昨日の続きです。
・結論的に述べれば、大日本帝国の「台湾出兵」と「琉球処分」の最後の帰結は、沖縄人もまた侵略戦争と植民地支配の日本近代史の中で、琉球王国時代の平和主義を基調としてきた善隣友好の「小国の論理」を投げ捨てて、大日本帝国の侵略戦争と植民地支配の「大国の論理」に手を貸して、沖縄戦まで琉球沖縄が台湾、中国、朝鮮、韓国と東アジア侵略の役割を果たしただけでなく、沖縄人も皇軍の兵士となって、多くのアジア民衆の生命と財産を奪い、塗炭の苦しみを与えたのである。その責任は重く、自省あるのみである。
・台湾領有の初期に渡台した琉球人労働者の多くは、大倉土木組（現・大成建設）に雇われた。
・鹿島組や清水店（後の清水組、現在は清水建設）の台湾進出は、大倉土木組よりやや遅れた。清水店は特に軍部に食い込み、兵舎や飛行場、燃料廠（しょう）などの軍施設を次々に受注していった。台湾を足場にした日本軍の南方侵攻にも同道し、フィリピンやインドネシアでの軍施設建設に邁進（まいしん）。戦後はそれまで繋がりのなかった沖縄で、“銃剣とブルドーザー”による米軍基地建設の主力ゼネコンとなっていく。ピーク時には会社全体の総工事量の34％を米軍関連が占めたという。
・沖縄本島の米軍北部訓練場（東村（ひがしそん）、国頭村（くにがみそん））のヘリパッド（ヘリコプター離着陸帯）移設工事をめぐり、大阪府警から派遣されていた機動隊のうち20歳代の隊員二人が、工事に反対する住民たちに「ぼけ、土人が」と差別そのものの暴言を吐いたのは、2016年10月のことである。
・沖縄で「人類館」の屈辱が再び語られるようになったのは、この頃からだ。日本社会に蔓延（まんえん）する差別意識は当時と何も変わっていない。
・ここまでの記述に対して、「明治には素晴らしいところがたくさんあった」という反論が返ってきそうである。それはそうだ。1889（明治22）年に公布され、翌90年に施行された大日本帝国憲法だって、維新以降に全国各地で澎湃（ほうはい）として沸き起こった自由民権運動の要求がそれなりには反映されて、立憲制と議会制が明記されたのだから。
・政府の「お師匠様」を自任していただけに、福澤（諭吉）は在野にありながらも、明治の元勲たちと同じような思いを抱いていた。「政府の地位を占めて自から政権を振廻はして天下の治療をしやうと云ふ了簡はないが、如何でもして国民一般を文明開化の門に入れて、此日本国を兵力の強い商売の繁盛する大国にして見たいと斗（ばか）り、夫（そ）れが大本願で」とは、自身が晩年の1898（明治31）年から翌99（明治32）年にかけて『時事新報』で連載した「福翁（ふくおう）自伝」の最終章「老余の半生」における総括だ。
・（福沢諭吉は）自由民権運動を常に批判し、薩長藩閥政治を擁護した。
・己の側にだけ性善説を適用し、民衆は徹底した性悪説で捉えて自由を許さず支配する、ありきたりな為政者の世界観がここにある。あの「天の人の上に人を造らず」も、確かに『学問のすゝめ』の文頭にそう書かれてはいるものの、続く「人の下に人を造らず」が、実は「と云へり」と結ばれていたことが、最近はかなり知られてきたようだ。あくまでも他人の言説の紹介に過ぎないのであって、福澤自身の主張はやはり、自由民権論者たちが打倒を目指したが叶（かな）わなかった、固定化された階級社会を是とするものでしかなかった。
・こうなると、安倍首相が施設方針演説で引用した「一身独立して一国独立する」も、なんだか怪しくなってはこないか。従来の一般的な解釈だと、民権論と国権論のバランスの上に成立した、個人と国家が対等の関係にある民主主義社会━━のようなイメージだったが、その理解で問題はないのだろうか。
・そしてこの場合、何よりも問題なのは、欧米列強の侵略が眼前の恐怖だった時代を生きた福澤の思想を、そのまま現代の日本に持ち込もうとする者の意図なのである。
・彼（安倍首相）は福澤の言葉を引く前に、こう切り出していたのだ。
「強い日本」。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。
嘘はつかれていなかった。安倍首相は率直に、明治の日本のような国家を形成するために国民よ働け、と求めている。彼は権力の座にある限り、今後もそうあり続けていくのだろう。
（また明日へ続きます……）
→「Nature Life」(表紙が重いので、最初に開く際には表示されるまで少し時間がかかるかもしれません(^^;)）（http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto）
