手に入れて作ったものでした。
10、「故郷に戻れない者たち」元娼婦の集まりで、静子は自分が娼館を仕切っていた「母さん」の子であり、正式に相続したものだ、と言いますが、他の者は怪しみます。アイ子も「母さん」の子だったかもしれないというので、元娼婦たちはアイ子を探すことにします。
11、「裏切り者は近くにいる」アイ子は再び横須賀の元娼婦の家を訪ね、ここに住む元娼婦が自分を告発していたことを知ります。元娼婦たちがやってきて、静子から元の娼館の土地を取り戻すのに力を貸してほしいとアイ子は頼まれます。そして戻って来たこの家の主人の元娼婦を殺そうとします。
12、「冷たい土の中にある真実」アイ子が土に埋めつつある元娼婦は、アイ子が自分の子で犯罪者たちに輪姦されてできた子だと言って死にます。翌日、アイ子は静子と対決させられますが、志都子に見つかったアイ子は、逃げて川に飛び込みます、という話です。
 アイ子は確かにひどい育てられ方をしているのですが、それにしても人間性のかけらもなく、悪に染まった彼女には、少しも同情できませんでした。ひいては、この小説にも思い入れは生じなかったことになります。本当の悪人の話を読みたい方には、オススメかも?

山本甲士『騙り屋』

2007-05-09 16:56:24 | ノンジャンル
 傑作「悪魔のいけにえ」の監督サム・ライミの写真が今日の朝日新聞の夕刊に出ていました。普通のビジネスマンのような顔のおじさんでした。精神異常者の顔を期待していたので、ちょっとガッカリしました。

 さて、今日紹介するのは、吾妻ひでお氏が傑作だという山本甲士氏の「騙り屋(かたりや)」です。
 沖島はラブホテルを張り、赤外線カメラで不倫の現場を撮って、それを材料にゆする仕事をしています。ある日、雪山でスリップ事故を起こし、道から転落し、ケガをしたまま助けを待ち、4日目に地元に住む八木老人に助けられます。八木は大きな建設会社で働いていたが、贈賄事件のスケープゴートにされ、刑務所で1年暮らした人です。その後、この地に移り住みましたが、目の前の山に悪徳業者が産廃の処理場を作ろうとしているといいます。処分場建設反対派のリーダー・宮本は沖島に行政に建設を阻止する力はない、と言う。沖島は八木老人への恩を報いるため、処分場建設を阻止しようと建設予定地の写真を撮ってると、ヤクザの加茂に襲われますが、撃退し、携帯も奪います。加茂は兄貴分の小幡に事の次第を報告しますが、携帯を奪われたというと、小幡はニヤリと笑います。沖島は建設会社の車をだまし取り、建設反対派の町長の家に突っ込みます。加茂の携帯で沖島の位置を把握している小幡は、沖島を捕らえようとします。沖島は町長を訪れ、建設阻止の方法を聞くが、町が土地を買い上げる方法しかない、と言います。加茂は沖島を奇襲しますが、逆に沖島は加茂の車を奪って逃げ、車の中に落ちていた紙から小幡の住所を突き止め、その住所で銃声がしたという電話を警察にします。沖島は携帯で自分の動きが捕捉されていることにまだ気付いていません。沖島はまた加茂たちの奇襲を受けますが、何とか逃げることに成功し、やっと携帯で自分の位置が相手に知られていたことに気付きます。沖島は産廃担当で裏金を作っている県の職員にワナをかけ、酒気帯びで車の追突事故を起こさせます。加茂は奪われた車を発見し、再び携帯を車に張り付け、沖島の動きを捕捉します。加茂は沖島の情報を得ようと、沖島の彼女の部屋へ押し入るが、抵抗され、そこにいた男と彼女に発砲し、男は死に女は重体に陥ります。沖島は県の職員のふりをして、2つの料亭から裏金3千万円を返させます。夜の駐車場で加茂の襲撃を受け、死闘の末、加茂をやっつけ、小幡の仕業に見えるよう工作します。沖島は国土庁政務次官に2千万のワイロを贈り、残土処理計画の再考と、地元のヤクザと関係のある江南不動産の社長に会ってくれるよう頼みます。沖島は政治家の秘書のふりをして、江南不動産の社長に会い、首都機能の移転のため産廃処理場の計画をつぶしてくれるよう頼み、1千万を渡します。江南不動産によって産廃処理場を作ろうとしていた悪徳業者の親玉・新巻は殺され、脱税も明らかとなり、倒産します。その結果、産廃処理場の計画も白紙となります。が、その後、産廃処理場の建設は最初から町長と新巻のデッチ上げだったことがわかり、沖島はただ笑うしかないのでした、という話です。
 沖島と加茂の死闘の場面はかなり迫力がありましたが、後半、話が複雑になって今ひとつ乗れませんでした。少なくとも私の中では傑作というところまでは行っていないように思いましたが、皆さんはどう思われるでしょうか?

