gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

山田詠美さんの新作『無銭優雅』

2007-02-25 15:52:25 | ノンジャンル
 山田詠美さんの新作「無銭優雅」のご紹介です。前作の「風味絶佳」と似たリズムの題ですね。
 42歳の男・栄から運命だと言われて出会った同じ歳の私・慈雨は、ひょうひょうとしていて、よく人からからかわれます。彼からは「明日死ぬと思って今日を楽しもう」と言われています。彼の家にある大量の本から、彼が勧める、必ず人が死ぬ恋愛小説にはまる私は、彼の家に自由に出入りできるのがうれしくてたまりません。栄は予備校の国語の先生で、私は花屋を友達と二人で経営しています。自分の家では家族からボロクソに言われる私ですが、栄はベタベタに優しく接してくれ、私はやっと自分の男に出会えたと思っています。栄と語り合う思い出は、私を夢中にさせます。姪を連れて栄の家で鍋をつついていると、栄の息子と名乗る男がやってきて、栄を怒鳴りちらしますが、私と姪が撃退します。慈雨の父が死んだ直後、栄の息子から栄には別れた妻と亡くなった一人の子供と生きている一人の子供つまり俺がいて、両親も健在で、兄弟もいる、という話を聞き、私は騙されていたことに気付き、激怒しますが、最後には栄のもとへ戻って行きます、という話です。
 今まで山田詠美さんの小説は随分読んできましたが、今回初めて主人公は家族と同居しています。また、小説の合間合間に他の小説の一部が引用されています。出典は巻末に出ているのですが、私が読んだ事のある本は一冊もありませんでした。また、小説の進行に合わせて、内容的に関連する文章が引用されているのかどうかも、分かりませんでした。
 この本で中心をなすのは、慈雨と栄とのやりとりですが、その中でも一番好きなところは、二人で風呂に入る場面です。「そう言って、栄は湯舟に沈んだ。顔を半分だけ出して、こちらを見ている。私も同じようにして彼を見る。にらめっこだ。」(p.183)これ、想像して笑っちゃいました。
 装釘もきれいで、内容もきれいに仕上がっていると思います。まだ読んでいない方、オススメです。