杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ガーベラの灯火

2020-04-20 17:34:24 | 農業

 ちょうど1年前にJA静岡経済連の情報誌スマイル59号で、静岡県内のガーベラ生産者を取材・紹介しました。ご縁をいただいた生産者さんとはSNSで今も情報交換しており、花の販売が激減している今も、急な生産調整が難しい花の産地のご苦労を、我がことのように心配しています。

 4月18日はヨイハナの日、ということで、県内主産地の浜松が中心となって4月18日をガーベラ記念日に制定しました。今年は土曜日なので、本来ならば華やかな販促イベントが予定されていましたが、緊急事態宣言が発令されてイベントの自粛はもちろん、街中は生活必需品の店以外、大半がクローズとなりました。

 19日に訪ねた近くの商店街もコンビニ以外はほとんど閉店という状態でしたが、唯一開いていたのがお花屋さん。その軒先に置かれたガーベラの色鮮やかなアレンジメントが、色彩が消えた商店街の命をつなぐ灯火のように思えました。

 花は、無くては生きていけない生活必需品ではないかもしれませんが、花のない世の中なんて想像できません。生活必需品を調達しに出られる際は、心の栄養になる花を1輪でも2輪でもいいので、ぜひお手にとってほしいと思います。

 

 ガーベラのウンチクと静岡県が生産日本一になった背景について、スマイルの記事を再掲します。

 


 ガーベラは南アフリカ原産のキク科多年草。発見者のドイツ人学者ゲルバー(T,Gerber)の名前にちなんで命名され、19世紀末にイギリスの採集家が王立植物園キューガーデンに贈った橙赤色の小さなキクが現在のガーベラの原種となりました。
 以降、ヨーロッパ各国で交雑が進み、多種多様な品種が作られています。日本には大正時代に渡来し、花のかたちから「花車」「千本槍」という和名が付けられました。昭和40~50年代から本格的な営利栽培が始まって品種改良も進み、現在では500種類を超える品種が流通しています。
 品種は大きく、花径10㎝を基準に大輪系と小輪系の2種類に分けられます。また花の形状、咲き方により、シングル、セミダブル、フルダブル、スパイダー等のタイプに分けることができます。


 日本におけるガーベラの主な産地は静岡県、福岡県、千葉県、和歌山県、愛知県、茨城県。うち静岡県は産出額19億円(平成28年)を誇る日本一のガーベラ産地です。
 最新の統計では、平成29年のガーベラ全国策漬け面積9,000アールのうち、2,820アールを占めており、出荷額は全国1億5,770万本のうち6,200万本を占めました。県内の主要産地は県西部(JAとぴあ浜松管内)、県中部(JAハイナン、JAおおいがわ管内)に広がります。

 

平成29年産都道府県別の出荷量(千本単位)と作付面積(アール)/(農水省統計部)より
 
 全国   157,770(千本)    9,000アール
1 静岡    62,000                           2,820
2 福岡       21,600                          1,200
3 和歌山   15,000                             680
4 千葉       14,200                          1,070
5 愛知       11,400                          800
6 茨城         6,150                          286
7 熊本         3,240                          331
  

 
 南アフリカ原産のガーベラは20~30℃の気温が保たれば、1年中花を咲かせます。静岡県が日本一の産地になったのは、年間を通してこの気温をキープしやすい環境にあるといえます。
 全国のガーベラ流通の一翼を担う㈱大田花き(東京)では「ガーベラは沖縄以外の全国で栽培されていますが、静岡県は日照時間がダントツ。多少天候に左右されても年間を通してつねに出荷量が安定しています」と信頼を寄せます。 

 県の主要産地では、オランダをはじめとする世界のスタンダードだった大輪系からスタートし、1990年代に小輪系も採り入れ、市場で人気の花粉が目立たない系統やポンポン系などさまざまな品種を柔軟に採り入れてきました。
 ガーベラにも旬(4~5月)があるのですが、一年中出荷されているので季節感が出しにくく、店頭ではどうしても他の旬の花に圧されてしまいます。新しい品種に挑戦したり販売イベントを仕掛けるなど、産地からアクションを起こす必要があります。
 主力産地のひとつ浜松では4月18日(ヨイハナ)をガーベラ記念日に制定したり、大田花きと共同で年に数回販促フェアを開催しており、「ガーベラには色別に花言葉があるので、受験シーズンや縁起担ぎの機会に効果的」と手応えも充分です。

 ガーベラは完全に咲き切ったかたちで出荷される珍しい花。つぼみの状態から開花までを楽しめるバラと違い、完成形の花を飾る楽しみは何かを模索し、産地では完全に咲き切らない“あまびらき”“ひなびらき”の状態での出荷についてもさまざまな検討もなされているとのこと。産地―卸―小売の力強い連携によるガーベラ市場の発展に、ますます期待が集まります。

 

*ガーベラを長持ちさせる方法

○花瓶にさすときは水の量は2センチ程度でOK

○水は1~2日に1度の交換でOK

○花がグッタリしてきたら、茎をカット。花だけを水を張ったお皿に飾る。

○置き場所は直射日光が当たらない涼しい場所。冷暖房の風が直接当たらない場所に。

 

 


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