ジム・ジャームッシュ監督『パーマネント・バケーション』

2007-05-08 16:50:04 | ノンジャンル
 今日紹介するのは、WOWOWで見た、ジム・ジャームッシュが大学の卒業制作として16ミリで撮った長編デビュー作「パーマネント・バケーション」です。以前に一度見たことがあるのですが、内容はすっかり忘れていました。
 ニューヨークに住む主人公の青年・アリーは、壁に「アリーは完全にイカれてる」と落書きする。彼は息子が生まれたら、チャーリー・パーカーの名前をとってパーカーと名付けようと思っている。彼は一所にいると、やがて嫌気がさし、別の場所へ移る漂流者だ。彼女の部屋を訪ねると、彼女は下着姿で窓の外をぼんやり見ている。アリーは勝手にレコードをかけて踊りまくり、サッと生きて早く死ぬことに憧れる、と言う。彼のロートレアモンの小説の殺人の箇所を声を出して読み、彼女にあげると言うが、彼女は既に読んでいると言う。彼は中国人に爆撃された実家の跡を見て来ると言い、廃虚となった場所に行くと、実際爆撃の音がしている。ベトナム戦争をまだ戦っているつもりの男までいて、彼を相手に昔実家に住んでいた頃の話をする。次に精神病院に入院している母を訪ねると、母は「おまえは息子だ。その目はおまえの目じゃなく、お父さんの目をくり抜いて入れたんだよ」と言い、同室の患者は大声で笑う。病院を出て廃虚の町をさまようアリー。狂ったように歌を歌う下着姿の若い女。映画館ではニコラス・レイ監督の「バレル」が上映されていて、つまならいジョークを聞かせる黒人の話を聞いてると、「続・夕陽のガンマン」のテーマが一瞬流れる。夜の町でサクソフォーンを吹く男(ジョン・ルーリー)にリクエストを求められ「バイブしててクレイジーな曲」と言うと、男はフリージャズを演奏し始め、アリーは立ち去る。朝、野外で目覚め、運転者のすきを見て車を奪い、業者に「金がいるんだ」と言うと800ドルと言っていたのを1300ドルで買い取ってくれる。そして船に乗りパリを目指す。彼の旅は永遠に続く、という話。
 永遠の旅人のファンタジーで、中国に爆撃されたニューヨーク近郊の町など、架空の空間が出て来たりしてかなり思いつき重視で作っている感じです。シーンとシーンの間に黒みを入れるなど、ゴダールの影響も伺えました。ニコラス・レイとの関係はこの時からできていたようで、最後のロールでも「Special Thanks」のところに、ニコラス・レイの名前が見えました。あくまでも習作の域はでませんが、興味深い一本だと思います。ジム・ジャームッシュのファンの方、ヴィム・ヴェンダースのファンの方でまだ見ていない方にはオススメです。

乙一『小生日記』

2007-05-07 15:44:53 | ノンジャンル
 今日紹介するのは、吾妻ひでおさんが「うそばっかり書いている」といいながらも面白がっていた乙一氏の「小生日記」です。これは題名の通り、乙一氏の日記をまとめたものです。
 読んでみると、吾妻ひでおさんが言っているようにうそばっかりです。例えば、「ファミレスでドリンクバーを注文して、銀行を襲撃する計画を練った。問題は、頭からかぶるストッキングをどうやって買うかだった。」「ファミレスに1人で6時間ほどいた。その間、何をしていたのか記憶にない。しかしふと気づくと、血のついた大量の紙幣がポケットに入っていた。」「(電車内で)膝の上に置いた小生の手は、将来の不安やら、執筆の重圧やらで小刻みに震えていた。隣にキレイな人が座って本を読んでいた。そのキレイな人は、本を畳んだかと思うと、おもむろに小生の手を握りしめた。小生は驚きつつ、『なにをするんですか』と言った。キレイな人は、『いえ、震えていたものですから』と返事をした。」「第二次大戦中の日本において、クリスマスというのは非常に恐ろしい日だった。夜になると一斉にサイレンが鳴り響き、大人たちは『サンタがくるぞ! 靴下を隠せ!』と叫んだ。」「テレビジョンを購入しようとしてレジでクレジットカードを出したところ、限度額を超えていて使用できませんでした。(中略)クルーザーやジェットコースターとか購入したためでしょう。」などなどです。
 また著者の人格を疑うような記述もありました。例えば「彼女は(中略)テロで巻き添えになり死んでいたかもしれない。『そうなってたら笑ってたやろうなあ』と定金伸治が言った。まったくである。」「友人からのショートメールに『ブロンソンが死んでショックな夜』と書かれてあった。おもしろかった。」後半の文など、みうらじゅん氏が読んだら激怒すると思いました。
 と本を読みながら、「ウソばっかりつきながって」「何てひどい奴なんだ」と怒っても、これは自業自得なのです。というのも、著者は本の冒頭で「この本は読むな、時間の無駄だ」と力説しているからです。その警告にも関わらず、読んだ自分が悪いのです。
 ということで、お閑な方には、時間つぶしにオススメかも?