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湯本香樹実『夏の庭』

2007-02-12 16:14:22 | ノンジャンル
 湯本香樹実さんの「夏の庭」を読みました。アマゾンでは、彼女の本の中で一番売れている本です。
 僕とでぶの山下とメガネをかけた河辺の小6の3人は、山下の祖母が死んだことをきっかけに、死に関心を持ち、死人を見るために、近所で一番死にそうな一人暮らしの老人に目をつけ、垣根の向こう側から監視します。庭にはゴミや何かわからないものが山積みされ、部屋の中のテレビが一日中ついていることでかろうじて老人が生きていることが分かります。三日に一度ぐらいコンビニにでかける老人が何を買っているかも調べたりします。そしてある日、魚屋の息子の山下は老人のために、店の刺身を玄関先に置いておくと、しばらくしたら刺身はなくなっていました。
 夏休みが始まり、生ゴミの臭いがひどくなってきたので、老人の庭のゴミを出していると、老人に見つかり、何のつもりで自分を見張っているのか、を聞かれ、散々しかられた後に、川辺は「おまえが死にそうだったから、見張ってたんだ。おまえがどんなし死に方をするか、オレは絶対見てやるからな!」と叫びます。その後、老人はよく食べるようになり、河辺は刺身に毒を入れとくべきだった、などと言います。そして、ある日テレビもつけず、外出した形跡もない老人の家を見た三人は死んだんじゃないか、と本気で心配しますが、老人の家の窓から、彼らの会話を聞いていたらしい老人がVサインをして、三人を激怒させます。老人は庭を片付け始め、それを見ていた三人が行き会わせたクラスの女子に覗き魔扱いをされ、老人から声をかけられたことをいいことにその疑いを晴らすため、老人の作業を手伝うことになります。洗濯干し、ゴミ出し、雑草取りなどを手伝い、それを目撃されたクラスの美女二人から誉められ、老人からはすいかを御馳走になり、老人の提案でコスモスの種を庭全体に蒔くことにします。
 家の手入れもし、見違えるようになります。老人の過去の生活についてもいろいろ質問しますが、返って来るのはぶっきらぼうな答えばかり。そして台風の来た日、老人は初めてまともな話をします。それは戦時中ジャングルをさまよった時の話で、恐ろしいものでした。三人は老人の別れた妻を見つけだし、再会させますが、人違いで、余計な事をするな、と老人に叱られます。が、後日、その女性はキイチゴを届けてくれ、老人と長く語り合います。
 ある日、おじいさんは夜三人を連れて電車に乗り、河原に連れていきます。そしてしばらくすると見事な花火が上がります。老人は花火職人だったのです。
 八月末のサッカーの合宿が終り、老人の家を訪ねると、老人は亡くなっていました。庭にはコスモスがたくさん咲いています。彼らは老人に話したいことが山ほどあったのに、と悔やみます。
 そして、三人は小学校を卒業し、それぞれの道に進む事になりますが、「オレたち、あの世に知り合いがいるんだ。それってすごい心強くないか!」という山下に、残る二人は感激し、再会を約束して別れて行きます。
 老人のキャラクターが厳しい中にも優しさにあふれていて、また、子供達の様子も生き生きと描かれていて、会話もリアルで、気持ちよく読めました。友情ものとしても読めるし、老人と子供の交流の話としても読めるし、いろんな読み方ができる本だと思いました。