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角田光代『空中庭園』

2007-02-07 16:37:02 | ノンジャンル
 角田光代さんの「空中庭園」を読みました。
 父母と姉弟の4人で暮らす木村家。母の意向で、家族間では一切隠し事をしないことになっていますが、実際は隠し事だらけです。
 1章「ラブリー・ホーム」の語り手は長女で高1のマナで、自分の種が母に仕込まれたラブホテル「野猿」を、好奇心からボーイフレンドの森崎君と訪ね、森崎君は初体験に失敗し、それ以来彼は彼女に口を聞いてくれなくなります。
 2章「チョロQ」の語り手は父で、長年つきあっている愛人・飯塚の執念深さと新たな愛人ミーナが中学生の息子コウの家庭教師になることが語られます。
 3章「空中庭園」の語り手は母で、実家の母を殺す完全犯罪を考え、登校拒否児だった中学時代に母を憎むようになったこと、結婚までの話がすべてウソだったこと、自分の誕生日を家族すべてが忘れていることなどが語られます。
 4章「キルト」の語り手は祖母で、口を開くと嫌われる自分、老人とのデート、台風の日の記憶、つっけんどんな娘、コウとミーナにラブホテルで会ってしまうこと、それに自分の人生の回想が語られます。
 5章「鍵つきドア」の語り手はミーナで、スーパーの安売りの様子、コウと知り合った経緯、コウの父とのばかげた関係、コウとの家庭教師の様子、誕生日を祝われたこと、父の死などが語られます。
 6章「光の、闇の」の語り手はコウで、同級生のミソノと行為での童貞喪失、入院した祖母との口論が語られます。
 章ごとに語り手が変わるという手法で書かれた小説で、語り手が変わる事でものの見方も変わる面白さはあったと思います。特に祖母が語り手の4章が楽しめました。題名の「空中庭園」というのは、母の思いとは反して、何の隠し事もなく、幸せ一杯の家族なんて、空中に浮かんだ庭園のように崩れやすい幻想だ、という意味でしょう。しかし、あまりにも隠し事だらけのために、始めの理想がどっかいってしまって、ただ乱れた関係の家族を描く小説に堕している気がしました。この点、角田さん、どうなんでしょう?
 ちなみにこの小説は2005年に小泉今日子主演で映画化されているようです。そのうちW0W0Wで放映してくれたら、見てみたいと思います。これまたちなみに、解説は最近テレビでの露出の多い石田衣良さんでした。