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宇野千代『この白粉入れ』

2007-02-28 17:23:59 | ノンジャンル
 山田詠美さん推薦の宇野千代さん「この白粉入れ」を読みました。
 主人公は男と酒場で知り合い、彼の家に住むようになります。その男は一ヶ月くらい前に女性と心中未遂を起こしていて、それを扱った記事を山のように溜め込んでいました。シーツにも血のあとがあり、その女性の着物もかけてあります。二人が生活していくうち、そうしたものは徐々になくなっていきます。ある日、男の元妻という女性が訪ねてきましたが、楽しい時間を過ごして、彼女は帰って行きました。それから後、時々その女の7、8歳の男の子が遊びに来るようになります。私達は広い家に引っ越し、子供が一緒に住むようになりました。そしてその母もたまに泊まりに来ます。私は白粉入れのことを彼女には一言も言いませんでした。また、男の絵を売るために旅行もよくしました。兵庫の実業家に体を許し、しばらく彼と生活します。電報で呼び戻された私は、実業家と泊まったことのあるホテルに男と泊まり、その後男は一人で東京に帰ります。東京の家は差し押さえにあった後で、私はそこで文筆業を始めますが、ある日、娘が訪ねてきて、男が抱いてくれなくなった、と訴えます。私は引っ越し、彼に何度も電話を掛けます。そして以前心中しようとした女と今でも付き合いがあることを知ります。それから間もなくして、彼と別れます。そして30年ほどがたち、男の息子が突然訪ねてきたので、歓待してやります。そして男の会の何十周年かの祝いの会で当時の人たちと再会する、という話しです。
 文体に特徴があって、ですます調で、「~なのでしょうか。」という文がとても多いのです。一旦そのリズムに乗ってしまうと、心地よく読めました。
 内容は、主人公の女性の心情がせつせつと書かれていて、いわゆる私小説というものだと思います。女性の心理、特に男性に対する女性の心理を詳しく知りたい方は面白く読めるのではないでしょうか?