→FACEBOOK（名前を入れて、FACEBOOKに登録しておけば、ご覧になれます）（https://www.facebook.com/profile.php?id=100005952271135）
・結論的に述べれば、大日本帝国の「台湾出兵」と「琉球処分」の最後の帰結は、沖縄人もまた侵略戦争と植民地支配の日本近代史の中で、琉球王国時代の平和主義を基調としてきた善隣友好の「小国の論理」を投げ捨てて、大日本帝国の侵略戦争と植民地支配の「大国の論理」に手を貸して、沖縄戦まで琉球沖縄が台湾、中国、朝鮮、韓国と東アジア侵略の役割を果たしただけでなく、沖縄人も皇軍の兵士となって、多くのアジア民衆の生命と財産を奪い、塗炭の苦しみを与えたのである。その責任は重く、自省あるのみである。
・台湾領有の初期に渡台した琉球人労働者の多くは、大倉土木組（現・大成建設）に雇われた。
・鹿島組や清水店（後の清水組、現在は清水建設）の台湾進出は、大倉土木組よりやや遅れた。清水店は特に軍部に食い込み、兵舎や飛行場、燃料廠（しょう）などの軍施設を次々に受注していった。台湾を足場にした日本軍の南方侵攻にも同道し、フィリピンやインドネシアでの軍施設建設に邁進（まいしん）。戦後はそれまで繋がりのなかった沖縄で、“銃剣とブルドーザー”による米軍基地建設の主力ゼネコンとなっていく。ピーク時には会社全体の総工事量の34％を米軍関連が占めたという。
・沖縄本島の米軍北部訓練場（東村（ひがしそん）、国頭村（くにがみそん））のヘリパッド（ヘリコプター離着陸帯）移設工事をめぐり、大阪府警から派遣されていた機動隊のうち20歳代の隊員二人が、工事に反対する住民たちに「ぼけ、土人が」と差別そのものの暴言を吐いたのは、2016年10月のことである。
・沖縄で「人類館」の屈辱が再び語られるようになったのは、この頃からだ。日本社会に蔓延（まんえん）する差別意識は当時と何も変わっていない。
・ここまでの記述に対して、「明治には素晴らしいところがたくさんあった」という反論が返ってきそうである。それはそうだ。1889（明治22）年に公布され、翌90年に施行された大日本帝国憲法だって、維新以降に全国各地で澎湃（ほうはい）として沸き起こった自由民権運動の要求がそれなりには反映されて、立憲制と議会制が明記されたのだから。
・政府の「お師匠様」を自任していただけに、福澤（諭吉）は在野にありながらも、明治の元勲たちと同じような思いを抱いていた。「政府の地位を占めて自から政権を振廻はして天下の治療をしやうと云ふ了簡はないが、如何でもして国民一般を文明開化の門に入れて、此日本国を兵力の強い商売の繁盛する大国にして見たいと斗（ばか）り、夫（そ）れが大本願で」とは、自身が晩年の1898（明治31）年から翌99（明治32）年にかけて『時事新報』で連載した「福翁（ふくおう）自伝」の最終章「老余の半生」における総括だ。
・（福沢諭吉は）自由民権運動を常に批判し、薩長藩閥政治を擁護した。
・己の側にだけ性善説を適用し、民衆は徹底した性悪説で捉えて自由を許さず支配する、ありきたりな為政者の世界観がここにある。あの「天の人の上に人を造らず」も、確かに『学問のすゝめ』の文頭にそう書かれてはいるものの、続く「人の下に人を造らず」が、実は「と云へり」と結ばれていたことが、最近はかなり知られてきたようだ。あくまでも他人の言説の紹介に過ぎないのであって、福澤自身の主張はやはり、自由民権論者たちが打倒を目指したが叶（かな）わなかった、固定化された階級社会を是とするものでしかなかった。
・こうなると、安倍首相が施設方針演説で引用した「一身独立して一国独立する」も、なんだか怪しくなってはこないか。従来の一般的な解釈だと、民権論と国権論のバランスの上に成立した、個人と国家が対等の関係にある民主主義社会━━のようなイメージだったが、その理解で問題はないのだろうか。
・そしてこの場合、何よりも問題なのは、欧米列強の侵略が眼前の恐怖だった時代を生きた福澤の思想を、そのまま現代の日本に持ち込もうとする者の意図なのである。
・彼（安倍首相）は福澤の言葉を引く前に、こう切り出していたのだ。
「強い日本」。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。
嘘はつかれていなかった。安倍首相は率直に、明治の日本のような国家を形成するために国民よ働け、と求めている。彼は権力の座にある限り、今後もそうあり続けていくのだろう。
（また明日へ続きます……）
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